「政府が前面に立つ」パビリオン建設の遅れに対して強い危機感 “タイプX”で打開策となるか 大阪府では地元中小企業に協力要請も「情報がなく不安」 今後の万博準備の流れは?政府の思惑は? 2023年08月31日
■「政府が前面に立つ」と強い意志を表明
開催まで2年を切った大阪・関西万博について、岸田首相が先ほど、関係閣僚の会議で、「政府が前面に立つ」との強い意志を表明しました。
パビリオン建設の遅れが心配される中、危機感が高まってきています。
午後4時前、官邸を訪れた大阪府の吉村知事と大阪市の横山市長。
向かった先では、岸田首相のほか、西村経産相など万博の関係閣僚がずらりと並んでいました。
ここで、岸田首相が表明したのは、万博を政府主導で成功させるという強い意思でした。
【岸田文雄首相】
「私は内閣総理大臣として、万博成功に向けて政府の先頭に立って取り組む決意であります」
ここにきて一気に慌ただしく動き始めたように見える知事と市長。
その大きな原因が…海外パビリオン建設の遅れです。
大阪万博では、60の参加国が独自に設計や建築を手がける「タイプA」と呼ばれるパビリオンの建設を計画していますが、建設を始めるために必要な書類を提出したのは、現時点で3カ国。
工期の短さや資材の高騰などで、建設業者と参加国の契約が進んでいないのです。
■大阪市内の中小建設企業へ協力を要請
閣僚会議の約5時間前、吉村知事と横山市長は大阪で建設業者などと面会していました。
【大阪府 吉村洋文知事】
「時期が非常にタイトになってきている。新しい未来を大阪・関西から作っていくということ、にお力を貸していただけたら」
参加した建設業者によると、会合では、海外パビリオンの建設が遅れていることが伝えられ、協力を求められたといいます。
今回、参加するよう依頼があったのは、主に大阪府内の中小企業です。
その背景に、大手の建設業者は通常の仕事に加えて、すでに会場整備などの工事を受注していて、海外パビリオンまで手が回らないところが多いという現状があります。
中小の企業からは、突然の協力要請に戸惑いの声も聞かれました。
【大阪府中小建設業協会 山本博史副会長】
「私らクラスでは万博に参加する(予定)は元々なかったので、こちらに市長・知事から(協力を)言われたことはないので、今から具体的にやっていこうかなという感じですね」
Q.業界からの要望は?
【大阪府中小建設業協会 山本博史副会長】
「なかなかね、こっちもそこまで何も考えてない実際は…」
【大阪府内の中小施工業者】
「不安事項というのは、共通していて、やはりスケジュール感がはっきりでてきていない。情報がないので、不安しかない」
そんな中で浮上したのは、パビリオンの建物は日本が用意した上で、装飾などを参加国が手がける「タイプX」。
参加国は「タイプA」から「タイプX」に変更することができますが、その締め切りは「8月末」が目途とされていました。
閣僚会合でも岡田万博担当相から発言が
【岡田直樹万博担当相】
「いわゆるタイプXに関心を持つ国も出てきています。参加国に対しては改めて支援策であるタイプXの活用の意向を確認する、パビリオンの施工環境整備などの支援策を講じていきます」
何カ国が変更を申し出ているかは、明らかにされませんでした。
海外パビリオンの建設の進捗については、岸田首相が危機感を示しました。
【岸田文雄首相】
「胸突き八丁の状態。極めて厳しい状況におかれていると改めて直視し、正面から全力で。お集まりいただきましたのは、まずこの危機感を政府、大阪府、大阪市、万博協会、そして経済界が共有するためのものであります」
この大阪・関西万博の関係閣僚会議ですが、なぜこのタイミングで開かれたのでしょうか。
政府の思惑について東京で取材を続ける鈴木記者の解説です
■今回の閣僚会議の思惑
Q.今回の会議は急に決まったことなんでしょうか?
【鈴木祐輔記者】
「どうもそういうわけではないようです。吉村知事と近い関係者によりますと、今回の関係閣僚会議の出席というのは総理官邸の側から約1カ月前に打診があったということなんです」
Q.そうなるとパビリオンの建設の遅れや費用などの懸念もある中で今回の開催になったということですか?
【鈴木祐輔記者】
「実はこれについて最近、大阪や維新側から政府関係者をやきもきさせる声が聞こえてきているんです。まずはですね日本維新の会、馬場代表が30日に『万博というのは国の行事でありますから、国のイベントでありますから大阪の責任とかそういうことではなしに国を挙げてやっていく』と発言しています。こうした発言に代表されますように大阪府の吉村知事もこのようなこと言っています」
【鈴木祐輔記者】
「大阪側から万博は国の事業だとの発言が相次いでいるんですね。確かに万博はそもそもオリンピックとは違いまして、国が主体となる事業ではあるんです。それはそうなんですけれども政府側にしてみると、少し距離を置いているなと感じていたそうで、ある政府の万博担当者に会合前に聞いたんですけれども、『もう国に預けたのだから大阪は関係ないという姿勢になっては困る。大阪も最初の誘致であれだけやったのだから、できることはきちんとやってほしい』ということを 総理の挨拶に入れ込むという風に話しています。その結果、先ほどの岸田総理のコメントに繋がってくるわけです。今回のような会合がこのように全て公開の場で行われたというのは、結構珍しいことなんです。責任の押し付け合いではなく、万博の成功へ一致団結した姿を国民に見せる狙いがあったのではないでしょうか」
ここにきての岸田首相の発言にはどのような意図があるのでしょうか。
【関西テレビ 神崎報道デスク】
「岸田総理といえば、例えばマイナンバーの問題ですと、河野大臣を先頭に立たせて自分はちょっと後ろにいるみたいな感じでした。最近、例えば原発の処理水の問題も福島入りしたりとか、自分からも漁業者と話をしたりとか東電と話をしたりとか、急に政府の先頭に立つという姿勢を見せてきています。何かと言いますと、このマイナンバーの問題で支持率がぐーっと下がってきてるんですね。この支持率を上げないと先には、例えば今年の年末ぐらいに解散したいなと思われてるかもしれないんですけども、ある程度は支持率がないと解散には踏み切れないと考えて、何とか支持率を上げるために自分が前面に立ってという姿勢を見せてるんだと思いますね」
国をあげてのイベントとなるのですが、海外パビリオンについても今日の会議で話がありました。
資材の高騰などで建設の遅れが指摘されていますが、苦肉のプレハブ工法「タイプX」。どういうものかと言いますと博覧会協会が簡易の施設を建設します。そして参加国が外装、内装のデザインを決めます。これが「タイプX」と呼ばれて各国に提案されているものなんですが、今日の会議で岡田万博担当相は「タイプX」に興味を持つ国も出てきていると述べました。
比較的簡易な施設工期は短くなるであろうということなんですが、申請の回答は8月31日が締め切りということなんですけども、「タイプX」にどれだけの国がシフトしていくのかということが今後のポイントとなりそうです。
【関西テレビ 神崎報道デスク】
「プレハブと聞くと簡易な小屋みたいなイメージをされるかもしれないですけど、ドバイ万博の時の日本のパビリオンはかっこいいデザインだったんですが 実は『タイプX』のように作られました。『タイプX』にすると工期が短くなるし、工夫次第でちゃんとかっこいいものになるのでそこまで危惧することはないのではないかと私は思います」
「政府の主導」という強い意思を表明した岸田首相ですが、今の準備が遅れているという段階の中で、その遅れを取り戻すことが果たしてできるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月31日放送)