「藍色」をつくる 徳島発、世界が注目! 若き藍染の作り手「BUAISOU」のものづくり "種まきから染めまで” すべて一から自分たちで 名だたる世界的ブランドと次々と『コラボレーション』に密着 2022年08月11日
世界中から今、注目を集める藍染の作り手「BUAISOU」。
今回、世界的ラグジュアリーブランド、JIMMY CHOO(ジミーチュウ)とのコラボレーションに密着し、彼らが「藍色」にかける、想いに迫りました。
■世界が注目! 藍染めの作り手「BUAISOU」 すべて一から”藍色”を作る
世界的に注目を集める藍染めの作り手「BUAISOU」の工房は、徳島県上板町にあります。
【「BUAISOU」代表 楮覚郎さん】
「伝統にこだわっちゃうと、たぶん落ちていく。そこはちょっと好きにやらせてくれって、思ってます」
「BUAISOU」の1日は、みんなでコーヒーを飲むことから始まります。
代表の楮覚郎さん。
「BUAISOU」を立ち上げて、7年になります。
「藍色」に出会ったのは、美術大学に通っていた頃でした。
3月には、ビニールハウスの中で、種まき作業が始まります。
【「BUAISOU」 結城さん】
「種まきは3月の大安の日にやるって毎年決めてて。まぁ縁起を担ぐというか、そんな感じです」
伝統的に、藍染の世界では「染め」と「畑」は分業制ですが、BUAISOUは違います。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「すくも(染料)を買って、液を仕込んで染めるという染師さんの仕事。すくも(染料)を作る藍師さんの仕事。っていうのが、(BUAISOUは)一緒くたになってる。全部出来ますよ、というのがぼくらのコンセプトなんで」
■世界的ラグジュアリーブランド「JIMMY CHOO」と「BUAISOU」がコラボレーション!
種をまき、育て、自分たちの藍色をつくる。
そのアプローチが注目され、「NIKE」、「Artek」、「Blue Bottle Coffee」など数々のブランドとコラボレーションを重ねてきました。
そして2022年、新たなオファーが。
王室や女優にも愛用者が多く、ハイヒールが有名な、世界的ラグジュアリーブランド、「JIMMY CHOO(ジミーチュウ)」からの依頼です。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「この素材で、ハイヒールとバッグを作る予定なんですけど。たくさんの生地を3色に染め分けて。それで、生地のまま送るという仕事」
「ピッピッ」とタイマーをセットし、布を入れていきます。
染め液に浸けられた生地が、空気に触れ、水で洗われると色が生まれます。
自然が生み出す、特別な「藍色」です。
布が乾いた後は、チェック作業です。
1つ1つの生地を丁寧に拡げ入念に見ていきます。
しばらくすると楮さんの表情が曇りました。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「ムラもひどいですね」
「これ1回キープで」
「これはアウトで」
天然の藍、そして手作業で染めることにこだわるからこそ起きる、微妙なズレ。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「ムラですね。パーッと見て、見えます?ここ」
【記者】
「すごい繊細ですね…」
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「いや全然!全然、繊細じゃないですよ!もっと微妙なところでの、アレなはずなんですけど」
この後、イタリアにあるJIMMY CHOO(ジミーチュウ)の工場に生地を送るまで、染め直しの作業が続きました。
5月に入り、工房にひとり見慣れない青年がひとり…必死でメモを取っています。
早稲田大学からインターンに来ている学生・清水さんです。
清水さんも1日の始まり、「BUAISOU」のルーティーンしてコーヒーを飲みます。
–Q: 「BUAISOU」のどこがいい?
【早稲田大学からのインターン生 清水雄大さん】
「手が青く染まってるとか、そういうところを見てかっこいいなって。染めたいです、最終的には。でも、まずは修行というか」
そして、畑の季節が始まりました。
工房のみんなで畑を耕し、種まきして育った株を畑に植えます。
畑と染め。
どちらも「BUAISOU」にとって、なくてはならないものです。
■有名になっても…変わらない”大切なモノ” 「染めるという行為自体は変わらない」
「BUAISOU」を立ち上げたばかりの2015年頃に作ったトートバッグの補修と、染め直しの依頼が来ました。
ミシンを使ってトートバッグの補修作業をし、染めの作業です。
世界的なブランドと仕事をするようになった今も、大切していることは変わりません。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「僕はあんまいろいろ…語弊が出るっすね。ブランドだから『あわわわ』ってならないというか。何でしょうね…田舎もんなんでしょうね。染めるという行為自体は何も変わらないことなので」
補修し染め直したバッグを、子供たちが受け取りに工房にやって来ました。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「どうぞ。使ってください。色落ちてきたらまた持ってきてください」
子どもたちが口々にお礼を言います。
楮さんも嬉しそうに
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「こんなに大事に使っていただいて」
【子どもたち】
「学校行くときとかに、荷物を入れたりするのに使いたい」
「お弁当とか入れたい」
楮さんが笑いながら
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「素晴らしいコメント」
【子どもたち】
「青が好きやけん、またいろんなものを持ってきてやってほしい」
楮さんが、「種まき」から「染める」という全ての作業を一から自分たちでやっていることについての”思い”を話してくれました。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「お客さんに渡したときに、『自分たちで作った色ですよ』って言うじゃないですか。自分たちで染めたものです。だったら染料買って、それで染めてというのでも言えるけど、自分たちで(色を)作りましたってなったらイチからやってないと言えない。どんなにつらくても、きつくても、汗水たらして作りました、みたいなのがちゃんとウソなく言える環境を作れているのが、すごくうれしい」
■世界的ラグジュアリーブランドとの“コラボ”商品が店頭に 「BUAISOU」の最終目標は?
7月、藍の葉を収穫します。
刈り取りをした後は、乾燥させてから袋に詰め、寝かせます。
工房にみんなが待ちかねていた「荷物」が届きました。
楮さんが声を上げます。
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「あ!これじゃ!ちょっと(笑)演技みたいになっちゃう(笑)届いたよー!届きましたよー!」
JIMMY CHOO(ジミーチュウ)から、完成した商品が届きました。
みんなが集まって、口々に喜び、声を上げます。
【「BUAISOU」工房のみんな】
「すげぇ。『BUAISOU』って書いとるんや」
「袋ほしいね」
楮さんが自分たちが染めた布で作られた「藍色」のヒールを取り出しました。
【「BUAISOU」工房のみんな】
「すごい。これはすごい」
「これは素敵だ」
「これはすごいっすね」
「BUAISOU」が作った藍色をまとった商品たち。
7月20日、「JIMMY CHOO(ジミーチュウ)」の店頭に並びました。
–Q:最終目標ってありますか?
【「BUAISOU」代表 楮さん】
「ないっすよね。ずっと来年用の種取ってって植えて、来年用の種取ってって植えて。ほんまに(目標が)あんまないんすよ。作りたいものを作ってる。それで生きているってのがいいんじゃないですかね」
畑に出て、工房で染める。
「BUAISOU」のみんなで、きょうも”藍色”を、作る。
(2022年8月5日放送)