各地の大学で、旧統一教会の関連団体が、正体を明かさずに勧誘を行っている実態が見えてきました。
旧統一教会を長年取材しているジャーナリストの鈴木エイト氏に、『旧統一教会の“摂理機関”』、『旧統一教会と政治家の関係』の2点についてを詳しく解説していただきます。
■身近にいるかもしれない、旧統一教会の“摂理機関”とはなんなのか?
旧統一教会の“関連団体”として、田中富広氏が会長を務める「世界平和統一家庭連合」と、それにならぶ存在の「平和大使協議会」があり、さらに複数の“摂理機関”が存在しています。
“摂理機関”には安倍元首相がイベントにメッセージを寄せた「天宙平和連合」や、多くの政治家が取材に答えた「世界日報」などたくさんの団体があります。
――Q:この摂理機関というのはどんな団体ですか? 田中会長らは「本体とは別の団体」といった内容のことを言っていますが…
【鈴木エイト氏】
「旧統一教会の摂理機関とは、端的に言うと、“統一教会の教えを広めるための統一運動を推進する団体組織”の総称のことです。旧統一教会の傘下団体とみていいと思います」
――Q:大学で勧誘活動を行っているといわれる「ワールド・カープ・ジャパン」もこの“摂理機関”ということですが、こちらはどのような団体ですか?
【鈴木エイト氏】
「2世信者が主だったメンバーですが、同じ2世信者のつなぎ留めと、新たな信者のリクルートにも関与しているとみられています。いろいろなボランティア活動を通して、統一教会に導いているのではと指摘されています」
■変わってきた勧誘の手口
一般的な勧誘方法として「ボランティア活動」がありますが、勧誘の方法は2000年代前半と最近では変わってきていると、鈴木さんは指摘します。
【2000年代の勧誘手口】
・声掛け→手相占いなど
・団体名→偽装
・場所→駅前、大学など
【最近の勧誘手口】
・声掛け→アンケート、ボランティア
・団体名→正体は明かさず小さく表記
・場所→SNSも多用
――Q:この変化はどうみられますか?
【鈴木エイト氏】
「まず手相占いは、『手相の勉強をしています』と声を掛けるものですが、アンケートやボランティアも、以前から並行してやっていました。団体名は、聞かれれば名乗るし小さく書いてもあるんですが、『宗教の勧誘です』とは一切言わないんですね。あと、最近多いのがSNS。ツイッターなどで、『#春から○○大生』といった大学生をピンポイントで狙って、最初は『いいね!』を押してその後はリプライをして、最終的にはメッセージで誘う、という形を取っています」
――Q:どんな人が声を掛けられやすいんでしょうか?
【鈴木エイト氏】
「基本的には1人で歩いている人に片っ端から声を掛けます。100人や200人に声を掛けて、ようやく1人立ち止まってくれるかどうか、というところですね。人懐っこそうな人は、特に声を掛けられやすいと思います」
――Q:一般のアンケートとはどう見分ければいいですか?
【鈴木エイト氏】
「旧統一教会系は、アンケート用紙を“相手に渡さない”んです。アンケート用紙は勧誘する側が手に持って、相手の言うことを書き取る形を取ります。勧誘の対象者がどのくらい時間を割けるか、どのくらい貯蓄を持っているか、個人情報をいかに聞き出すか。用紙を渡してしまうとそれがうまく聞き出せない場合があるので、対象者に渡さず自分で持つ。それが一番の見分け方です」
――Q:大阪大学にもCARPがありましたが、国立大学がターゲットになるケースが多いのか、私立大学もターゲットになり得るのか、その辺りはどうでしょうか?
【鈴木エイト氏】
「いろいろな大学にありますが、旧統一教会は特に優秀な大学生を狙っています。優秀な大学生をリクルートして、弁護士にさせるとか省庁に送り込むとか、そういったこともやっていました。SDGsなどを通した勧誘もあるので、気をつけてください」
■旧統一教会は、なぜ政治家に近づくのか?
安倍元首相銃撃事件以降、多くの政治家が旧統一教会と関わりを持っていたことが明らかになりました。
政治家と教団の本当の関係性はどういったものなのでしょうか。
鈴木エイト氏が、2019年の参院選の選挙戦中に自民党・萩生田光一氏を取材した際に、このようなやり取りがありました。(音声データあり)
<2019年>
【鈴木エイト氏】
「(国際)勝共連合の人たちってアプローチしてきていますか?」
【萩生田光一氏】
「地元(東京・八王子)では勝共連合そのものはあまり活動していないんだけど。割と女の人で平和連合の会合なんかで、留学生のスピーチコンテストとかそういうのは」
【鈴木エイト氏】
「(旧統一教会側は)結構ロビー(活動)に来てるんですか?」
【萩生田光一氏】
「いや、最近はそんなに動いてないと思いますよ」
【鈴木エイト氏】
「前は結構よく議員会館をウロウロしているという?」
【萩生田光一氏】
「前はね。最近はもう壺(つぼ)も売っていないし、そんなに」
――Q:こういったやり取りがあったとのことですが、ここから何が読み解けますか?
【鈴木エイト氏】
「私はこの時、“統一教会”ではなくあくまで“勝共連合”について問いかけたんですね。『勝共連合の人はアプローチしてきていますか?』と聞いたら、萩生田さんは世界平和女性連合の話を返してきた。勝共連合のロビー活動について聞いたら、最終的には『最近壺も売ってないしね』と統一教会の話を返してきた。統一教会、世界平和女性連合、これはすべて同じ組織だという私の認識と萩生田さんの認識が、全く一致していたということですね、この時は」
勝共連合のことを聞いたのに、世界平和女性連合のことを話され、統一教会がかつて霊感商法に手を出していたことの象徴「壺」の話が出てきた。こういった点から、2019年の時点で、萩生田氏はすべてを認識していると鈴木さんは考えています。
――Q:萩生田氏は8月18日に「世界平和女性連合と統一教会の関係というのはあえて触れなかった」と発言していますが、こちらはどうみられますか?
【鈴木エイト氏】
「2019年に私が取材したときは、萩生田氏の方から“あえて”触れているんですね。それが、今回はなぜ触れなかったのか。そこが不思議ですね」
――Q:萩生田氏がどうかは置いておいて、旧統一教会が接触した地方議員がどんどん大物になっていくというケースもあると思いますが、どういった狙いがあると思いますか?
【鈴木エイト氏】
「まずは地方議員の力を育てておいて、それが国会議員になっていくと、旧統一教会としては非常にありがたい存在になるわけです。地方議員としてでも、旧統一教会が推し進めたい条例や法整備に関して、地方議員の存在は条例を作る側として利害に直結しますので、とても重宝されます」
――Q:近づきやすくコントロールしやすい、また、国会議員にまでなれば使い勝手がいいと、旧統一教会が地方議員に近づく狙いがあるんですね。
最後に、政治家に今後求めるべきものは何でしょうか?
【鈴木エイト氏】
「先の話をするのはなく、今までどういう関係にあったか。特に関係の濃かった人については徹底的に追及するべきだと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月22日放送)