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『はしか』に警戒 感染力はコロナの6倍「空気感染」でマスク効果なし 2023年は世界で約11万人死亡03月01日 07:30

大阪で相次いで「はしか」患者が発生した。 1人目は10歳未満の女児で、ワクチンの接種歴がなく、発症前に渡航歴があった。 2人目は20代女性で、関西空港を利用して渡航。女性はワクチン接種を2回受けていたという。 「はしか」というと、多くの人が子どもの頃にかかるような印象だが、実際はどういう病気なのか。 感染症学が専門の昭和大学・二木芳人名誉教授に詳しく話を聞いた。 ■「はしか」の感染力はコロナの6倍!

【昭和大学 二木芳人名誉教授】 「はしか」は麻しんウィルスによる急性の全身感染症で、もともとは危険な感染症のひとつでした。 その理由は「とにかく感染力が強い」。 感染症疫学において「基本再生産数」というのがあります。 免疫を持っていない集団の中で、1人の患者が平均何人にうつすかを表す指標です。 コロナは平均2~3、変異株により異なりますが、多くて4程でした。 それが、「はしか」は12~18。1人の患者が12人~18人にうつすということです。 そして、インフルエンザやコロナは、感染しても発症しない人がいますが、「はしか」は免疫のない人が感染したら100パーセント発症します。 そのぐらい感染力が強いのです。 ■はしかにマスクは効果なし

もう一つの怖さは「空気感染」。 はしかの感染様式は「空気感染」「飛沫感染「接触感染」とありますが、ほとんどが「空気感染」です。 「飛沫感染」や「接触感染」は数メートル離れればうつりません。 しかし「空気感染」は、ふわふわと空気中にウィルスが舞っている状態ですから、免疫のない人が感染者と同じ空間にいると感染してしまうのです。 そして、空気感染には、普通のマスクは効果がありません。 飛沫感染はマスクの効果が期待できますが、空気感染はマスクでは防げないのです。 医療現場などで感染防止に使用される、N95マスク(顔面に完全に密着するタイプのマスク)でしたら効果がありますが、呼吸がしづらく、日常生活でずっとつけていることは難しいでしょう。 ■「免疫」で防げる病気

警戒すべき点はありますが、「はしか」は「免疫」があれば防げる病気です。 感染者と一緒にいても感染しませんし、それほど怖い病気ではありません。 免疫の獲得に有効なのは「ワクチン」です。 「ワクチン」は、1回の接種で95パーセントの人に免疫がつくとされていますが、それではやや不十分。 確実に免疫を得るために、2回の接種が推奨されています。 2回接種することで、99パーセント以上の人に免疫がつき、持続させることが出来ます。 日本では、2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児への「2回接種制度」が始まりました。 また、一度かかれば終生免疫ができ、よほどのことがない限り二度とかかりません。 まずは、自分が「ワクチン」を2回打っているか、またはかかったことがあるか、確認してください。 ■怪しいと思ったら、早めに医師に相談を!

ただし、ごく稀に「ワクチン」を打っても免疫ができない人がいます。 先日、感染が分かった20代女性はこのケースだと思われます。 ですから、はしか患者と接触した人は注意が必要です。 「はしか」の潜伏期間は10日程度。 最初はそう高くない発熱、鼻水、咳といった風邪の症状が出ます。 その後、2,3日で急に高熱が出て、全身に発疹が出ます。 はしか患者と接触した可能性がある人は、潜伏期間の10日程度は特に健康状態に注意して下さい。 そして、もし発熱したら、高熱でなくても早めに医者に相談をしてください。 また、小さいお子さんがいる方は、「『はしか』かもしれない」と思ったら、必ずあらかじめ連絡をしてから小児科に行くようにして下さい。 病院側が、待合室を分けるなどの対応をしてくれます。 ■WHOからお墨付き 日本に「はしか」はない、しかし…

日本では、2007年、2008年にはしかが大流行しました。 10代を中心に学校などで集団感染が起こったのです。 この世代はワクチン接種を受けていない、もしくは1回しか受けておらず、免疫が不十分な子どもが多くいました。 これを受けてワクチン接種が推奨された結果、2015年にWHOから「日本がはしか(麻しん)の排除状態にある」ことが認定されました。 日本の土着の「はしか」はないということです。 現在、日本と同じように、アメリカや中東、ヨーロッパの一部の国では、土着の「はしか」は排除状態とされています。 しかし、途上国を中心に、多数の国で「はしか」は発生しているのです。 この数年は、コロナの影響で海外への渡航や訪日が制限され、「はしか」もブロックされていました。 しかしコロナ前の状態の戻った今、渡航者による持ち帰り、訪日客の持ち込みと、「はしか」が入ってくる可能性が増えつつあります。 ■ワクチン接種率95パーセントが感染拡大を防ぐ目安 しかし徐々に減少…

「はしか」の大流行を経て、日本のワクチン2回接種率は95パーセントを超えました。 これは一つの目安とされている数字で、95パーセント以上の人がワクチンを接種していれば、仮にウィルスが持ち込まれても、感染拡大のリスクは抑えられるというものです。 集団免疫を強化するために、2回接種率を95パーセント以上に保つことが求められているのです。 しかし、ここ数年、接種率が下がってきています。 1回接種の人は94パーセントを超えていますが、2回目は93パーセント。 少しずつ徐々に下がってきているのです。 コロナ禍ではしかがブロックされていたことで、「はしか」への危機感が薄れている。 そうすると、「打たなくていいか」という人が一定数出てきます。 その結果、免疫が十分でない人たちが、渡航先で感染し、周囲の同じような人たちにうつしてしまう…それが一番の問題です。 「はしか」は、免疫があれば防げる病気である一方、免疫を持たない人にとっては怖い病気です。 肺炎や脳炎を起こして重症化する人もいます。 WHOによると、コロナ収束後の2023年は、「はしか」の感染者数が世界中で急増し、11万人近くが死亡しました。 その大半が5歳以下の子どもたちです。 「はしか」の感染を防ぐには、みんながワクチンを打つことが大事です。 どうか、気を引き締めなおして頂ければと願います。 (昭和大学 二木芳人名誉教授)

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