レコード店には、昭和ポップスにはまる若者たち。今、昭和の名曲が再び脚光をあびています。
その理由を探るべく、少年隊のファンたちが制作費を自腹で払って企画する史上初のラジオに潜入取材。さらに、「少年隊」のリーダーで舞台演出家の、錦織一清さんに独占インタビュー。
昭和の名曲が、なぜ今評価されるのか、迫ります。
■小泉今日子が好きな17歳 中古レコードにはまる若者たち
店には、若者たちが中古レコードを探す姿。大阪・ミナミの中古レコード店「KING KONGアメリカ村本店」では、去年ごろから10代や20代の客が増えたといいます。お財布に優しい1000円以下から買えることも、人気を後押ししているそうです。
【17歳】
「私は小泉今日子さんの『あなたにあえて良かった』が一番好きです。最近のとはちょっと曲調違うなと思ったりするけど、やっぱりいいなと思う」
【20代】
「いまサブスク配信が主流になってきて、形がなくても音楽聴けるけど、それとは逆で盤という存在感がある、形として聴けるのが魅力です」
【17歳】
「音楽を掘っていくうちに、日本の古いポップスにもおもしろいグルーブ感あるなって感じて集めるようになりました。ストレートな歌詞がありますね、昭和の曲って。公衆電話で失恋した時に雨の日に涙が出ているとか、新鮮な感じがあります。自分の生きている時代とは違うものなので」
日本レコード協会によると、レコードの生産額は、2020年までの10年で7倍になっています。
■昭和ポップスをインスタで発信する大学生
大学生の阪田マリンさん(21)は、祖母の家にあったチェッカーズのレコードをきかっけに昭和ポップスにハマり、インスタグラムで発信しています。
【阪田マリンさん】
「手間があってこそ音楽がしみるというか、ひと手間あった方が音楽が入ってくるんですよね。いちいちジャケットから取り出して、針を落とす作業をして流れてくるっていうのが、私はすごいいいなと思うんですね」
スマホで簡単に音楽を聴ける時代だからこそ、ひと手間をかけて音楽を聞きたい。昭和ポップスはそんな欲望を満たしてくれるようです。
■今 少年隊が熱い! 「西の聖地」に集うファンたち
12月、音楽評論家や、俳優、歌手などの「少年隊ファン」が少年隊の魅力を記した本、『令和の少年隊論~時代が今、少年隊に追いついた』が発売されました。
少年隊は、1985年に『仮面舞踏会』でレコードデビューしたアイドルグループで、メンバーは、錦織一清さん、植草克秀さん、東山紀之さん、の3人。錦織さんと植草さんは、2020年末にジャニーズ事務所を退所しています。
『仮面舞踏会』のデビューから36年。事実上、少年隊としての活動はない中で、なぜ今少年隊が熱いのか。その理由を探るべく向かった先は、山野楽器イオンモール鶴見緑地店。こちらの店では、少年隊デビュー35周年の2020年に特設コーナーを作りました。
すると、遠方からもファンが訪れるようになり、いつしか少年隊ファン「西の聖地」と呼ばれるようになったそう。メンバーの錦織さん直筆のメッセージが聖地感を高めています。
【山野楽器イオンモール鶴見緑地店 原恵理子さん】
「SNSなどでつながってる方いらっしゃいますので、みなさんお知り合いの方のメッセージを探されたり」
この聖地をよく訪れるというファンの方に話を聞いてみると…
【ファン】
「彼ら以外に好きになった人がいないくらい、すごい魅力的で」
――Q:初恋の人みたいな感じ
「そうですね。主人より前に好きになった人なので」
【ファンの夫】
「もう慣れましたね」
令和になってからその魅力に気づいたファンも。
【令和になってからのファン】
「私、錦織さんのダンスから入ったんですけど、なんやねんこの人!って思って」
そして、実は…担当ディレクターも少年隊ファンなんです。
【担当した上岡ディレクター】
「ものすごくみなさんに共感して、特に私も令和のファンなので。なんで気づけなかったのかって。『バカ!バカ!バカ!』なんです。何で少年隊の魅力に気づけなかったんだろ自分!子どものときにはね、気づけない魅力なんです。大人すぎて。大人になって年齢重ねてきてやっと追いついてくる」
