小学6年の女の子の命が奪われた堺市でのひき逃げ事件の裁判。
「人を轢いたと思わなかった」と話す被告人の運転手と法廷で直接向き合った家族は、複雑な想いで判決の日を迎えました。
遺品のランドセルから…「娘の夢」を知った母
【母親】
「なんか落書きとかしてるんちゃうかとか、そういうのを探してしてしまいましたけど。これだけ1枚だけ。ひょこっと入ってて…」
ランドセルに触れることができたのは、次女の松田玲海さん(11歳)が、この世を去った約4か月後でした。
ランドセルの中から出てきたのは、事故の半年前、玲海さんが書いた6年生の目標のプリントでした。
【玲海さんの6年生の目標】
「6年生になったら、家でコンロを扱えるようになりたいです。なぜならもっと料理の幅が広がり、家族の分も作れるようになると思ったからです。」
『将来は海外で働きたい』と言っていた玲海さんは、英会話教室に向かう途中に命を奪われました。
自転車を引きずり…「逃走」した大型トレーラー
去年8月、自宅近くの交差点で、青信号の横断歩道を自転車で渡っていたところ、左折してきた大型トレーラーにひかれ、大型トレーラーは自転車をひきずったまま逃走したのです。
玲海さんは髪の毛が抜け落ちる、原因不明の病気を抱えながら、病に負けず、前向きに生きていました。
【玲海の姉・長女(22)】
「家族全体で、こう暗い感じにしないようにしていました。髪の毛なだけで普通やねんから。家族からこう『ないやん髪の毛』みたいな感じでいじって…、妹が『なんでやねん』って笑って返すような、普段からそういう感じだったので」
「人をひいたとは思わなかった」と供述
逃走した運転手の亀井龍也被告(35)は、自転車を捨てた後、一度は現場に戻りながらまた逃走した末、フェリーターミナルで身柄を確保されました。
捜査や裁判で「人をひいたとは思っていなかった」と供述する亀井被告。
しかし、事故の目撃者は、亀井被告の主張は考えられないと証言します。
【事故を目撃した男性】
「自分もトレーラーに乗っているんですけど、あれだけ揺れたら気になるとは思いますし、あの揺れ方やったら気が付くと思いますけどね。後ろで見てる範囲では、もう荷台がグラっ揺れた。あれぐらいの揺れなら普通は気が付くと思いますよ」
法廷で母親が…直接、被告人に問いかける
なぜ娘の命が奪われなければいけなかったのか、母親は裁判で直接、亀井被告に質問をぶつけました。
【母親】
「正直に答えてください!左前輪で乗り上げた後に、後輪も乗り上げて、なぜ止まらなかったのですか」
【亀井被告】
「・・・・・・(無言)」
その時の様子を振り返り、母親は話しました。
【母親】
「言葉がないから浮かばないのか、頭が回らないのか。逃げなあかんと思っているからセリフを考えているのかわからないが。こっちが反論できない。黙られたら終わりやもんね。」
「呼気からアルコール」も…「事故後に飲んだ」
さらに、警察が亀井被告を発見時、呼気からはアルコールが検出され車内にも酒が残されていました。
しかし、亀井被告は「(事故後)気をまぎらわすために飲んだ」と主張し、飲酒運転は立件されませんでした。
裁判は検察側が懲役4年を求め、審理は終了しました。
娘の命を…数字で判断される
目前に迫った判決に母親は、複雑な心境を語りました。
【母親】
「実刑になろうが、執行猶予でも、そういう基準じゃないねんな。その年数自体言われたくないから私にしたら。娘の死に方のレベルを裁判官が、そう判断したして認めたんやなと。結果を言われるのが怖い。玲海の命を数字で判断されるというのが納得できない上に、それを亀井がほっとするかと思ったら許されへん。それがミックスされる日やから今までで一番怖い日」
判決に…「こんなにも刑が軽いんやな…」
家族が大きな不安を抱きながら、直接司法の結論を聞くことになった17日の判決公判。
大阪地裁堺支部の三村三緒裁判官は、『トラックに引っかかった自転車を取り除き、事故現場まで戻って人だかりを見たのに、そのまま逃走した』『事故後に飲酒もしていて、現実から目を背けようという態度は無責任で悪質』として、亀井被告に懲役2年8か月の実刑判決を言い渡しました。
【判決後・母親】
「(刑期の)年数があまりにも短すぎて。ひき逃げとかしても、こんなに刑が軽いんやなって。自分の中では整理できない状態です」
遺族は、量刑に納得がいかないとして「検察に控訴してほしい」と話している。
カンテレ「報道ランナー」 2020年2月14、17日OAより