学校法人森友学園をめぐる「公文書改ざん問題」に巻き込まれて自殺した財務省の職員の妻が、国を訴えた裁判が始まるのを前に取材に応じました。
国が問題の幕引きを図る中、妻が望みはただ一つ、「真実が知りたい…」それだけです。
夫は仕事に誇りを持っていた
15日から始まる裁判を前に、関西テレビの取材に応じた赤木雅子さん(49)
【自殺した赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「出会ったときから亡くなるまで、一貫してとにかく優しい人でした」
近畿財務局の職員だった夫の赤木俊夫さん(当時54歳)は、森友学園との土地取引をめぐる公文書を改ざんしたことを苦に、2018年自殺しました。
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「一番覚えているのは『僕は犯罪者や』とか、『内閣が吹っ飛ぶようなことをした』と、よく言っていました」
結婚して23年。
「公務員」という仕事に誇りを持って働く俊夫さんが好きだったといいます。
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「『僕の雇用主は日本国民』『国家公務員として働けることに誇りを持っています』と知人に話していたそうです。そういう人間だったからこそ、改ざんをしてしまったことを苦しんだと思います」
雅子さんは改ざんを指示したとされる佐川宣寿元理財局長と国を相手取り、計1億円を超える損害賠償を求める裁判を起こしました。
虚偽の答弁…「文書の改ざん」に
ことの発端は3年前。
財務省の近畿財務局が学校法人森友学園に対し、大阪府豊中市の国有地を、鑑定価格よりも8億円以上値引きして売却した問題が発覚したことでした。
安倍総理夫妻が不当な値引きに関与した疑惑が浮上すると…。
【安倍晋三総理大臣(2017年2月)】
「私や妻が、認可あるいは国有地払い下げに、事務所も含めて一切かかわっていない事は明確にさせて頂きたい。もし関わっていたら、これはもう、私が総理大臣を辞めるということですから」
国有地の管理の責任者だった佐川理財局長(当時)は、国会でこんな答弁を繰り返しました。
【佐川宣寿理財局長(当時)(2017年2月)】
「速やかに事案終了で廃棄していると思う。記録は残ってございません」
後に「虚偽」と分かったこの答弁に、辻褄を合わす形で文書の改ざんが始まり、俊夫さんは書き換えの作業を強いられることになりました。
改ざんが明るみになり…自宅で命を絶つ
俊夫さんは「良心の呵責」に苦しみ、うつ病を発症しました。
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「本当に改ざんした日から表情が変わっていったのが分かるんですね。その頃から口数も減ったし、笑わなくなったし。『やってはいけないことをやった』って言うようになって。人間が壊れてく。改ざんしてから、夫と私の生活は壊れてしまって。結果、夫は死を選んでしまって。ただ普通に生活していただけなのに、こんなことになってしまって悔しい」
そして遂に、「改ざん」という真実が報道によって明るみに出ると…。
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「報道が出た後は、着実に死に向かっているというか。遺書と首を吊る何かをポケットに入れて山にこもったりとか、夜中にそっと家を出ようとしたりとか。こんな不安なことはない。もう、助けを求める先が分からなくて…」
2018年3月7日、俊夫さんは自宅で命を絶ちました。 この日、仕事に出掛ける雅子さんへ「ありがとう」と声をかけたのが、最後の言葉でした。
手記と遺書に…改ざんの詳細も
死後すぐに見つかった手記と遺書には、組織ぐるみの改ざんの詳細と、自らも不正に手を染めてしまった罪の意識が、克明につづられています。
【赤木さんが遺した手記(中略などあり)】
『元は、すべて、佐川理財局長の指示です』
『パワハラで有名な佐川局長の指示には、誰も背けないのです』
『この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。謝っても、気が狂うほどの怖さと辛さ。こんな人生って何?さようなら』
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「こんな辛い思いをずっとしてたんやなというのも感じることはできたけど、内容を全部飲み込めたかというと、その時は無理でした。ただ、感じたのは、『これは、いずれ外に出さないといけないものだ』」
そして、2020年3月、雅子さんはこの手記を公開。
俊夫さんの死の真相を知るため、政府に改ざん問題の再調査を求めましたが…。
【麻生太郎財務相(2020年3月)】
「再調査を今の段階で行うことは、考えていません」
【安倍晋三総理大臣(2020年3月)】
「財務大臣が答えたことが、政府の考え方であります」
政府が問題の幕引きを図る中、雅子さんは第三者委員会による調査を求める署名を実施。
35万人以上もの賛同の声を集めたほか、辛かった2年間を振り返り、本にまとめました。
裁判では当時の幹部の証人尋問も求める方針。
15日から始まる裁判では、佐川氏をはじめとした当時の幹部の証人尋問を求める方針です。
【赤木俊夫さんの妻・雅子さん】
「夫のためにできることは、何でもやろうと思って。あの時、助けてあげられなかった分、今やれることはやっていきたい。改ざんをやってしまったって事は認めていますし、すごく恥じていたし、悔やんでいたけど…。夫だけじゃなくて、たくさん、それを指示した人がいるんだから。何が原因で改ざんしないといけなくなったのかを、ちゃんと公にしてほしい」