
同性婚訴訟 大阪高裁で「違憲」判断 「新たに差別を生む」と一審判決覆す 「引き続き注視」と林官房長官03月25日 21:22
同性カップルが結婚を認められないのは憲法違反として、国を訴えた裁判の控訴審。
大阪高等裁判所は、「結婚以外の別制度では、新たに差別を生む」などと一審判決を覆し、同性婚を認めないのは「憲法違反」と判断しました。
■一審の“合憲”覆り “違憲”判断へ 「もやもや吹っ飛んだ」と語る当事者
【記者リポート】「唯一の合憲判決覆る。大阪高裁は違憲判決を出しました」
3組の同性カップルが国を訴えた裁判。
同性同士の結婚を認めてほしい、原告たちの思いがようやく届きました。
【原告 坂田麻智さん】「本当にきょうはこの判決が出てホッとしてます。みなさんこうやって応援に来てくださいまして本当にありがとうございます。皆さんとつかんだこの違憲判決だと思っています」
【原告 坂田テレサさん】「3年近く前の地裁判決からの、ずっともやもやしてたことが一気に吹っ飛んで。届いたんだという喜びが強いです」
原告の坂田麻智さん(46)とパートナーでアメリカ人のテレサさん(41)。
この6年間声を上げ続けてきました。
■2人で子育てするも 法的な“親”は出産した母のみ
連れ添って17年、京都市の一軒家で暮らす2人は近所でもカップルとして公認です。
3年前には、テレサさんが友人から精子の提供を受けて、女の子を出産。すくすく成長して2歳になりました。
【坂田麻智さん】「マミーにパスタ入れてもらい」
【娘】「マミー、レモンとパスタ!」
2人で子育てをしていますが、法的に親として認められるのは出産したテレサさんだけ。
麻智さんは法的には、赤の他人のため、親権はありません。
【坂田テレサさん】「パートナーに親権がないから何かがあったら、本当に娘は大丈夫なのかとか、ちゃんと法的に守られるのか、不安がすごくあります」
【坂田麻智さん】「私は本当に特別なこと、何も訴えてはなくて。(男女の夫婦と)同じように扱ってください。もうそれだけなんですと思ってる」
■同性婚認めない国 大阪地裁が唯一の“合憲”判断
安心して生きていくために…。
2人は同性同士の結婚が認められない法律は、憲法で定める「法の下の平等(14条)」や「婚姻の自由(24条)」に違反しているとして、同性婚の実現を求める集団訴訟に参加。
「同性婚は想定されていない」と主張し続ける国と向き合ってきました。
「人権の砦」として司法の判断に期待を寄せていた中、3年前、大阪地裁が下した判断は、「合憲」。
「異性カップルとの差は婚姻類似の制度や他の手当てで緩和できる」などとして、憲法違反にはあたらないと判断したのです。
同様の訴訟は全国で行われていて、地裁では判断が分かれていましたが、高裁はいずれも明確な「違憲」判決を出しました。
結果として、大阪地裁の判決が唯一の「合憲」判断となっていました。
一審判決に納得できず、控訴したテレサさんと麻智さん。
きょう、判決の日を迎え…。
【坂田テレサさん】「この日が来たんだという感じ」
【坂田麻智さん】「もう本当に一刻も早く、みんなが前向きで希望を持って生きられる社会にしたい」
■大阪高裁では一審判決を否定し踏み込んだ判断 「新たな差別を生み出しかねない」
大阪高裁は25日、一審の合憲判決を覆し、「違憲」との判断を下しました。
【大阪高裁 本田久美子裁判長】「同性婚を許容してない現状は、個人の尊厳を著しく損なう不合理なもの」
「結婚は子供を産み育てる男女を保護するもの」などとした一審判決を否定し、大阪高裁は、「婚姻制度は自然生殖の可能性があることと一体とされていない」とし、生殖とは切り離した制度であることを指摘。憲法24条2項に違反するとしました。
さらに、法の下の平等を定める憲法14条にも違反するとし、「同性カップルにのみ、婚姻とは別の制度を設けることは、新たな差別を生み出しかねない」と踏み込みました。
一方で、国の賠償責任は認めませんでした。
【原告 坂田テレサさん】「男女カップルとは限らないことは言ってくれたので、それだけでもいろんな家族の形があることを理解してくれた気がしました」
【原告 坂田麻智さん】「全高裁の判決が違憲ということなので、本当に一刻も早く国は動いていただいて、立法していただきたい」
【弁護団 三輪晃義弁護士】「パートナーシップ制度とか、婚姻に代わる別制度をつくれば十分なんじゃないかという見解がありますが、それを明確に否定した。憲法に違反しているということは、なんとかしないといけないという意味。なんとかしないといけない法律が、そのままほったらかしにされてるのは、ありえない非常事態」
異例とも言える高裁5例目の違憲判決。
この結果を受けて、国はこれからどう動くのでしょうか。
■「最高裁も『違憲』の方向で行くのでは」と安田教授
大阪高裁の「違憲」判決について、大阪大学大学院の安田教授は、「最高裁も『違憲』の流れでいくのでは。法制化が遅い」と国に対して批判しました。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】「今後、最高裁の判断が出てくると思うんですけど、『合憲』としている高裁から1つでもあるとその論拠に基づくこともなり得るですけど、さすがに5つ全部『違憲』となると、よほど説得力のある異なる立場の意見が出てこない限り、最高裁も『違憲』の方向で行くのかなって感じます。
世論を見ると、同性婚にだいたい6~7割の方が賛成されている。保守的な自民党支持層に限っても過半数が賛成していると言われている中で、法制化がちょっと遅い」
■同性婚訴訟で、一審の大阪地裁から変化したポイント
同性婚訴訟で、一審の大阪地裁から変化したポイントです。
【婚姻制度】
大阪地裁では、「子供を産み育てる男女を保護するためのもの」としたが、大阪高裁では「自然生殖の可能性と一体ではなく、性愛感情を抱き合う関係を保護するためのもの」としました。
【同性カップルの保護制度】
大阪地裁は「異性カップルとの差は、婚姻類似の制度や他の手当てで緩和できる」としていましたが、大阪高裁では、「同性カップルにのみ別の制度を設けることは、新たに差別を生む」と否定的でした。
■最高裁の判断を待つのではなく、国会が今すぐにでも動くべきでは
憲法学者で慶応大学・駒村圭吾教授によると、「大阪高裁が地裁の『合憲判断』をことごとく覆したのは大きい。国は今後、異性婚と同等に扱う法改正の一択しかなくなったのでは。それを突きつけた判決で非常に評価できる」と今回の判決を評価しました。
また、今回の判決を受けて、林官房長官は「国民各層の意見、国会の議論の状況、訴訟の動向など引き続き“注視”していく」とコメントしました。
【関西テレビ・神崎博報道デスク】「石破首相も『注視』という言葉を何度も使っている。大阪含めて5つの高等裁判所で、高等裁判所で全て違憲という判断が出ています。
政府としては、最高裁の判断を待ちたいという姿勢です。今、この状況を見たら、最高裁の判断を待つまでもなく、立法府は国会になんとかせよと。判断を待つ前に、国会が今すぐにでも動くべきじゃないかと思います」
政治判断という選択肢もあります。国がどう動くのか注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年3月25日放送)