大阪湾の「赤貝」去年の漁獲量は「ほぼゼロ」
【記者レポート】
「こちらは大阪湾で今が旬のアカガイ。歯ごたえがあってとてもおいしいです。でも今この春の味覚に危機が迫っているのです」
大阪府・泉佐野漁港―
大阪湾で獲れた新鮮な魚や貝が次々と水揚げされます。中でもこの時期美味しいのが、身が詰まったアカガイやトリガイなどの二枚貝。
【鮮魚店店員】
「地元でとれた赤貝です。こんだけ丸丸してたら、おいしいですよ。ちょうどここをひらいたらおすし屋さんによくでるような形になるんです」
しかし、去年は市場に大阪湾で獲れた貝が並ぶことはほとんどありませんでした。その原因は…春先に発生した”貝毒”です。地元の漁師に話を聞くと…。
【漁師】
「貝毒いつなるのかわからへんからな、今ぎょうさん取れてるといっても急に明日(出荷したら)アカンとかなるから。赤貝だけじゃなくて、鳥貝も。毎年、鳥貝の旬のときに貝毒がでるから、それがダメージ大きいね」
「ふぐ毒」に似た猛毒…最悪の場合「死」も
今年は今の時点で貝毒は発生していませんが、大阪湾では2002年に初めて確認されて以降、ほぼ毎年発生。毒はふぐの毒と似た猛毒で、毒をもった貝を人が食べると手足や口のしびれ・呼吸困難などを起こし、最悪の場合死亡することもあります。
そのため貝毒が発生すると出荷規制がかかり、漁師の悩みの種となっているのです。とくに去年は、大阪湾でいつもより早い2月から貝毒が発生し、半年間も収まらなかったため二枚貝の漁獲高は「ほぼ0」になりました。
貝毒の原因は、“アレキサンドリア・タマレンセ”という貝毒プランクトンです。アサリやアカガイなどの二枚貝が、大量発生した貝毒プランクトンを食べると、身に毒が蓄積されてしまうのです。
全国初の「貝毒撲滅作戦」漁師が立ち上がる
貝毒プランクトンの発生をなんとか抑えようと、漁師たちが立ち上がりました。
【記者レポ―ト】
「貝毒を防ごうと、大阪府にある漁港から、約30隻の漁船が集まってきました」
岸和田漁港沖に漁船が集結。全国初の”貝毒撲滅作戦”に挑みます。
【漁師】
「春先は一番貝が値段上がるし、獲れる時期やしね、それを狙いにいく人もおるから…」
Q:効果に期待?
「そうですね」
「貝毒」の原因は…「大阪湾がきれいすぎる」
大阪湾で貝毒プランクトンが増えた一つの要因は…大阪湾が「きれいすぎる」ということ。透明度が高くなっている反面、栄養分が少なくなってしまったため、栄養が少ない環境に強い、貝毒プランクトンばかりが増えているのではないかと考えられているのです。
今回の作戦はそこに目をつけました。船から「桁」という道具を海底に下ろして引っ張ることで、沈んでいる「栄養分」と「プランクトン」を巻き上げます。
海水の栄養が多くなると、無害なプランクトンが増やすい環境になるため、貝毒プランクトンは生存競争に負けて減ります。貝は無害なプランクトンを食べる確率が高くなり、毒をもたなくなるという考えです。
水産技術センターによると、同じ方法で別のプランクトンを減らす効果があったという研究結果があり、貝毒にも効果があるのではと期待がかかっています。
結果はわからないが…期待を込めて
【漁師】
「藁をもつかむという感じ。なんでもかまへんからやってみて、その結果どういう風になるかやっていかない限り何もできません。何もせずにいてるよりも行動に移す方がいいと思って、みんなでやっているので。期待はしています。期待がなかったらできません」
はたして貝毒を防ぐことはできるのか…。貝毒が発生しやすい3~5月に、水産技術センターが調査を行い、効果を検証していくという事です。