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橋下氏知事時代に教育委員会と激突して進めた教育改革 少子化で定員割れの公立校に統廃合必要と主張03月12日 21:37

3月12日、大阪府では府立高校の入学試験が始まりましたが、伝統校まで「定員割れ」の事態となり、衝撃が広がっています。 要因の1つとも言われるのが、国の予算案をめぐり話題となった「高校無償化」。 無償化とともに公立高校は衰退するのでしょうか。 ■高校入試の出陣式 「安心して受ける」と受験生 大阪府下で定員割れの高校が65校

府立高校の入試を翌日に控えた11日、大阪府・枚方市の学習塾で行われた出陣式。 【塾講師】「受験勉強、頑張れた自分に誇りを持つ。受験勉強させてくれたおうちの方に感謝の気持ちを持ち、あすを楽しんでください」 受験の出陣式といえば、かつては“熱血型”の出陣式が多くみられましたが、今はその姿も影を潜め、先生からのメッセージや激励のお菓子など、“令和型”の出陣式に様変わりしています。 とは言え、運命の受験を控えた受験生たちの緊張感は、昔も今も変わらないものかと思いきや…。 【受験生】「気持ち楽なところある」 【受験生】「緊張はしているが、安心して受けます」 受験前日にもかかわらず、気持ちが楽とは一体なぜ?

【KECくずは本校 松田大統括所長】「大阪府下で倍率1.02倍。過去最低の倍率」 大阪府の公立高校のことしの受験倍率は、平均1.02倍で、過去最低に。 全日制128校のうち受験倍率が1倍を下回る、いわゆる「定員割れ」となったのは、およそ半分の65校にも及びます。 先ほどの生徒たちが受験する「寝屋川高校」は、偏差値64の伝統校ですが、ことしの倍率は0.94倍。現行の制度で初めて「定員割れ」となったのです。 【寝屋川高校 受験生】「定員割れなんて思っていなくて、びっくりしました」 複雑な思いの生徒もいました。 【寝屋川高校 受験生】「1年頑張って講習受けて、夏休みも頑張ったのでちょっと残念。本来落ちる子でも受かってしまうので、実力を測れない」

寝屋川高校の場合は、昨年度から定員を増やしたことも影響したとみられていますが、それでも市民の間では衝撃が広がっています。 (Q.寝屋川高校定員割れしたが?) 【寝屋川市民】「ねえ、私の時代では考えられない。私らの時と違う。まず公立1本置いて、滑り止めに私立を置く」 【寝屋川市民】「僕も寝屋川高校だったので悲しい。もうちょっと人気出たらいいかな」 ■新年度の予算案「高校授業料の無償化」 私立高校専願率は35.04%

こうした状況の背景にあるとされるのが、新年度の予算案で、自民・公明・維新で合意された「高校授業料の無償化」です。 さらに大阪府では、独自に今年度から段階的に所得制限を撤廃。 公立、私立問わず高校3年生の授業料は、1人当たり上限63万円を国と府が負担し、それを超えた額は学校が負担する形となります。 こうした制度の影響か、2025年度の入試で私立高校を第1志望とする専願率は、35.04パーセントと過去最高になりました。 塾に通う子どもの保護者に話を聞くと、やはり「無償化」の影響はあるようです。 【保護者】「長男は私立の高校。補助が出て負担がないということだったので、授業料に関して、私立に入るのを後押しできた」 ■教育委員会との激論の末進めた「教育改革」 「ダメなところは申し訳ないが退場」

この状況に危機感をあらわにしているのは、公立高校です。 ことし、定員割れした高校の校長が取材に応じました。 【ことし定員割れした 公立高校の校長】「定員割れしたということで非常に残念、重く受け止めている。来年度こうならないよう原因を分析して、対応したいと危機感を持っています」 学校側が危機感を募らせるのには、”ある理由”があります。 【大阪府知事 橋下徹氏(2011年)】「府民に信を問うて、負けたら、教育委員の皆さんに責任を問う」 当時、大阪府知事だった橋下徹さんが、教育委員会との激論の末進めた「教育改革」。 【橋下徹氏(2008年9月)】「あれは“クソ教育委員会”じゃなくて、“教育委員会のクソ野郎”って言ったんですけどね」 翌日…。 【橋下徹氏(2008年9月)】「クソって言葉については、オカンに怒られたので、以後使いません」 2010年には私立高校の授業料無償化政策を打ち出し…。 【大阪府知事 橋下徹氏(2010年)】「公立も私立も同じように、ダメなところは申し訳ないが退場していただく」 ■「国として教育の在り方をどう考えるか」慎重な議論を指摘する専門家

2012年には、3年連続で定員割れした改善の見込みのない府立高校を閉校の検討対象にする「条例」を制定しました。 この条例により、2023年度からの5年間で、10校の募集が停止となり、閉校の見通しとなっています。 「公立と私立の自由競争」が進む教育現場。こうした社会の流れに対し、専門家は「慎重な議論が必要なのでは」と指摘します。 【慶應義塾大学 赤林英夫教授】「日本は私立高校が、先進国の中でも多い方ですので、さらに増えるとなったときに、国として教育の在り方をどう考えるか」 「高校無償化」の波は公立高校、そして教育の未来にどのような影響を及ぼすのでしょうか。 ■「公立高校は市場で淘汰されない」「手を付けなければならない分野」と橋下氏

