大阪では「汚い水」の川の代名詞のようにもなっている道頓堀川。
実は今、その水を「全部浄化する大作戦」が進んでいます。
■かつては「ごみ箱」汚かった道頓堀川
大阪市の中心部を流れる道頓堀川。
その少し上流に今年8月、新しい施設ができました。
ここから流れ出す水で、道頓堀川をきれいにしようというのです。
【1960年代の番組のナレーション】
「道頓堀は、非情の川。このボウフラも湧かぬ黒い水に油の膜が光るのは、遠くの上流の寝屋川付近の工場廃液…」
高度経済成長の時代、道頓堀川には工場排水や下水が流れ込み、まるで街のごみ箱のように扱われていました。
川の底には真っ黒なヘドロがたまりました。
汚いイメージを払拭しようと、大阪市はヘドロやごみを何度も撤去したり、こまめに水門を操作して上流からきれいな水を流し込んだりと、地道な努力を続けてきました。
■大きく改善した水質
今年4月、関西テレビの潜水取材班が水中に潜ってみると…
【潜水カメラマンのリポート】
「グリコの看板足元の道頓堀川水底です。非常にきれいな砂地となっています」
得体の知れないごみはまだあるものの、ヘドロはめっきり減り、水質が大きく改善していました。
しかし、まだ濁りは強く、大腸菌の量も、人が泳げるレベルではありません。
■新技術で目指す「川底が見える川」
そこで大阪市は、さらなる水質改善のため、大手機械メーカーのクボタとタッグを組むことにしました。
生活排水や雨水をきれいにして川に流す中浜下水処理場。
新たに導入するのが、クボタが開発した特殊な膜です。
これまでは、微生物の働きによって処理してきましたが、さらに5000分の1ミリという極めて小さな穴でろ過することで、大腸菌ゼロのきれいな処理水になるというのです。
透明度の違いは一目瞭然です。
この水を、近くの第二寝屋川に放流するだけでなく、処理場から道頓堀川の近くまで送水管をつくり、直接、流すことにしたのです。
【大阪市建設局下水道部 山上強司さん】
「将来的には、大阪府の山間部を流れるきれいな川のような水質になればいいと考えています」
■道頓堀川に生き物が!
道頓堀川には今、どんな生き物がいるのか。
夏の暑い日に、阪神高速の真下で、水中を覗いてみると、ブルーギルにオオクチバスの姿が。
目につくのは、生命力が強い外来種ばかりです。
しかし、川底で待っていると…何かが横切りました。
在来種のマハゼです。
海水と淡水が混ざり合う河口付近を好んで暮らす魚です。
日が暮れた後、夜行性の生き物たちの姿を狙います。
敵が少なくなった夜に活発に動くテナガエビ。
昼間は物陰に潜んでいるカワアナゴもいます。
想像以上に、多種多様な生き物たちに出会いました。
今年8月、新たな処理水の放流が始まりました。
水辺を生かした街づくりに取り組んでいる大阪市が目指しているのは、「川底が見えるくらいのきれいな川」です。
まずは1日最大1万トンの放流から始め、水質改善の効果を検証していくということです。
経済成長と引き換えに汚れてしまった大都会の川。
それを街の強みに変えるための努力が続きます。
(カンテレ「報道ランナー」9月20日放送)