厳しい感染状況が続く中、ワクチンはどこまで効果を発揮しているのか?
ワクチンに関する疑問をウイルス感染免疫学が専門の近畿大学・宮澤正顯教授に聞きました。
■止まらぬ感染拡大…ワクチンの効果は?
――Q:2回接種が国民の4割、一方で陽性確認は過去にない規模になっている。どう解釈すればいい?
【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】
「ワクチン打ってても感染してしまう人は出ます。2回目接種すれば絶対感染しないということではない。ワクチンはあくまでも感染したときに発症したり、重症化したりするのを抑えると」
厚生労働省の調査では、8月10日からの3日間、感染が確認された約5万7000人のうちワクチンを1度も接種していない人は82%。
一方で、2回接種した人は、わずか3%にとどまっています。
【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】
「ワクチンを打っている人たちの間では、明らかに新規感染者として報告される人の割合下がってる。もちろん2回打てば重症化したり入院したりするリスクは、うんと下がると。デルタ株であっても、2回打っていれば9割近くにまで下がるということは分かっている。ワクチンの効果は明らかである」
■アストラゼネカ製ワクチンは打つべき?
では、大阪市で23日から接種が始まったアストラゼネカ製のワクチンはどうなのでしょうか?
従来株への発症を予防する効果は、約70%と、ファイザーやモデルナに比べて低く、ごくまれにおこる副反応として血栓症ができるリスクも指摘されていますが…
【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】
「確かに血栓症を起こす危険性はまれだけれどある、それは事実。しかし、それよりもワクチンを打って新型コロナウイルスの発症を防ぐことのメリットの方がはるかに大きい。メリットの方がずっと大きいのだからこれを打つべきだと、ヨーロッパでも保健担当者が認めている。治療法もかなり分かっている。それに対応する方法も、臨床の先生は開発しているし、知識も共有しているということなので、まれに起こったとしても対処してもらえる」
宮澤教授によると、血栓が生じるメカニズムが分かっているため、アナフィラキシーショックと同様に対処できるといいます。
一方、因果関係は不明とした上で厚生労働省が公表している「ワクチン接種後の死亡事例」(8月4日時点で834例)については…
【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】
「偶然ワクチンを打った日に、もともとの持病で亡くなったとか、そういう方もいっぱいいる。科学的に言ってもファイザー、モデルナについてワクチンと死亡を科学的に結びつけることは今のところない」
■マスクなしで生活できる日はくるのか
――Q:デルタを念頭に全国民の何割打てばマスクなしで生活できる?
【近畿大学医学部 宮澤正顯教授】
「難しい。とにかくまず、若い人たちにたくさん打たないとダメだろうと思います。動き回る世代の人たちにたくさん打つということを進めていかないと、6~7割でも感染してる人たちたくさん出ますからね。8~9割いかないと難しいかなという気がします。マスクは、しばらく取れないと思いますよ。ウイルス側だけの問題じゃなくて、人間の行動の問題が非常に大きいので、そこをしっかり考えてもらうと収まっていくかなという気がします」
まだまだ警戒を緩めるわけにはいかない新型コロナウイルス。
ワクチンには期待しつつも、当面はこれまでの感染対策が求められることになりそうです。
(カンテレ「報道ランナー」8月23日放送)