大阪府摂津市で、3歳の男の子が熱湯をかけられて死亡し母親の交際相手の男が逮捕された事件から29日で1週間です。
度重なるSOSが市に届いていたにも関わらず、幼い命はなぜ守れなかったのでしょうか。
「ハッピバースデートゥユー、ハッピバースデーディア桜利斗。おめでとう」
誕生日ケーキを前に周囲から祝福される男の子。
新村桜利斗(にいむらおりと)ちゃん。
わずか3歳で命を絶たれました。
殺人の疑いで逮捕されたのは母親の交際相手で無職の松原拓海容疑者(24)。
8月31日、大阪府摂津市のマンションの浴室で桜利斗ちゃんに高温のシャワーを10分程度浴びせてやけどをさせ、殺害した疑いがもたれています。
松原容疑者は当時の状況について知人にこう説明していました。
【松原容疑者・音声データ】
「(浴室で遊んでいて)給湯の温度を上げたりしてたんですよ。その遊び、そういうことをしたのが今回初めてじゃなくて、前にもそんな感じで…。『おりちゃん』ってリビングから呼んだんすよ。返事みたいなのがなかったから、急いで見に行って浴槽をあけたら、おりちゃんが浴槽じゃない方の床にうつ伏せになってて」
――Q:手を上げてたやろ、桜利斗に
「あげたことはあります」
松原容疑者と桜利斗ちゃんと母親が一緒に住み始めたのはことし5月。
その頃から複数の知人は桜利斗ちゃんに異変を感じていたといいます。
【知人は…】
「笑顔がなくなったのと表情が無くなった。一番インパクトだったのが、ほっぺたにあざがある。お母さんが『これ、たっくん(松原容疑者)がやっちゃったんです』と。私たちは別れなさいと言ってたんだけど」
そして別の知人は…
【知人は…】
「お母さんが桜利斗君と一緒に帰ろうとした時に、もうずっと『たっくんイヤ、たっくんイヤ』ってずっと言ってて。虐待のおそれがあると市役所に行ってきました。『このまま放っておくと桜利斗くん亡くなっちゃうよ、死んじゃうよ』って言ったんです」
また、母親自らも「交際相手が子どもを叩いた」と摂津市に相談していて、担当者は松原容疑者と面会していました。
【摂津市担当者】
「手を出すのはやめてください」
【松原容疑者】
「子どもに絶対に手を出さないようにします」
市にはその後も母親の知人から、桜利斗ちゃんへの虐待を疑う情報が寄せられ、大阪府の児童相談所と市は母親についても「第三者からの暴力を放置する」といったネグレクトがあると判断していました。
しかし市は桜利斗ちゃんへのあざが確認できなかったことなどから、「緊急性はない」と判断し児童相談所に一時保護を求めず、警察への通報もしていませんでした。
【摂津市・森山一正市長】
「過去90回に及ぶ聞き取りとか面談とか、色々な形で取り組みをしてきたところでございます。一時保護、警察への通報に至るまでの確証がなかったという報告を受けております」
市は、桜利斗ちゃんとの個別面談は実施しておらず、大阪府内の児童相談所で勤務経験もある専門家は「子どもだけに話を聞くことが重要だ」と指摘します。
【関西国際大学・道中隆教授】
「3歳になれば、嫌だとか嫌いだとかネガティブな表現はできる年齢、桜利斗ちゃんの面接をすれば、それなりに子どもが怯えているとかどうかとか分かりますし。家庭の全体の状況をまず、生活をどうやって誰が働いているのか、子どもへの子育て感とか母親の養育能力とか監護力、そういったものをしっかり抑えておくべき」
度重なるSOSがあったにも関わらず守れなかった幼い命。
大阪府は10月6日から第三者による検証を始めます。
(2021年9月29日放送)