今年で35回目を迎える「調理師養成施設 調理技術コンクール全国大会」。
全国およそ1万3000人の調理師学校生の頂点を決める大会が、先月東京で行われました。
参加したのは全国7地区の予選を勝ち抜いた148人。
日本・西洋・中国の3料理部門に分かれ、課題となる材料を用いた2品を制限時間内に完成させます。
そして、3部門の総合1位となる「内閣総理大臣賞」を目指すのです。
この大会に初めて参加する中園龍さん・20歳。
大阪にある辻調理師専門学校で、中国料理を専攻する2年生です。
【中園さん】
「辻調理師専門学校はまだ(内閣総理大臣賞を)1回しか取ったことないから
取ったろうかいなって思ってます」
地区予選を2位で突破し、中園さんの専門学校では初となる、
中国料理での全国総合1位の期待がかかっています。
こちらが、中園さんが考えた全国大会用のメニュー。
競技課題として、前菜にはエビを、主菜には豚肉をメイン食材に使うことが決められています。
中園さん、料理名を「龍騰飛躍・高みへ」と名付けました。
【中園さん】
「僕の名前が龍なんで、龍が飛ぶように高みに向かっていけたらいいなっていう名前で選んでます」
全国大会では、仕込み・調理・盛付の3つの作業を2日に分けて行います。
本番6日前のこの日は、調理の練習。ライスペーパーに貼り付けたお米を円すい状に揚げ、
金時にんじんで作った帯を巻いていくのですが・・・。
【中園さん】
「すでにボロボロ崩れてきてるし」
細かい作業が苦手という中園さん。
【辻調理師専門学校 中国料理教員 藤田梢さん】
「(あえて)本人がやりたくないものを取り入れました。そのギャップがまたいいと思うんですよ。
彼の大きな手から繊細なものができる」
中国料理の藤田先生は、中園さんが全国大会出場へ向けて
動き出してから、およそ半年、二人三脚で指導してきました。
【中園さん】
「(あんが)めっちゃ足りんわ どうしよ」
【藤田さん】
「失敗した時にどうするかは考えないといけないと思うよ。絶対あるから。いつも同じじゃないから」
大会でミスをした時に焦らず冷静に対処できるか、中園さんにとっての課題です。
大分県出身の中園さん。高校時代に居酒屋でアルバイトをしたことが、
料理に興味を持つきっかけとなり、専門学校で中国料理と出会いました。
今回の全国大会には、大きな思いを抱いています。
【中園さん】
「将来僕がお店をする時に、辻調を卒業した、良いホテルに入った、何年間修行したっていう人は
多分多くいると思うので、その中で学生の時にコンクールに出て賞をとったよ、とか、
名前を広げられたらなと思ってはいました。負けたくないですね」
全国大会4日前。この日は盛り付けの練習です。
中園さんがぜひメニューに入れたかったというのが、オイスターソースで描く龍。
その上には、橋をかけるように、海老とパパイヤ、大根でカラフルに。
そして、リング状に揚げた中華麺を、蒸した紫芋の上に飾り、高みへと向かう立体感を表現します。
ここで、ある問題が・・・。
花を模したセロリに蒸した豚肉をのせるのですが、前日にあらかじめカットしておいた
セロリがしなびてしまい、花びらが広がるイメージが出せないのです。
【藤田さん】
「(大会2日目にセロリを)切れる時間が捻出できるんだったら、もう前日(大会1日目)に切るのはやめる?」
【中園さん】
「それか(セロリの量を)減らすか?」
2日間にわたる大会、最適な時間配分を考えるのも重要なポイントです。
【藤田さん】
「ちょっと詰めが甘いのがいつもあるんで、その部分が心配は心配なんですけど、
ただ毎日のように練習してきましたし、(練習)量では負けるものがないんで大丈夫だと思います」
大阪で一人暮らしをしている中園さん。
4月からは東京の高級ホテル内にある中国料理店への就職が決まっていて、
全国大会が学生生活の集大成となります。
【中園さん】
「これはあれです、地区大会の時の(準優勝の)賞状です。
こっち(辻調)に入ってからもらった賞状がこれだけなんで、もうこれが良かったですね、
優勝が良かったですね、普通に」
迎えた、全国大会当日。
1日目は仕込みがテーマ。総合1位となる内閣総理大臣賞を目指した戦いが始まります。
技術だけでなく、段取りや衛生面もチェックされるため下準備といっても気が抜けません。
そして、2日目。90分間の調理作業がスタートします。
最初に手をつけたのが課題だったセロリ。前日に仕込みをせず当日作業で手際よく包丁を入れ、
見た目の美しさを大切にするという作戦に…。
と、ここでトラブル発生。
中華麺のリングをのせる紫芋をうまく蒸すことができず、形が整いません。
練り直して柔らかくしようとしますがどうしても崩れてしまいます。
結局、不安を抱えたまま、調理時間が終了…。
最後は、場所を移しての盛り付け作業。ここですべてが決まります。
龍のイラストを描き上げ、順調に盛り付けを進めていく中園さん。
しかし、心配だった紫芋が硬く、麺のリングを立てることができません。
何度立ててもすぐに倒れてしまいます。
急きょ、半円形のデザインに変更し、なんとか盛り付けを終えました。
【中園さん】
「いや終わった、ダメだ。いや、わかんないす、他の盛り付けはうまくいったんで」
麺のリングが折れたこと以外はイメージ通り。運命の瞬間が近づきます。
まずは中国料理部門の第3位が読み上げられ、続いて第2位の発表です。
【表彰アナウンス】
「日本中国料理協会会長賞 辻調理師専門学校 中園龍さん」
中園さん、中国料理の第2位に選ばれました。
3部門のトップとなる総合1位には届きませんでしたが、中園さんの学生生活最後の挑戦が終わりました。
【中園さん】
「ちょっと芋の時はクソっ!て思いましたけど、それ以外は楽しく料理できました。
総理大臣賞が取りたかったです。とりあえず藤田先生に報告します、ありがとうございましたって」