「隠ぺいするのは確実」 泉南市のいじめ自殺問題で遺族の信頼を失った教育委員会 市長が直轄の第三者委を設け、教育委員会と学校を調査する異例の事態に 2022年08月05日
大阪府泉南市でいじめを訴えていた中学生が自殺した問題。
第三者委員会が2つ設置される、異例の事態となりました。
【泉南市 山本優真市長】
「当該保護者が強く望んでいる“市長直轄の第三者委員会”の設置を、教育委員会所管の調査と並行して速やかに行いたい」
4日夜、泉南市の山本市長が召集した教育委員会との会議。
市長が提案したのは、自らが直轄する第三者委員会での原因究明でした。
2022年3月、いじめを訴えていた、泉南市の市立中学校に通っていた当時中学1年生の男子生徒が自殺しました。
男子生徒は、小学3年生の頃から、同級生らから冷やかされるなどのいじめを訴えていて、たびたび不登校になっていました。
しかし教育委員会は、男子生徒が亡くなって5カ月近くたっても、『保護者から聞き取りができない』として詳細な調査を行っていませんでした。
男子生徒の母親は、7月、関西テレビの取材に対し…
【男子生徒の母親】
「5年前からずっと市の窓口や教育委員会に相談していますが、結局何もしてくれない。(息子が亡くなってからも)誰か窓口に別の人を置いてもらってのやり取りなら、私は(市教委の聞き取りに)応じると言ってるし、それでもダメだったんで『文書を介してやり取りしましょう』と。それについては無視です」
泉南市は、全国でも珍しい子どもの権利に関する条例を制定し、「子どもにやさしいまち」の実現を掲げています。
学校や教育委員会に不信感を持った母親は、この条例を検証する「泉南市子どもの権利条例委員会」に真相の究明を相談。
条例委員会は、7月に経緯をまとめ、遺族らと向き合うよう求める報告書を市長へ提出しようとしましたが、教育委員会から「守秘義務違反があるため受け取れない」とする通知が届き、波紋が広がっていました。
議会からも追及を受けた教育委員会は、8月3日になって「保護者の代理人から自殺である確認が取れた」とし、ようやくいじめの有無を調査する第三者委員会を設置することを決めました。
一方、市長は「市の顧問弁護士の見解が変わった」として報告書を受け取り、いじめだけではなく、教育委員会や学校の対応についても調査が必要として、市長直轄の第三者委員会を別に設置することを決めました。
【山本市長】
「これまでの学校であったり、教育員会の対応はどうだったのかというところに関しても、昨日(保護者の代理人と)話をする中では、原因究明の調査も含めてする必要があるというふうに私は感じましたので」
2つの第三者委員会が平行して調査を行う異例の事態に、保護者は…
【男子生徒の母親】
「今までの教師や教育委員会が、私たちにしていた仕打ちというのがどれだけ悪かったか。そこ(市長直轄の第三者委員会)ではっきり評価してほしいと思います」
――Q:教育委員会の第三者委員会だけで真相究明はできない?
「隠ぺいするのは確実ですから。今でもそうじゃないですか」
教育委員会のずさんな対応が招いた今回の問題。
冨森ゆみ子教育長は…
【冨森ゆみ子教育長】
「私たちは、あくまで法律に基づいた対応をさせていただいてると考えております」
――Q:市長直轄で(第三者委員会を)設置してほしいということは、教育委員会が信頼を得てないということだと思うが?
「そのような保護者の意向があるのかなと受け賜りました」
――Q:2つの第三者委員会、すみ分けは?
「どう役割分担するかはまた市長の話を聞いた上で考えることかと思うので、今時点で(何を)了承したとか、こうですというのは難しい」
山本市長は直轄の第三者委員会の設置を「可能な限り早急に進めたい」とし、委員には、保護者が推薦する人も加えたい意向を示しています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月5日放送)