新型コロナウイルスに感染しているにもかかわらず、自宅療養している人が全国で3万人を超えています。
また、入院調整中という人は京阪神で2800人以上。
高齢で基礎疾患があっても入院できない…そんな感染者の家族が直面する過酷な現実を取材しました。
■息子「10日以上ほったらかしにされた…」自宅待機で”家庭内感染”も
兵庫県西宮市に住む高齢の3人の家族。
新型コロナウイルスに感染したにもかかわらず、自宅待機を強いられ10日以上経っても入院できませんでした。
別居する息子が取材に応じました。
【父親が入院できなかった男性】
「(病床が)空いているなら、(入院を)受け入れてくれるやろうと思うんですけど、全く受け入れてもらえなかったのは本当にショックでしたね」
1月3日、79歳の父親が発熱しました。
年末に利用した高齢者施設で感染者が出ていたため、検査を行ったところ、5日に陽性を確認。
父親には癌と糖尿病の基礎疾患がありました。
【息子】
「陽性の反応が出たりしたら隔離するのか、ホテルか施設か病院かに分けてもらえると考えていたが、それが全くされないまま十数日間もほったらかしにされた上に、家庭内で感染が広がってしまったのが、非常に憤りを感じている」
1月3日に父親が発症し、8日には母親が検査で陽性。
12日には、叔母にも感染が確認されました。
この間、息子は西宮市の保健所に入院をお願いしましたが、「病床の空きがなく調整中」と繰り返され、3人とも自宅待機を強いられました。
■自宅待機の末に…「発症から10日経過したので保健所で対応できない…」
そして、15日、父親の容体が悪化したため、再度保健所に連絡すると、伝えられたのは驚くべき返答でした。
【息子】
「待機(隔離)期間が10日間過ぎている、1月13日に待機期間が過ぎていると言われた。待機(隔離)期間の(10日間)が過ぎているので、救急車を呼んで病院に連れて行ってもらってくださいと保健所から言われた」
保健所から告げられたのは、『発症から10日が経ち、隔離の期間を過ぎたため、保健所では対応できない』という言葉でした。
すると、インタビューの最中に西宮市の保健所から電話が・・・。
【西宮市保健所】
「お時間よろしいでしょうか?本日西宮病院に入院調整できまして」
「隔離解除を一旦13日とお知らせさせていただいたんですが」
【息子】
「お知らせ聞いてない。うちは誰も聞いてなくて、昨日(15日)の朝電話した時に解除されているから救急車を呼んでくれと言われたんですよ」
【西宮市保健所】
「申し訳なかったです。解除なしの隔離療養必要というところで調整させていただいてますので…」
【息子】
「昨日、隔離解除で入院できなくなってたんじゃないんですか。むちゃくちゃでしょ、言ってること…」
■救急隊が9時間かけても受け入れ先が見つからなかった父親…やっと入院先へ
コロナ患者を受け入れている県立西宮病院に父親の入院が決まったのは、検査の結果が出てから10日以上経ってからでした。
【息子】
「親父は県西に行くことになって、気になるから見に行こうと思って。おばちゃんはどう?」
【自宅待機中の叔母】
「私は熱は6度6分くらい、いつもと同じ」
電話の相手は今も自宅待機をしている叔母です。
【息子】
「昨日はみんな会われへんまま死んでしまんじゃうんじゃないかなと。本当に入院先を探してくれたのかってそれも疑心暗鬼になりましたね。伝えるしかないからこっちは必死に伝えるけど、向こう(保健所)も同じことしか言えないんでしょうね…」
容体が悪化していた父親は、西宮市内の民間の病院で、一時的な処置を受けていました。
【息子】
「親父。今から病院、県西。よかったね」
この病院はコロナ患者を受け入れていません。
父親が運び込まれた際にPCR検査をすると結果は陽性。
さらに肺には、影がありました。
病院には白血病の患者や高齢者がいる上に、個室に空きがなかったため、一度受け入れを断りました。
【病院の理事長】
「軽症を受け入れている病院の院長にも直接電話したけど『満杯』って言われて、どこも満員なんですよ、ホテルも満員じゃないですか。”自宅療養なし”なんて誰が言ってるの」
「救急隊は救急隊でルートで探してもらっていた。それでも本当に無理と言われた」
救急隊員が、病院の駐車場に救急車を停めて、9時間かけて受け入れ先を探しましたが、見つかりませんでした。
しかしこの病院で父親を隔離できる病室はありません。
【理事長】
「きのうの夜は(父親はここにいた)」
――Q:病室ではないんですよね?
【理事長】
「病室じゃないです。ずっと先生がつきっきりで」
【息子】
「医療崩壊はないという風に言っていても、近い将来もっと蔓延してすごくなった状態であるのかなと思っていた」
「こんなに入院先が見つからないってことがそもそも医療崩壊になっているのかなと思うが、このような状態にすでになっているのはびっくりした」
入院したくても入院できない。
この現実は、既に目の前にあります。
■”自宅療養ゼロ”掲げる兵庫県…知事「うまくいっていない」
18日、兵庫県の井戸知事はこの問題について言及しました。
【兵庫県・井戸知事】
「いってないんです。待機者、入院調整者の待機者が800人超えているというのは、それはうまく行ってないからこんな数字に膨れ上がっている」
「ただ(”自宅療養”ゼロの)看板下ろしたら解決するのか、全然解決しない」
「まだ、方針掲げているからみんな一生懸命頑張ろうとされるわけで、それをつっかえ棒外しちゃったら、へなへなと仮になってしまって、より悪い運用にならざるを得なくなるのではないか、その心配を方を強くしています」
(カンテレ「報道ランナー」1/18放送)