カンテレTIMES

キャストを一新し、新たな「キンキーブーツ」が誕生!
リスペクトを持ってパワーと繊細さをぶつけたい

2025/03/13

他者との違いを受け入れ自分らしく生きることをテーマに描き、日本をはじめ世界中の観客から愛され続けてきたブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」が帰ってくる!「キンキーブーツ」は同名イギリス映画を元に、シンディ・ローパーが音楽を手掛け、ブロードウェイで2013年に初演。日本では2016年の初演以来、チケットが入手困難になるほど爆発的な人気を得て、再演を重ねてきた。4回目の上演となる今回は、キャストを一新し、メインには日本のミュージカル界を担う次世代の4人の若手実力派がダブルキャストで顔を揃える。4人のうちの東啓介と松下優也が来阪し、取材会で思いを語った。



取材会場に入ってくるや否や、「マイク持ったらついつい歌っちゃいますね。いい感じに音が響いていますね」とマイクでおどける松下。東はそれを笑いながら見守っている。「キンキーブーツ」の舞台は、イギリスの片田舎。経営が傾いた老舗の靴工場の跡取り息子チャーリー(東、有澤樟太郎のダブルキャスト)が、ドラァグクイーンのローラ(松下、甲斐翔真のダブルキャスト)と出会い、ぶつかり合いながらも互いの偏見を捨て、靴工場をドラァグクイーン専門のセクシーな〝キンキーブーツ〟の工場として再生させていく物語だ。「いつも優也君を舞台の客席から拝見していたので、一緒に舞台に立てることは僕にとってはすごくうれしいです。今回、チャーリーとローラ役で関係値が築かれるものだと思いますので、どういう風に役を作っていくかとても楽しみですね」と東は笑顔で語る。松下も「僕らもそれなりに舞台の場数を踏んできていると思うんですけど、自分も含めてそれでもまだまだこれからの世代ではあると思う。稽古場ではただうまくやるというだけではなく、皆のソウルやパッションが感じられると思うので、すごく楽しみですね」と声を弾ませた。


公演に先行して、4人のメインキャストが「キンキーブーツ」の楽曲「NOT MY FATHER’S SON」を歌うミュージックビデオがYouTubeで配信されている。ローラが父親の期待に応えられない息子としての思いやつらさを吐露し、それにチャーリーが共鳴していく楽曲だが、4人の高い表現力は、すでに役作りが始まっているような完成度だ。「いえ、MVを撮った時は、役というよりかはそれぞれ4人の個性を出すことが一つの大きなテーマだったので、純粋に音楽や歌詞に描かれている思いを表現したんです」と東。「音楽に対してのアプローチをそれぞれがやらしてもらいました。チャーリーやローラというよりも、東君、松下優也であったんです」と松下も同意する。



稽古はこれから始まる。「世界でも日本でも本当にすごいキャストしか演じてきていない。そんな作品を自分がやらせていただけるワクワク感がありますね。ヒールを履いてパフォーマンスすることは初めてなので、余裕で本番を乗り切れる身体を作りたいなと。あとはローラとしての芝居やメンタリティの部分は、稽古場でこれから学ばしてもらいたいなと思います」と松下は意気込む。東は「世界でも日本でも愛され、大切に作り上げられてきた作品なので、演出家や出演者の方がどういう思いでやってきたのか、聞けたらいいなと思います。その中で引き継いでいくものと、新しく生まれるものがあると思うので、これからですね」と決意を述べた。
ちなみに、実際にピンヒールのキンキーブーツを履いてみた感想は、「意外に軸は安定するんだなと。身体がフラフラするよりも安定したポジションにおける。慣れてきたら歌いやすいんじゃないかと思いましたね」と松下。東も「確かにフラフラするかなと思っていたら、歩きやすかった。ただ、チャーリーはうまく履けない設定なので、履きなれてない感を勉強しなきゃいけないなと思っています」と言う。
高身長の二人は、会場の記者から足のサイズを聞かれ、松下は「東君は36㎝ぐらい?」とおどけ、190cmの東から「いえいえ、デカすぎ。さすがにそこまではないです()」と否定されていた。また、ローラ役で誰か参考にしている人はいるかという質問に松下は、「オーディションで参考にしたのはビヨンセ」だと明かす。ビヨンセをイメージして歌ってみて、「意外といけてるかもと思いました()。意外と、肩の入れ方やれてるんちゃう?と()。この表現の仕方が正しいのか分からないんですけど、ビヨンセはすごく女性的でカッコいいけど、男性的でカッコいい部分もあったりする。決して男女にとらわれていなくて、そんな部分をローラをやる上で研究したいです。メンタルな部分でもドラァグクイーンの方々を見て研究しようかなと思っています」と答えた。


東は韓国で生の舞台、松下は映画版とロンドン版の舞台の映像で「キンキーブーツ」を見たという。「『Everybody Say yeah』」という楽曲で、皆で一体となって盛り上がっていく。客席から見ていても楽しそうで、引き込まれたと当時に、キャラクターの苦悩も描かれていて、すごく素敵な作品だなと。韓国は歓声もすごくて、録画したり、舞台の途中なのにスタンディングオベーションしたりと盛り上がり、文化の違いもあると思うんですが、ハッとさせられて、この作品に出てみたいなと思いました」と東。「お客さんと出演者があんなに一体化するミュージカルはそうそうないと思うんですよね」と松下も頷く。
シンディ・ローパーが作った名曲の数々は一瞬にして観客を虜にし、キャストがキラキラと輝くキンキーブーツと共に踊るシーンは息をのむほど華やかで皆の気持ちを高揚させてくれる。その一方で、自分らしくありたいものの、それができずに葛藤するチャーリーやローラたちの姿が浮き彫りになり、そのコントラストが胸を揺さぶる。「チャーリーは頭でっかちな部分があるかなと思っていて、猪突猛進になってしまうがゆえに他者を傷つけてしまうとか、やってから気づく部分が多いんです。繊細さだけでは表せない揺れ動くものを表現できたらなと思っています」と東。「人間って色んな側面があると思うので、ローラの傷ついてきた過去や抱えているものを自分で感じとってお芝居として落とし込みたい。それがあるからローラは華やかですごく大胆なこともできるわけで、その両方があるからこそのローラという存在だと思います。『キンキー』の魅力は繊細さとダイナミクス。そこはローラの魅力でもあるので、しっかりと自分も表現できるようになればと思います」と松下。そんなチャーリーとローラの弱さに観客は共感し、工場の従業員を巻き込み、キンキーブーツに命運をかけていく前のめりの力強さに勇気づけられる。歌唱力はもちろんのこと、近年、表現力にも深みが増してきた二人がどう演じてくれるのか期待したい。
最後に5月からオリックス劇場で始まる大阪公演に向けて、東は「新たなキンキーが作り上げられていくと思いますので、ぜひ、楽しみにしていてください」と呼びかけ、松下は「僕らはしっかりとリスペクトを持って作品に向き合って、そのパワーと繊細な部分をしっかりとお客様にぶつけて、一緒に楽しめるようにしたいです。ぜひ、劇場までお越しください」と締めくくった。


取材・文:米満ゆう子、写真:桃子

ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』
日程:5月26日(月)~6月8日(日)
会場:オリックス劇場

関西テレビ公式HP
https://www.ktv.jp/event/kinkyboots/