大阪の公立高校の入試倍率は「1.02倍」と過去最低で、全日制の128校の内65校で定員割れとなっています。 寝屋川高校、鳳高校、八尾高校といった進学校での定員割れも目立ちました。 さらに阪南市の泉鳥取高校は2019年から定員割れが続き、今月末で廃校となります。阪南市内の公立高校はなくなります。 大阪の高校の志願者数は、私立の志願者は微増しているのに対し、公立の志願者は大きく減少しているという現状です。 この状況について橋下徹氏は、「公立高校の約半数が倍率1以下」のニュースに対して、3月9日のXにて 「いいね、狙い通りの政策効果。少子高齢化時代、学校の統廃合は必要不可欠」と発信しています。 【橋下徹氏】「子供の数が、僕の頃、40年前ぐらいから今は3分の2以下ぐらいに減っている。なのに学校の数はそんな減っていないんですよ。そりゃ定員割れするに決まってるじゃないですか。私立高校も、かなり定員割れしています。だから学校数が多いんです」 「『じゃ橋下、なんで私立の方は統廃合しないんだ!』って言うんですが、私立は生徒が集まらなければ自然に学校運営できなくなるわけです。一方、公立は生徒が集まらなくても税金を無制限に投入するので、どれだけ赤字であったとしても公立高校は残ってしまうんです。市場による淘汰がない。だから条例で3年連続定員割れした場合には原則、統廃合の対象にする」 「もちろんどうしても残さなければいけないような、工業高校とか農業高校というのはセーフティーネットとして残す場合があるけれど、私立高校は市場で淘汰される、公立高校は市場で淘汰されないから3年連続の定員割れで統廃合しましょう。日本全国でやらなきゃいけないことですよ、学校の統廃合って。誰も首長、知事、市長が手を付けなかった分野なんですよ」 ■反対意見に対して「僕の話、全く聞いてないじゃん」 計画書で定めていると反論

橋下氏は、少子化の中で「公立高校の統廃合は進めなければならない分野である」という意見ですが、反対の意見もあるようです。 教育社会学が専門の大阪大学の高田一宏教授は「勉強が苦手・障害があるなど“少数派のニーズ”に応える学校は人気を集めにくいが、こうした“セーフティーネット”の公立は必要」と話します。 また工業高校の校長は「技術系の仕事に就きたい子どもの選択肢は狭まると思う」と話しました。 【橋下徹氏】「僕の話、全く聞いてないじゃん。僕はちゃんと教育基本計画で定めているんですよ。今言いましたよね、『セーフティーネットは残す』って。ちゃんと見てくださいよ、学者さん、専門家なんだから」 (Q.技術系の工業高校、農業高校については?) 【橋下徹氏】「ゼロにはしません。ただ、工業高校、農業高校が多いのであれば、普通科も多いわけですから、これを集約化しないと。これは学校に限らず病院でも何でも、インフラ、上下水道菅にしても、高度成長時代にどんどんつくっていったものが、少子化になっているんだから、人口が減少しているんだから、いかに縮小させていくかっていうところ」 【橋下徹氏】「一番、国家課題なんだけれども、これを政治家が本気でやろうと思ったら、選挙で落とされるから誰もやらないんですよ。それに15年前に手を付け始めたのが、大阪の教育改革なんですよ」

現場としては子供たちの教育機会が失われるのではないかという懸念があるようですが。 【橋下徹氏】「いやいや、子供の数が減ってるんだから、それに合わせての学校数を減らすだけなんで、分母と分子を両方とも減らすから率は変わらないですよ。よくよく大阪府の教育振興計画を見てもらいたいのだけど、セーフティーネットは残すんです、公立で。私立ができないところは公立がやる。でも普通科については私立と公立で切磋琢磨してもらうということなんです」 番組コメンテーターの亀井正貴弁護士は、「保護者の感覚としては選択肢を増やすのは賛成」と話します。 【亀井正貴弁護士】「教育行政って利害関係人が多いし、識者も多いので非常に難しいし、非常に分かりにくいと思うんです。だけど、子どもを学校に行かせた保護者の感覚としては、やはり選択肢が多いのはいいということです。だから、そういう意味では私学は独自性を持っていりいろな選択肢を持っているわけですから、選択肢を増やすというのは、そのこと自体を見る限りは私は賛成かなと思いますね」 ■競い合わせるのであれば、競争条件を合わせるのは当然

公立と私立が平等に競争していくということですが、大阪大学の高田教授は、「受験次期も私立の方が早い。受験生や親の心情からも、学力などが同条件なら、『早く進路を決めたい』となるのは当然」と指摘します。 【橋下徹氏】「これは合わさなきゃいけないですよね。それから公立の受験機会を1校だけじゃなくて、複数回機会を与えるとか、いろいろと私立と競争条件を合わせるというのはその通りだと思います」 (関西テレビ「newsランナー」2025年3月12日放送)

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