旧統一教会が開いた会見 紀藤弁護士が解説 「一方的に自分たちの言い分だけを伝えていて非常に残念」 “政治家との関係”や“献金の実態”をどう見る 2022年08月10日
8月10日、「世界平和統一家庭連合=旧統一教会」が、およそ1カ月ぶりに会見を開きました。
会見の中身、献金の実態や政治家との関係などについて、旧統一教会の問題に長年、取り組んでいる全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士に聞きました。
献金の実態、政治家との関係について注目が集まっていましたが、旧統一教会の田中富広会長が一番言いたかったのは、ここだったのではないかと思われます。
<田中富広会長>
「メディアの報道にはひどい内容も多々あり、『殺すぞ』という脅迫電話など信徒たちの“命の危険”がある。私たちの取り組みに変化が求められるのであれば、意見を受け止めよりよい法人に変化したい」
こちらについてどう思われますか?
【紀藤正樹弁護士】
「今日の会見は全体を通じて一方的な感じがしました。この内容が本当なら、一つずつが事件ですよね。一つずつの事件として最寄りの警察に相談してもらいたいし、場合によっては我々にも相談してもらいたいと思います。根拠があるかは分かりません」
一方的な誹謗中傷はよくないですが、このタイミングでこの話か、という印象を持った方もいるかもしれません。今日は海外メディアの日本特派員に向けての会見で、めどは1時間と言われていましたが、50分近くスピーチされて質疑応答の時間は30分ありませんでした。
政治家との関係については、こういった発言でした。
<田中富広会長>
「政治に強く関わってきたのは事実です。それは政治工作、脱税、霊感商法の批判から逃れるためではない。共産主義と対峙(たいじ)し、民主主義を守ろうとする同志たちと日本のあるべき姿に向かい歩んできた」
あくまで政策実現、よりよい世界の実現のためだったという話でしたが、こちらについてはいかがですか?
【紀藤正樹弁護士】
「結局統一教会の活動と政界との関わりについては、個々の信者が自発的な意思でやったと、推奨はしているけど個々の信者の意思だと言われると、実態と全く異なるわけです。コンプライアンスと言われるが、そのためには教団内で何が行われてるかを調査して、それを評価してはじめて成り立つ。今日の全体の会見からは、自分たちの教団内で何が起きているかを誠実に調査するといった話が全くなく、一方的に自分たちの言い分だけを伝えていて非常に残念でした」
紀藤弁護士は被害者の話を聞かれる立場だと思いますが、実態として、旧統一教会が「反共産主義」という側面で自民党と近しい関係にあった側面が強いのか、政治工作の側面が強いのか、感覚としてはいかがですか。
【紀藤正樹弁護士】
「両方の側面があると思います。政治の側からの接近も、統一教会側からの接近も。『反共』と言いますが、『男女共同参画』やパートナーシップ制度、LGBTの法律制定などに、基本的に統一教会は反対です。「反共」には限りません。そこも一方的です」
そんな中、たまたまなのか、同日に内閣改造が行われました。こちらについてはどう思われますか?
【紀藤正樹弁護士】
「今回の改造を見ると、『電報を打った人は外す』という岸田首相の強い意思を感じます。コンプライアンスで分かるじゃないかと。一方、イベントに参加した人や会費を払ったという人は残している。相手が正体を隠して近付いたため、統一教会か分からなかった可能性があるから。そこは説明してくださいよ、ということだと思います」
統一教会側が政治家に近付くことに関しては法律で縛ることはできないので、政治家側が気を付けなければならないのでしょうか。
【紀藤正樹弁護士】
「本来はコンプライアンスを政治家の方で持たなければならないですよね、反社会的な宗教団体との関わりをどう持つかっていう話ですから。身体検査はある程度しているはずですが、問題は『お金を払った』か『お金を受け取ったか』です。これは全然違います。『お金を受け取った』となると、それは被害者のお金が入っている可能性が高い。こちらとしては『返してください』となる。会費を払った人、イベントに参加した人は『どうしてお金を払ったんですか?統一教会だと分かった上ですか?』ということを説明してほしいですが、今日の政治家の会見を見る限り説明は果たされていないと感じました」
また、献金について田中会長は、「2009年以降、財産に比して高額な献金が行われないよう努力を重ね今日に至る、弁護士団体の被害報告は不正確である」と、コンプライアンスを守るようになったと強調していますが、こちらについてはいかがですか?
【紀藤正樹弁護士】
「不誠実だなとつくづく思います。彼らは自分たちのところに来ている相談の金額を分かっているはず。お金だけではなく“家族破壊”もあるはずなのに全く触れず、霊感商法にだけ触れている。しかも霊感商法はやってないと言っている。もし霊感商法をやっていないのであれば、どうしてコンプライアンスなんて話になるのか。その論理も分かりません。結局彼らは、世間から言われたからやっているように見えるだけ。山上容疑者の件も、始まりは1990年代の事件なんです。過去の被害に向き合っていないのに、今は未来に向けて努力していますと言われても、誠実さを欠くとしか言いようがない」
今日の会見では、質疑応答の時間がほとんどなく、山上容疑者の件に関しての質問ができませんでした。
刑事や民事に関わるようなトラブルは、数としては減っているという話もありましたが、実態としてはいかがですか?
【紀藤正樹弁護士】
「実態は変わっていないという印象です。件数は減ったけど、それぞれの事案を見ると実態は変わってない。報道後は相談件数が増えている状態です。メディアが報じないから減ったように見えていただけかもしれない」
全体を通しての印象は?
【紀藤正樹弁護士】
「元信者に話を聞くと、統一教会の信者は『ファンタジーの世界で生きている』と。社会的に許容されるものや常識からずれている。ずれ方が大きくなると霊感商法になるんですが。記者会見の設定日もおかしいですよね。世間を騒がせてお詫びするのであれば、組閣の日は外すはず。国際的な記者会見の常識からしても、30分会見、30分質疑と指定されているのにそれを守らないことが国際ルールに反している。時間厳守は基本的な決まりなので、守らないということが驚きでした」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月10日放送)