
「ここじゃないとあかん」“壁”設置するも効果なし 万博開幕で大阪・ミナミの「グリ下」はどうなった?04月15日 21:04
大阪・ミナミの通称“グリ下”では、未成年の若者を狙った売春行為などが問題視されています。
3月、その場所に新たに設置されたのは、居座り防止の“塀”です。
集まっていた若者はどこにいったのか…グリ下の“今”に迫ります。
■グリ下の“今”を徹底取材
【グリ下に集まる若者】「1歳の時出て行った父親、養育費払えよ!」
【グリ下に集まる若者】「アル中の父親。私に缶ビール投げるのやめろ!」
多くの若者が居場所を求め集まる大阪・ミナミのグリコの看板の下通称“グリ下”。
3月、そこにある変化が…。
【記者リポート】「グリ下に新たに塀が設置されています」
万博を機に若者の居座りを防止しようと大阪市が突然、設置した塀。しかし…。
【記者リポート】「若者が集まっています」
「石膏ボードなんよ、うすいもん」「壁ができようが、どうでもええと」
グリ下の“今”を徹底取材しました。
■観光客増加に合わせ仮設の“塀”設置
4月13日、開幕した大阪・関西万博。
3月12日、万博会場からおよそ10キロ離れた大阪・ミナミである異変が…。
グリ下に突如現れたのが…仮設の“塀”。
【大阪市建設局道路河川部河川課 安藤大輔河川課長】「多くの観光客が訪れる場所になっていますので、安心してここでの観光が楽しめる環境になれば」
大阪・関西万博で、国内外から多くの観光客がミナミに訪れることを見込み、ごみのポイ捨てを抑止したり、座り込みを防止するのが目的です。
■未成年の飲酒、オーバードーズが蔓延 犯罪に巻き込まれることも
およそ4年前から若者の居場所となってきたグリ下。
複雑な家庭環境を抱えた人が多く、未成年の飲酒や、薬を過剰摂取するオーバードーズが蔓延していました。
【グリ下に集まる少女(当時14歳)】「みんなでパキった(ハイになる)方が楽しいです。もう宇宙見えるっす」
さらに今月…。
【記者リポート】「グリ下に通う少女に売春させた容疑者の車が警察署を出ます」
「グリ下」に通う若者が、犯罪に巻き込まれることも…。
こうした多くの問題に頭を悩ませた大阪市。
これまで防犯カメラをつけるなどの対策を行ってきましたが、今回、物理的に居座るのを防ごうと新たにおよそ1600万円かけ、“塀”を設置したのです。
果たして、市の狙い通りグリ下に集まっていた若者は姿を消したのか…?
■「ここじゃないとあかん」グリ下の“塀” 設置後も集まる若者
3月26日、取材班が「グリ下」へ向かうと。
【記者リポート】「こちらを下ると本来なら多くの若者が集まっていました。あ、集まっていますね!塀を避けるように若者が多く集まっています」
依然として塀の近くや、階段などで若者たちが集まっていました。
なぜ今なお、場所を変えず集まっているのか?
【グリ下に集まる若者】「壁ができようが何しようが、政府のお上さんがギャーギャーいうて隠そうとしようが、何しようがそんなんはどうでもええと。ここ自体が、その場所っていうか、心許せる雰囲気になっているから。ここじゃないとあかんっていうふうに俺は感じてる」
グリ下だからこそ集まる意味があるといいます。
■「居場所を奪う」「効果が分からない」と若者支援のNPO理事長
グリ下の若者支援を行うNPO法人の理事長は、その効果に疑問を抱いています。
【認定NPO法人DXP今井紀明理事長】「今回の塀の設置に関して、(若者から)『私の今の生きるための場所を奪わないで』とか、『国は僕たちを助けてくれない、排除している』とか、グリ下に来ている子たちからすると、どうしても排除に映ってしまう。設置の効果がよくわからない」
■「根本の解決にはならない」と場所を移して集まる
さらに取材を進めると、変わりつつあるグリ下の“新たな実態”が見えてきました。
(Q.ここに集まってる?)
【ミナミにいた若者】「グリ下の子、ここじゃない。あっちです」
(Q.最近はここに集まっていない?)
【ミナミにいた若者】「ここはたまる場所がなくなったからって」
一部の若者は「場所を移し集まっている」といいます。その場所に向かうと。
【記者リポート】「こちら若者たちが集まっていますね。グリ下から100メートルほど離れた橋の下ですが、若者たちが集まっています」
20人ほどの若者たちが、グリ下から離れた別の場所に集まっていました。
【13歳】「(グリ下に)塀が追加されて狭くなって」
【18歳】「こっちやったら広いから、大人数で集まれるから」
【19歳】「塀ができたとしても、(集まる)場所が変わるくらいで、根本の解決にはならない」
「根本的な解決にはなっていない」と主張する若者たち。
■集まる理由―「楽しいから家のことを忘れられる」
なぜ、集まるのか…?
(Q.ここに来たきっかけは?)
【18歳】「くそ親」
【13歳】「くそ親。お母さんヒスったり、『児相入っとけ』とか、めっちゃ言うからそれで来た」
【18歳】「精神的虐待と身体的虐待」
(Q.ここに来たら楽になる?)
【13歳】「楽しいから、家のことを忘れられる」
(Q.大人たちに何を改善してほしい?)
【19歳】「無理やり家に帰れというんじゃなくって、家に理由があって帰れない子たちが泊まれる場所を作るとか」
■万博開幕で大勢の外国人観光客 場所を移して集まる若者
居場所を求める若者たち。しかし…。
【記者リポート】「今、私服警官の呼びかけにより、およそ20人ほど、若い男女がいたんですがみなさん、岐路についています」
万博に向けて設置された“塀”。
開幕した翌日の14日、再びグリ下を取材すると。
“塀”の周りには、通路を塞ぐほど大勢の外国人観光客が。
そして、その奥には…。
【記者リポート】「きょうもいますね、塀の前に数人の若者がいます」
万博開幕を迎えたものの、塀による効果はあまりないように見えます。
■「粘り強くやるしかない」と横山市長
こうした現状に大阪市の横山市長は。
【大阪市 横山英幸市長】「(塀を設置する)一点で問題解決するという趣旨ではなくて、まずあの場所に集う子供たちや若い人たちを適切な支援機関につないでいくこと」
(Q.「排除されているように感じる」という声もあるが)
【大阪市 横山英幸市長】「できる限り粘り強くお話をして、どういうニーズあるのか把握した上で、適切な支援機関につないでいく。粘り強くやるしかない」
居場所を求める若者と、環境を整備したい行政、両方を解決する方法はあるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2025年4月15日放送)