今年、高校球児たちは甲子園ではなく、各地の「独自大会」で全力を出しています。
その大阪府の大会に出場した少し変わったチームの「特別な夏」を取材しました。
現在行われている大阪高校野球の独自大会。
出場校の中で、選手たちのユニフォームが違う1つのチームがあります。
実はこのチーム…
大阪府立島本高校。3年生4人だけの野球部と…
2、3年生合わせて6人の大阪府立福井高校野球部
1校では試合に出場できない2校による連合チームです。
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「連合楽しいです。連合で良かったです。結構仲良くできている合同の方が強くなった」
連合チームのキャプテンは、福井高校の藤川駆嵐選手。
違う高校の部員にも厳しく声をかけ、去年の夏からチームをまとめてきました。
しかし、チームがバラバラになってしまう危機がありました。
新型コロナウイルスの感染拡大で、連合チームで出場するはずだった春の大阪大会、さらには夏の大会も中止になり、島本高校キャプテンの山本選手が、退部を決意しました。
【島本高校 主将・山本健翔選手】
「やる気全然なくて正直野球やりたくないなと思いました。」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「めっちゃ止めました。お互い1年生の頃から試合に出ていたので、ライバル心もありましたし、山本いなかったらチームの雰囲気だって下がりますし、この島本・福井には山本の力が必要だなと思って止めました」
分裂を食い止めたチーム。
そんな中…
【大阪高野連の会見】
「名称は令和2年大阪府高等学校野球大会とします」
大阪府の高野連は夏の大会に代わる独自大会の開催を発表。
一度は無くなった集大成の場が用意されました。
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「このまま何もせずに高校野球終わるのかなって不安やったんですけど、大阪独自の大会開いてくれるってことで、それに向けて全員で頑張ろうっていう気持ちになりました」
大会前の練習試合では、6勝1敗と勢いに乗っている連合チーム。
練習試合には、近くに住む藤川選手のおばあちゃんが頻繁に駆けつけ、静かに見守ります。
この日も快勝し、大会に向けて弾みをつけました。
【藤川選手の祖母・山田久子さん】
「待ってたけど、なかなかやから歩いて帰りますわ」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「歩いて帰るの?気を付けや」
おばあちゃんと別れた藤川選手は、大事なミーティングに向かいました。
【島本高校野球部・下窪裕樹部長】
「大阪大会開幕して、これ出来ることってすごく幸せなことやし、元気に野球できる喜び、最後高校野球悔いのないように甲子園につながってないとはいえ、やり切ってほしい。今から背番号発表します」
「4番山本健翔、6番藤川」
【福井高校野球部・谷内剛枝監督】
「背番号合同チーム、先生も初めてで配ったけど、先生高校時代、実は背番号1回ももらっていません。君らがすごく羨ましい。全員もらえるけど、背番号の重み責任感を持って挑んでほしいなと思います」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「ただいまー。これ背番号6番もらったから」
――Q:お孫さんの背番号いつも何番ですか
【藤川選手の祖母・山田久子さん】
「6番か7番ですかね」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「6しかもらったことないよ、7とかもらったことないわ」
いつも試合を見に来ていたおばあちゃん。
独自大会では入場制限があるため、球場に入ることは出来ません。
【藤川選手の祖母・山田久子さん】
「今はコロナで仕方ないね、行きたいけどね、みんな我慢してはんねんから」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「高校最後なので一生懸命頑張ります」
特別な夏、本番。相手は、公立の強豪・大阪府立港高校です。
序盤は両者一歩も譲らない投手戦。
先制点を早く奪いたいところですが、藤川選手も塁に出ることができません。
そして5回。連合チームは強力打線に捕まり、一挙5点を失います。
降りしきる大雨の中、山本選手も懸命に守り、逆転を信じますが…
反撃叶わず、初戦敗退となってしまいました。
【島本高校 主将・山本健翔選手】
「一番いい夏でしたし、福井とやったからこそいい夏に出来たと思います」
【福井高校 主将・藤川駆嵐選手】
「なんか辛い時あったら、島本・福井で練習してきたことを思い出して乗り越えていきたいと思います」