5年に1度、日本に住む全ての人と世帯を対象に行われる国勢調査。
大正9年に初めて実施されてから今年でちょうど100年です。
調査にまつわる知られざる歴史から集めたデータの意外な使い道。
さらにはいま浮上している課題まで詳しく「深掘り」して、お伝えします。
意気込みが…スゴい!「第1回の国勢調査」
街で皆さんに話を聞いてみると…
――Q:もう届きました?
【街の人】
「届いてますよ。ネットですぐできそうやから、ネットでやるつもりですけど」
「そんな詳しいこと書く必要ないんかな、プライバシーのことがあるのでね」
「何に役立っているのかなっていうのはすごい思います」
調査対象は、日本に住む全ての人と世帯。
国が最も重要と位置づける統計調査なんですが、大正9年に初めて実施され、実は今年はちょうど100年の節目の年です。その100年前の意気込みがすごかった!
100年前の当時のポスターを見てみると、大正9年10月1日の0時に全国一斉に始まるとあり、「正直にありのままに書いてください」「字を全く書けない人は書いてあげます」と記載されている。
さらに、「この調べに漏れては国民の恥」という標語まであるほど。
合言葉は「文明国の仲間入り」だった。時代背景について、東京外国語大学の佐藤正広教授にに伺うと、政府の思惑は…「一等国の証明のため欧米諸国にアピール」国民の感情は…「ナショナリズムの高まりと、調査に参加する誇り」とのこと。
大正9年といえば、日本は日露戦争や第一次世界大戦などで勝利した後のこと。
国民の生活実態を把握し国の状況を明らかにすることで、欧米と並ぶ文明国であると証明する必要があった。
集められたデータは、ビジネスでも活用が進む
今年の国勢調査は日本国内に住んでいる全ての人を対象(外国人含む)にしていて、予算は約727億円。10月7日までに回答する義務があります。
ちなみに、調査に対して拒否したり嘘をつくと、罰則があります(50万円以下)
気になるデータの使い道ですが、衆院小選挙区の選定、避難所の設置などの防災対策、地方交付税の算定、市などの指定に用いられています。
町が市になるには人口が5万人いないとなれないが、国勢調査をめぐって、こんな事件もありました
町から市への移行を目指した愛知県東浦町が2010年の国勢調査の結果、人口が5万人に足りなかった。
そこで、市の幹部が結果を300人ほど水増ししてしまい、これが明るみになって、幹部は逮捕され、のちに有罪判決を受けたのだ。
集められたデータが多方面で活用される国勢調査だが実は、民間企業も活用している。
大阪市北区の「マーケティングデザイン」。
国勢調査のデータの分析結果を使って、クライアントに効果的な宣伝方法などを提案しています。
【マーケティングデザイン 廣見剛利社長】
「新規出店、新たなプロモーション活動をする時最初の道しるべになるのが国勢調査のデータ。持ち家かどうか、共同住宅である、世帯に何人住んでいる、年齢数がどういう人が住んでいるのか、俯瞰的に全体的に分かる」
国勢調査のデータを地図に落とし込んだシステムを使うことでエリアの特徴が一目瞭然になります!
9月にオープンしたばかりの心斎橋のトレーニングジム「X BODY Lab 心斎橋」。
トレーナーがマンツーマンで指導し、電気が流れる最新機器を使った短時間のトレーニングを売りにしていて、マーケティングデザインが集客の戦略を練っています。
店舗から3キロ圏内にどのような客層がいるのかを分析し、数値で表します。
【マーケティングデザイン 廣見剛利社長】
「30代・40代の富裕層を狙っているというのがあるので、実際の人数割合的には十分マーケットが確保されているのか、これで見ると増えている。増えている層という事は、市場としては余地があるので出店するエリアとしてはひとつの選択肢になる」
国勢調査の分析からこのエリアの30代・40代の人口は5年前に比べて増えていることが分かります。
私たち、ひとりひとりが回答したデータの積み重ねが、様々な商業施設の出店のひとつの要素となっているのです。
【X BODY Lab 心斎橋 河野恭浩さん】
「時間がない方が多いので、チラシの内容として20分で効果を出せるということを大きく出すことによって他社との違い。チラシを10万部まいたらだいたい20人ぐらいの方に来ていただけたら最低ラインに達する」
スポーツクラブなどの商業施設では、チラシのポスティングや折り込み広告を出す際に、若年層を集めたいか高齢層を集めたいかによって配るエリアや内容を変える戦略がとられています。
【マーケティングデザイン 廣見剛利社長】
「お客さまの広告費が無駄にならないという観点でいくと、ノンターゲティングで広告をする時代ではないので、国勢調査のデータは非常に重要になる」
課題は…「未回収率」、実は年々上がっている。
そのほか教育や福祉、雇用など様々な政策に活用される国勢調査ですが、大きな課題も抱えている。未回収率、つまり調査票を回収できない世帯の割合の増加です。
国勢調査について詳しい、関西学院大学社会学部の大谷信介教授は「質問項目を含めて、調査のやり方を抜本的に見直す時期に来ていると指摘している」とコメントしている。
100年目を迎えた国勢調査。
深堀してみると、私たちの生活と結びつく部分が多くあることが分かります。
プライバシー意識の高まりなど、時代が変遷する中で課題はありますが、回答は義務となっています。期限は10月7日です。
カンテレ「報道ランナー」2020年9月24日放送 『ぐぐっと深掘り!しらべるジャーナル』より