長い休校、その後の分散登校などを経て、6月にやっと授業が始まった小学校。
新型コロナウイルスで、何もかもが「異例」となった年の新一年生のために、大阪のある小学校で、特別な「入学式」が開かれました。
今年だからこその晴れ舞台と、その裏側を取材しました。
6月にようやく…初めてランドセルでの登校
【小学1年・高橋仁太くん】
「いってきまーす」
――Q:ランドセルはどう?
【高橋仁太くん】
「うれしい。かっこいいから」
小学1年生の高橋仁太くん(7)。
6月1日、初めてランドセルで登校できました。
やっと始まった小学校生活。
【小学1年・高橋仁太くん】
「めがでてる」
5月の登校日に植えた朝顔に、もう小さな葉っぱが生えていました。
仁太君が楽しみにしていた学校生活。
先生たちにとっては、挑戦が始まった日でもありました。
この4日前、再開に向けて先生たちが集まっていました。
職員会議では感染防止のための具体的な方法に関して、先生たちからも疑問や質問が出ていました。
【宮河直子先生】
「アルコール消毒までやらせないといけないですか?給食前は?」
【保健室の先生】
「アレルギーとか、肌が弱い子がたくさんいるので、手洗いをしっかりするというだけでいきたいと思っています」
もちろん「感染防止」以外にも気をつけないといけないことはたくさんあります。そんな例年以上の緊張感が漂う中、校長先生が1つだけ約束を作りました。
【竹内幸延校長】
「登校しづらい子供、ついつい休校中のギャップに悩む子も出てくると思いますので、せかさない、ゆるゆるとやっていきませんか」
休校明けの教室は…連日ドタバタ
長い間、自宅で”充電”し続けていた子どもたち。
そのパワーは先生の想像を超えていました。
【宮河直子先生】
「ランドセルがなくなった!?今日持ってきた!?」
まだ慣れないせいか…「ランドセル紛失事件」が発生。
また、学校の再開当初は「密」を避けるためクラスも分散。教室も分けて「理科室」などでも授業を行っていましたが…その結果、どこに行けばいいかわからず「学校内での迷子」になる児童も多発。
その他にも…
【宮河直子先生】
「これ、あられちゃんのや。あんた持って来たん?人様の着ません」
「友達の給食エプロン着ちゃった事件」に…
【宮河直子先生】
「鼻血出た?」
「いつのまにか鼻血事件」まで。
これには先生も…。
【宮河直子先生】
「大変なことは予想はしていたけど、ここまでシュミレーション通りにいかないかって。でも、かわいかったでしょ?アハハハハ」
6月の「入学式」 一番見たい子供の姿を
それから2週間が経過し…。
やっとクラス全員で授業を受けられるようになりました。
歌うことができない音楽の時間に、子どもたちはダンスを考えています。
延期されていた入学式で披露することにしたのです。
宮河先生は教室でカメラを構えていました。生徒たちを撮影しています。
【宮河直子先生】
「入学式をするってなったときに、『え~いまさら!?』と。失礼な話、校長先生の話、誰々の祝辞、誰々の挨拶が聴きたい?と。じゃあ、おうちの人が1番見たい子ども達の姿ってなんだろう?と。『学校ではちゃんと楽しんでるんやろうか』『学校でちゃんとやれてるかな?』っていうのが、1番不安だと思うので、それを入学式で見てもらえたらいいかなと思ってます」
子どもたちの前では明るくふるまっていますが、先生も初めての経験にたくさん悩んでいました。
【宮河直子先生】
「(子供たちは)どうしても会話するし近づくし、それを避けようとすると『子ども達に近づいたらうつるんだよ』って言うのって、『相手は病気を持ってる、疑いなさい』ってことになるから、そこを何と言ったらいいのかなと…。今の状態でみんなが思いあえるような、1つの学級になれるんかな、どうなんだろう?っていうのが、1番の心配なところです」
自分たちが悩んでいるのと同じように、保護者も学校生活に不安を感じているのではないか。
入学式は成長した姿を見てもらうため、あえて週末に行うことにしました。
「学校での成長」を見る入学式に
入学式の日、高橋仁太くんは朝からワクワクしていました。
【小学1年・高橋仁太くん】
「おかあちゃん、見に来る?」
【仁太君のお母さん】
「見にいくよ」
色んな事があった今年だからとはいえ…イメージとはちょっと違う「6月の入学式」。
お父さんお母さんには戸惑いもあるようです。
【仁太君のお父さん】
「(既に)学校行ってるんでね~、ちょっと変な気持ちですけど、晴れ姿なんで」
新一年生を祝福するように、良く晴れた入学式当日。
元気いっぱいの仁太君を先頭に、家族みんなで、入学式に向かいます。
【竹内幸延校長】
「1年生のみなさん、ご入学おめでとうございます」
校長先生のあいさつの後、舞台上で大きなスクリーンに映し出されたのは、学校での新一年生たちの頑張っている姿です。
学校が始まって3週間。毎日の生活の様子が紹介されていきます。
宮河先生も撮影していた、あの写真でした。
画像に合わせ、学校での児童の活動を紹介していきます。
【宮河直子先生】
「1年生の1日は、朝顔の水やりから始まります」
そして今度は、舞台上に新一年生たちが登場しました。
いよいよみんなで考えたダンスです。
熱中症を予防するために、このときだけマスクは外しました。
するとここで、先生が保護者に向かって声を掛けました。
【宮河直子先生】
「前来ていただいて構いませんよ」
元気にダンスする子供たちの姿…並んで撮影している保護者の皆さんも笑顔です。
【宮河直子先生】
「保護者の方はマスクしたままの写真よりも、やっぱり顔がちゃんとみたいだろうし、制限だらけの生活だから、きょうは制限がない入学式にしたかったです」
子供たちの学校での成長を、保護者と先生たちが一緒に実感した入学式になりました。
仁太君のご両親も感激した様子です。
――Q:いっぱい写真撮りました?
【仁太君のお母さん】
「撮りました!動画も撮りました!」
【仁太君のお父さん】
「こういう生活を送ってるんだなって分かったので、安心と同時にとても楽しかったと思います」
これからも子どもたちが、コロナに負けず「ゆるゆると」育ちますように。
きょうも先生と子どもたちの元気な声が響き渡ります。