【母親】
「この高裁の判決でも認めてもらえたのもすごくうれしかったです」
5年前、初めて授かった待望の長女。
はじまりは、生まれて1カ月の長女を抱いていた時のことでした。
【母親】
「抱っこしながらグラスを取ろうと手を伸ばして、グラスをつかんでまた娘に手を戻すときに娘を落としてしまって…」
長女が頭からフローリングに落ちてしまい母親はすぐに119番通報し病院へ運ばれました。診断の結果、長女は頭の両側を骨折し入院することになりました。
児童相談所の判断で、入院を継続しながら長女を一時保護する措置がとられ、さらに16日後には長女は別の場所に移された上、母親との面会は禁止に。
しかし、一時保護の継続について判断する家庭裁判所は、児童相談所側の医師の鑑定に疑問があると指摘して、自宅引き取りを進めるよう指示しました。
【母親】
「私はあの審判の内容を見て、これで娘を返してもらえると思ったので…」
しかし児童相談所は家庭裁判所の指示に応じず、そのまま一時保護を継続しました。 結局、母親と娘が一緒に暮らせるようになるまで約8か月かかりました。
母親は児童相談所の中で何があったのか知りたいと裁判を起こしました。
裁判では一時保護継続の判断に関わった児童福祉司への尋問が行われました。
【裁判官】
「家庭裁判所は(鑑定書の)信用性について検討してくださいと。故意の虐待の可能性について検討してくださいと言われたわけですよね。そう理解しなかったのですか」
【児童福祉司A】
「おっしゃっている意味が分かりません」
【裁判官】
「なぜ分からないのですか。もう家庭裁判所の理由は尊重しなくていいとお考えになっていたということですか」
【児童福祉司A】
「そんなことは…」
そして2022年、大阪地裁は「速やかに他の医師の鑑定を求めていれば一時保護の必要がないと認識できた」として一時保護の継続について違法だと判断。
さらに、2ヵ月近くの面会制限についても「事実上、強制的に行われた」として違法だと認めました。
大阪府はこの判決を不服として控訴。 二審では和解に向けた協議も行われましたがまとまらず、8月30日に判決を迎えました。
大阪高裁は、一審と同じく一時保護を継続したことは違法だとしたうえで、面会制限についても「長女の安全が侵害される具体的な恐れはなかった」と指摘しました。
毎日の面会が許されるまでの約6カ月間、違法な面会制限があったとして大阪府に対し、一審から32万円増額した132万円の支払いを命じました。
【母親】
「今、一時保護されていて会えないご家族はたくさんいるので、そこをどういう仕組みで面会に制限かけているのか。私と娘が会えなかった時間はもう取り戻せないので、かけがえのない時間を児相や大阪府は奪っているということを分かってほしいなと思います」
判決を受け、大阪府は…
【吉村知事】
「児相の運営をしていくうえで子どもたちを守るというのが一番大切ですから、それを前提としたうえで、面会制限というのは例外的であるべきだというのが僕の考え方です」
大阪府は、今回の判決を踏まえた上で今後の対応を検討していきたいとしています。
今回の判決について双方の反応をまとめました。
まずは母親側は「面会制限が原則となっている今の運用を見直して欲しい」としています。一方で、大阪府吉村知事は「子供たちを守るのが一番大切だが、面会制限は例外的であるべき」つまり、面会制限は基本自由であるべきという姿勢を見せました。
子どもの命を守るための一時保護であるということも分かりますが、この面会制限のあり方について関西テレビ加藤さゆり報道デスクに聞きました。
【関西テレビ 加藤さゆりデスク】
「吉村知事は面会制限は自由だとおっしゃっていますが、実態はそうではなかったっていうことが改めて今回の裁判の中でも明らかになりました。今回のようにお母さんが訴えるケースっていうのは本当にごくまれで、というのも不当な引き離しがあった、そして戻された、そこに対して不服があったとしても、お母さんはその後も子育てが続くんですよね。だから、精神的、時間的な制限がある中でこういう訴えを起こすって、本当はすごくエネルギーのいることで、このお母さん本当に頑張られたなと思います。実際に面会制限っていうのはどの自治体でも行われていることですが、実は唯一、明石市だけなんですよ自由にしているっていう所がですね。本来は原則自由であるべき。それは子供の権利条約っていうのが、国連でも採択されていて日本も批准している国なので、まず子供の立場に立って、実際に会いたいと思っている子供、そして親の立場から自由っていうのは本来認められるべきことなんじゃないかなと思います」
今回の判決を受けて、大阪府がどのような対応を取るのか注目していきたいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月30日放送)