音楽の授業は「歌えない」、「管楽器の演奏ができない」となっています。
数ある教科のなかでも特にこれまで通りの形で授業が難しい状態です。
そのなかで、こどもたちに音楽の楽しさをどう伝えるのか。
ベテラン音楽教師を取材しました。
子供たちの声が響かない音楽室
新しい生活は、教室の窓を開けて換気することから始まります。
小学校で音楽を教える臼井真さん(59)。
教壇に立つこと37年、来年春に退職を迎えます。
阪神淡路大震災からの復興と希望の歌、「しあわせ運べるように」を作詞・作曲。
いつも子どもたちと一緒に歌を歌ってきました。
長引く休校で、これほど、こどもたちと会えないのは初めてでした。
【神戸市立高羽小学校教諭・臼井真さん(59)】
「音楽の教師になったきっかけが子どもたちの歌声がとっても好きで、澄み切った大人には出せない声というのが。毎時間音楽の時間にきいてきたので。子供の声が響かない音楽室っていうのが耐えられない。昭和平成令和と先生をしてきて、コロナで最後終わってしまうと思ったら悲しい、複雑な気持ちもある」
歌えなくても…楽しめる授業の模索
この日は新しい学年となって、初めての音楽の授業です。
【臼井さん】
「阪神淡路が25年前に起こった時でも1か月ちょっとしたら子どもたち元気に登校して、授業らしいことができた。普通に歌えたし。こんなに3か月も教えない、授業しないことがなかったので。6月から授業ができるようになって嬉しいなと先生も思っている。」
文部科学省は音楽の授業で「合唱やリコーダーなどの演奏」は、感染症対策をしても、特に感染リスクが高いとしています。
音楽の授業はこれまでとは全く違う形に。
歌が歌えなくても、こどもたちが楽しめるよう工夫を重ねます。
【臼井さん】
「口パクでやってください」
まずは校歌を声に出さずに口パクで。
さらにアレンジを加えた校歌を披露。
まずは、校歌を普通に歌います。
【臼井さん】
「♪みなとのひがし~、くすがおか~」
これを臼井先生が「アレンジ」…こぶしを効かせ「演歌風」に歌います。
「♪み~なとのひがし、くすが~お~か~…これだけで違うのわかるよね」
授業の終わりには「元気いっぱいの笑顔」で挨拶です。
【臼井さん】
「さようなら!See you next time!バイビ~!手洗いうがいして帰ってね」
【授業を受けた生徒(6年生)】
「久しぶりで音楽のルールとかを忘れたこともあったけど、楽しくできてよかった。」
【授業を受けた生徒(6年生)】
「歌ったり、リコーダー吹いたりとかできないのが寂しい感じがしていつもと違うなって実感しました。」
子供たちの笑顔が見られるように
授業が終わったあとも、先生たちは教室の消毒作業に追われます。
【臼井さん】
「全国の先生方が、みんなこれを今やっている」
先が見えない、ウイルスとの戦い。
臼井さんには、大きな不安があります。
これまで合唱団を指導し、震災の記憶を語り継ぐ「神戸ルミナリエ」や追悼式典で毎年歌声を届けてきました。
しかし、今年は合唱練習の見通しが立たないうえ、式典の開催も危ぶまれています
【臼井さん】
「何か練習しても第二波第三波が来て、せっかく練習したものが発表できないとかなるんじゃないか。いろんなことで頭が混乱する。」
こどもたちの歌声が音楽室に響き渡る日まで。
【臼井さん】
「還暦の60歳のおじいさんがこんなに可愛くやっているんだから。もっとイキイキと!」
不安の中でも、子供達の笑顔がみられるよう、先生たちは常にベストな方法を模索し続けています。