お彼岸が近づくと食べたくなる「おはぎ」。
9月はおはぎ商戦が盛り上がる時期なんですが、実は今、これまでのイメージを覆す「進化系おはぎ」が増えているんです。
人気店でそのヒミツを取材しました。
和菓子の代表格「おはぎ」。
古来、小豆の赤色は邪気を払う効果があると言われ、お彼岸にご先祖様にお供えすることで、感謝の気持ちを伝えるとされています。
蒸したもち米に、あんこやきな粉で包んだものが一般的ですが…
ご先祖様も驚きの進化系のおはぎが今、広がっているそうです。
大阪市西区の『CHASHITSU』。ここで販売されているのは、あんこをもち米で挟んだその名も「おはぎバーガー」。
紅芋や、胡麻などを販売しています。
【薄田ジュリアキャスター】
「紅芋の優しい本来の甘みも感じられて、もち米のもっちり伸びる感覚が新鮮ですね」
こちらのお店では、現代のライフスタイルにあったおはぎを追求した結果、この形に行きついたそうです。
【CHASHITSU 橋本純さん】
「若い人にもっと和菓子に親しんでもらいたいと思って、片手で食べられるようなカジュアルでポップなおはぎを作りたくて、おはぎバーガーを開発しました」
こうした進化系のおはぎを扱う店は、全国的に増えていて、行列ができる人気店も少なくありません。
■大阪にパイオニアの店…成功で進化系が全国へ
今注目されるおはぎ。
なぜ、このような進化を遂げたのでしょうか。
調査するため、やってきたのは、兵庫県宝塚市にある『小浜おはぎ研究所』。
このお店では、ピスタチオや、ももなどを使った12種類のおはぎが売られています。
オーナーの藤原幸司さんは、ラーメン店の店長や公立中学校の美術教師を経験した異色の経歴の持ち主です。
【小浜おはぎ研究所 藤原幸司さん】
「まぁ好きやから始めた感じですかね。おはぎがベーシックなものだけではなくて、見た目も楽しめるものがいっぱいあったら、きっと喜ばれるんじゃないかなと」
オープンにあたっては、おはぎの人気店に通いつめ、見様見真似で試行錯誤を重ね、商品開発したそうです。
【小浜おはぎ研究所 藤原さん】
「食べました。たくさん。ここのお店のもち米はこんな感じだから、どんな風に蒸したり炊いたりしたらこんな風になるのかと試したり。(参考にしたのは)豊中にある『森のおはぎ』さんとか。おはぎ業界の中でも、パイオニア的存在じゃないでしょうか」
進化系おはぎのパイオニアが大阪に。
実際にその店に行ってみました。
『森のおはぎ』で女将を務める森百合子さん。
芸大卒でデザイナーを務めた後、おはぎ好きがこうじて、11年前に専門店を立ち上げました。
【森のおはぎ 森百合子さん】
「(開店前に)『一回おはぎのイベントをやってみたら?』と声をかけてもらって、それだったら。自分が食べたことない、見たことない、かわいいおはぎだったら、人が興味を示してくれるんじゃないかなと思って。自分が生み出した時にはなかったので」
去年のお彼岸では、3000個以上は作ったというおはぎ。
お客さんの様子を見てみると、多くの方が“セット買い”しています。
色んな味を試したいという心理をくすぐり、売り上げアップにつなげたのです。
このお店の成功がきっかけで、進化系おはぎが全国に広がったようです。
【森のおはぎ・森百合子さん】
「これだけ広がったっていうことは、自分のおはぎが愛されたというか、おいしいと認めてもらえたから、増えていったんだったら、嬉しいなとは思っています」
■コロナで倒産直前…起死回生のおはぎ
さらに、おはぎの概念を覆したような商品も…。
あんと和三盆を使った色鮮やかな花びらでかたどった「おはぎ」。
その下に徳島県産の古代米をブレンドしたもち米が埋まっています。
【薄田キャスター】
「和三盆の滑らかで優しい味のあんと、雑穀のひんやりとしたもち米、これまでにない上品なおはぎですごくおいしいです」
このおはぎは、徳島県阿波市で150年以上続く、阿波和三盆糖の製造元が去年5月に発売。
コロナで倒産直前まで追い込まれた、老舗の起死回生の一品でした。
【服部製糖所 女将・服部道子さん】
「私ひとりで去年1年間ずっと作ってて、中指が上にあがらないんですよ。助けるとあがるんですよ。それくらい腱鞘炎が悪化してて。作れない時期もあったので、おはぎを皆さんにお待たせしてばかりで。一番長かった時は2~3カ月は…」
当時の従業員は、夫で当主の服部誠治さんと道子さんのたった2人。
しかし、経営を軌道に乗せた矢先に、誠治さんが自宅で倒れ、緊急入院することに…。
そこで急きょ、三男で19歳の成輝さんが、父の跡を継ぐことになりました。
【服部製糖所 15代目当主の成輝さん】
「夢もケーキとかを作ったりするようなパティシエになろうと思っていたんですけど。でもここは一旦断念して継ぐ方を優先しました」
今では月200個以上売れる看板商品に。
おはぎ作りには、二男夫婦も加わり、家族一丸となって老舗を盛り上げています。
【15代目・服部成輝さん】
「お誕生日のお祝いにおはぎを贈りますってコメントが来た時は、この仕事をやっててよかったって初めて思いました」
【女将・服部道子さん】
「コロナでなかなか会えないっていう方が多いので、その方へのプレゼントとして贈っていただけるようなおはぎを作れたらいいなと思っています」
(カンテレ9月14日放送『報道ランナー』内「ヒットにワケあり!オカネのヒミツ」より)