1通のメールから始まった“戦い” ウクライナ・キエフ在住ボグダンさん 現地から伝え続ける意味 「それは僕にしかできないだろう…」 2022年03月24日
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は24日で1カ月となります。
戦火のウクライナから発信を続けるボグダン・パルホメンコさん(35)。幼少期を大阪・神戸で過ごし、日本企業での勤務経験もあるボグダンさん。
1カ月経った今も首都キエフに残り、自分にできる「戦い」を続けています。
【ボグダン・パルホメンコさん】
「説明できるのは多分、僕ぐらいしかいないんだろうなって思って」
なぜ彼は戦場から発信を続けるのか?
ボグダンさんの1カ月を追いました。
2月18日。
ロシア軍による軍事侵攻の1週間前、ボグダンさんから関西テレビにメールが届きました。
メールには「日本の報道が情報不足で心配だ」と書かれていました。
一体、どういう意図で送ってきたのでしょうか。
【ボグダン・パルホメンコさん】
「例えばBBC(イギリス国営放送)のオフィスは(ウクライナに)あるんですけど、日本のテレビ局のオフィスは一つもない。モスクワにはあるんですよ。僕はこのままじゃ絶対に日本はウクライナのサポートには回ってくれないだろうっていう気持ちがあったんで。(現地の状況を)説明できるのは多分、僕ぐらいしかいないんだろうなあって思って」
4歳から15歳までの12年間を神戸や大阪で過ごし、日本の企業にも勤めた経験があるボグダンさん。
ロシア国内で政府寄りの情報が発信される中、日本で暮らしたことがある自分こそが正確な発信ができると、メディアへの出演を決意しました。
【ボグダン・パルホメンコさんの“自撮り”映像】
「ワンちゃんの散歩をしてます」
「朝10時です。明け方まで防空壕で寝られなかったけど静かになって寝れました」
当初は路上などで街の様子を撮影できました。 しかし侵攻が長引くにつれて、ウクライナ軍や警察の取り締まりは厳しくなっていきます。
街中にロシア軍の工作員が紛れていないかを警戒していたのです。
自宅から取材に応じていたボグダンさんも居場所が明かせなくなってしまいました。
日に日に凄惨さを増すロシア軍による無差別攻撃。
病院や子どもたちが避難する施設への攻撃が容赦なく続きます。
首都・キエフへの総攻撃が取りざたされるようにもなりました。
ボグダンさんはそうした状況の中である決意をします。
【ボグダン・パルホメンコさん】
「お金を渡したいので受け取って」
自分にできることを…と、キエフで現金を必要とする人たちに支援をしています。
【ボグダン・パルホメンコさん】
「今のネガティブなニュースばっかり見てたら精神的に病むんですよ。僕自身がそうなる。だからそこで暖かい、例えば支援の輪だったりとか」
ボグダンさんは日本向けのSNSを開設し、戦火で続くキエフの人たちの日常を発信することにしたのです。
発信に共感した人からの寄付も集まりました。
【記者】
ーーQ:基本的には戦争で起きていることっていうのは、つらい事が多いのかな…と思うんですけど、その中でこうポジティブなことを発信されているっていうのはどういう意識ですか?
【ボグダン・パルホメンコさん】
「軸は正しい情報、それがいい悪い関係なしにみんなが判断できる情報を提供することで、それに共感してくれた人が毎日のように、大量のメッセージをくれたりとか。どんどん支援の輪っていうか、活動の範囲が広がっていったということもあります」
冷静に正確に伝えることを大切にしているボグダンさん。
しかし、一度だけ感情が抑えきれず目を潤ます瞬間がありました。
【ボグダン・パルホメンコさん】
「皆様に対してウクライナ国民、僕がいるエリアの人たちが本当に助かっています。本当に多くの方から支援していただいています。心が張り裂けそうなくらいびっくりしていますし、精神的にいろいろ…ありがたいと思っています。本当にありがとうございます。ウクライナ国民代表して感謝しています」
戦争という極限状態の中での発信。
ボグダンさんの戦いが続いています。
(2022年3月24日放送)