安倍元総理大臣が銃撃され死亡した事件で、逮捕された山上容疑者は、犯行直前に心境などを綴った手紙を送っていたとみられます。凶行に至った背景に迫ります。
■容疑者は犯行の前日に手紙を投函か…つづられた心境とは
【山上容疑者が送ったとみられる手紙】
「私は喉から手が出るほど銃が欲しいと書きましたが、あの時からこれまで銃の入手に費やして参りました」
これは安倍元総理大臣を銃撃した山上徹也容疑者(41)が綴ったとされる手紙です。
「世界平和統一家庭連合=旧統一教会」の活動を批判するフリーライターの男性に届いたもので、事件前日の7日に岡山市内で投函されたとみられます。
手紙には旧統一教会への恨みから犯行を決意したかのような内容も書かれていました。
【山上容疑者が送ったとみられる手紙】
「安倍は本来の敵ではないのです。あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会シンパ(支持者)の一人に過ぎません。安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」
教団への恨みが、安倍元総理を狙った銃撃事件に、どのようにつながったのか、背景に迫ります。
■旧統一教会を批判する男性に、事件の直前に手紙を送ったか…
山上容疑者が書いたとみられる手紙。その送り先は、旧統一教会に批判的なブログを運営する、フリーライターの男性でした。
そこには安倍元首相の殺害を、示唆する内容が綴られていました。
【山上容疑者が送ったとみられる手紙】
「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」
事件前日の7日、安倍元総理が岡山市で演説をする前に、会場近くから投函されたとみられています。
旧統一教会はおよそ70年前に韓国で設立された宗教団体で、日本では1980年代、一部の信者が壷や印鑑を高い値段で販売する「霊感商法」が問題になりました。
信者だった山上容疑者の母親は少なくとも1億円を献金し破産。次第に家庭が崩壊していったとみられます。
山上容疑者は安倍元総理が2021年、旧統一教会と創設者が同じ団体に送ったビデオメッセージを見て、「旧統一教会と安倍元総理に関係があると思った」と供述しています。
【山上容疑者が送ったとみられる手紙】
「母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産…この経過と共に私の10代は過ぎ去りました。その間の経験は、私の一生を歪ませ続けたと言っても過言ではありません」
山上容疑者に金銭的な支援をしていた、父方の伯父は当時の状況についてこう語りました。
【山上容疑者の伯父は】
「平成17年1月に徹也が自殺未遂をしている。これを実行した理由ですけども、教会によって兄と妹が生活困窮しているわけですよね、そこに死亡保険金を渡す。旧統一教会によって人生がめちゃめちゃになったと(自衛隊の報告書に)書いてありましたね」
旧統一教会は信者とのトラブルについて、7月11日の会見で「2009年以降(トラブルは)ない」としていました。
しかしその後、「ゼロになったという意味ではなく、ごくわずかだが、そのようなケースがあるのは事実」と訂正しました。
そのうえで「山上容疑者の家庭を襲った悲劇に対して、哀憐の情を禁ずることができません」とコメントしています。
手紙に記した自身のものだというTwitterのアカウントにも旧統一教会への恨みが綴られる一方、安倍元総理に対して理解を示す投稿もあり、殺害に至るまでの複雑な心境が垣間見えます。
【山上容疑者が送ったとみられる手紙】
「安倍政権のやり方が常に正しかったとは全く思わないが、結果として正しかったことを評価できなければその正しさは失われる。安倍晋三という人間の政治手法を否定する為に結果まで否定する必要はない」
旧統一教会への恨みが安倍元総理殺害へと変わっていった今回の事件。
凶行を止める術はなかったのでしょうか。
(2022年7月18日放送)