一ヵ月後の6月28日と29日に開かれる「G20大阪サミット」
37の国と国際機関からやってくる大勢の”要人警護”を任されたのは…大阪府警・警衛警護課の警護員、いわゆる『SP』です。
日本で”過去最大規模”の警備
G20の警備の基本方針は「スムーズな会議の進行」「テロ対策」「サイバー攻撃への対応」そして、「要人警護」です。
警備の体制が過去最大規模となるため、大阪府警は新たに警護員を増員しました。
交番で地域の見守りなどをしていた菅野浩司巡査部長(36)。要人を守る警護員の姿に憧れがあったといいます。
Q:どうですか初めて無線つけてみて?
【菅野さん】
「ありがとうございます」
Q:なぜネクタイ赤?
「よくテレビで見る…SPとかは『赤』つけてるので、『赤』意識してます」
日本で2人、「要人警護のプロ」が指導
この日、初めて警護の訓練に臨みました。
要人を警護しながらエレベーターを降ります。
【先輩警護員】
「(エレベーターから)出てくるところ、一番危ないところ。わかるかな。エレベーター乗ってて、この状況ってわからないよね。出たときどうなってるか、出たとき最初に左右確認しないとあかんわ」
「想像しないとあかんわ形だけやろうとしてるから。守られへんわ。なんかあったらっていう顔になってない」
少しのミスが命取りに…たった一つの動きを何度も繰り返します。
【菅野さん】
「難しかったです。一つのミスが許されない、警護の緊張感がすごく伝わりました」
菅野さんを指導するのは井本慶剛管理官(58)。
実は日本で2人しかいない「警察庁指定広域技能指導官」と呼ばれる要人警護のプロ中のプロです。
小泉純一郎元首相や、3年前の伊勢・志摩サミットではフランスの大統領の警護も任されました。
【井本さん】
「身を挺して守るくらいの気概を持って、現場従事してもらおうと思えば、やっぱり厳しい訓練も必要になってくるんで」
盾になって守る…きっかけは44年前の事件
“盾となって要人を守る”この方法が導入されたきっかけは、44年前、日本で起きた事件でした。地面に倒れこむのは、当時の三木首相です。
葬儀に参列していたところ乱入してきた男に顔をなぐられたのです。
【井本さん】
「以前はやはり直近で(要人を)守っていない時代がありました。10~20m離れたところから見守る形で警護をしていた。警護対象者がケガをするような事案が発生してましたので、途中からこういうやり方ではまずいんじゃないかと」
現職の首相が襲われるという衝撃の事件。いつ何が起こるか分からない現場ですぐに対応できるよう、現在の”そばで護る方法”に変わったのです。
新人SP、初現場は「安倍首相の警護」
この日、初めての警護の任務へと向かう菅野さん。
【菅野さん】
「髪型は、ばりばり固めてカッコつけてるわけではなくて、警戒中に少しでも乱れたら、前髪か掛かったり一瞬でも隙を作ってしまうと、警護に支障が出るので・・・」
守るのは、選挙の応援で大阪を訪れる安倍首相です。
【先輩警護員】
「演説を聞いてる人もいれば、ちょっとなんかモノでもほったろかなという人もいるかもしれないので、その辺はしっかりと目を光らせて、その場で自分で判断して止めてもらうと」
【井本さん】
「まさに本番は訓練のように落ち着いてやってきたことをしっかりやってもらう」
警護員の仕事は、要人のそばで守るだけではありません。事前に警備しやすい環境を作ることも大切な役割です。
【井本さん】
「警察だけでなく、地元の人たち、協力を得ながら一緒になって、警護やりやすいように環境を整えるというのは大事な仕事の一つ」
集まっている人に声をかけることによって、反応がおかしい人がいれば警戒を強めたり、場合によっては隔離したりする事もあるということです。
そして安倍首相が到着。
菅野さんが配置されたのは、安倍首相が乗る選挙カーのすぐそばです。
【井本さん】
「目線を下に見てしまうと周りのこと見えないんですよね。目線を上げて大きく広く見てましょう、ということでやってます」
初任務の菅野さん。現場での物音にも敏感に反応し不測の事態に備えます。
安倍首相は応援演説を終え、警護員たちに守られながら無事東京へと帰りました。
【菅野さん】
「このタイミングで警衛警護課に配属されることになって非常に光栄に思っていまして、とにかく自分の体はって守るしかないというそれだけですね。
Q:ネクタイの色は?
「日の丸ということで」
G20を成功させるために、警護員たちは日々厳しい訓練に臨んでいます。