歌やダンスの能力が評価され、一躍スターとなった少年隊。令和の時代は、完成度の高い韓流アイドルなどが支持される世の中になり、少年隊のクオリティの高さが再認識されるようになりました。
■ファンがラジオの放送枠を購入! 少年隊の名曲を届ける番組が大阪に
さらに、ファンの熱はこんなところにも…
【『It’s SHOW TIME!』収録風景】
「こんばんは、ラジオ大阪アナウンサー藤川貴央です。少年隊の隠れた名曲をお届けするIt’s SHOW TIME!」
毎週木曜午後11時45分から、ラジオ大阪で放送している、少年隊の曲だけを流す15分間のラジオ番組。ファンがお金を出し合い、ラジオの放送枠を購入しています。
去年秋のスポンサー募集では、一口3000円から出資を募り、400人を超える申し込みがありました。選曲や台本づくりなどの制作もファンが行っています。
きっかけは、2020年に発売された限定盤「少年隊 35 th Anniversary BEST」。予約期間がわずか2週間の全受注生産だったため、買えなかった人が続出しました。
【制作実行委員会 発起人 馬場尚子さん】
「みんなでこの限定盤を聴ける方法はないだろうかと考えていた。そんな時に番組枠があるよって聞いた」
ラジオ局の放送枠を買うことで、著作権の問題はクリアできることに気づいたのです。また、少年隊の楽曲は定額制のサブスクサービスでも解禁されていない上に、廃盤のものも多く、聴きたくても聴けない曲が多いのです。
番組の進行を務める、ラジオ大阪の藤川貴央アナウンサーも少年隊のファンです。
【ラジオ大阪・藤川貴央アナ】
「もう気が付いたら(少年隊)沼にハマっていたっていう感じです。やっぱり少年隊が歌っている曲のテーマが愛とか人生とか、普遍的なものが多いので、時代が変わっても社会が変化してもやっぱりいい物は良いんだ。だから若い世代が今、少年隊沼にはまっていく」
番組の台本を書いている、ももさん。これまでリモートで収録に臨んできましたが、この日初めて収録現場に立ち会いました。収録現場のスピーカーから流れる少年隊の曲を聞いて、涙があふれます。
【制作実行委員会 ももさん】
「最終的にいろんな人が喜んでくれている。少年隊を聞いて嬉しいとか、泣けたとかっていうふうに言ってくれることが、やっぱり私を動かしているものなのかなと思います」
【発起人 馬場尚子さん】
「3人揃った少年隊を過去のものってしたくない。こうやってラジオがずっとあれば、少年隊は現役でみんな聞いて、少年隊すごいよねって現在進行形でいられる」
■錦織一清さん「老いていく錦織を楽しんで」
そんな動きに、少年隊のリーダーで舞台演出家の錦織一清さん、ご本人はどう思っているのでしょうか?
【錦織一清さん】
「応援してもらってものすごく嬉しいんですけれども、半面、すごく照れくさいというか、恥ずかしいですね。こうやって出ることも夢、壊しているんじゃないかとか思う。僕たちの中では、リーダーをジャニーさんだと思っているんですね。これ確信してるんですね。マネージメントもジャニーさんがしてくれてましたから。そのプロデュース能力とかディレクション能力とか、当時の若かりし日のジャニーさんに触れてもらったっていうのが、僕の中ではそれを再確認していただいているのが、ものすごく嬉しかった」
そして、錦織さんは、ファンが作るラジオ番組のことも知っているそうで…
――Q:ファンがSNSも使って新しい応援の仕方をしているのは?
【錦織一清さん】
「相互関係になったっていうのが、僕らって経験上、あんまりそれがなかったときのアーティスト。もちろん雑音的なものが入ってくるときもあるんですよね、あるとは思うんだけど、なんかこう近くなったなと感じる。新しい錦織っていうか、これからはどんどん古くなっていく錦織を楽しんでいただきたい。どんどん古くなっていきます。もう老いていく、老いさらばえていく錦織を楽しんでいただいて。共に」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年1月6日放送)