「娘を殺していない」とブラジル国籍の夫が返信 堺市・母子殺害事件 大阪府警が視野に入れる“国際指名手配”とは 専門家は「身柄確保されてもブラジルの法律で裁く“代理処罰”の可能性が高い」 犯罪人引き渡し条約がない日本とブラジルの間で必要なこととは 2022年09月01日
堺市東区で母親と3歳の娘が殺害された事件で、公開手配されているブラジル国籍の夫とみられる人物が、関西テレビの取材に対し「娘を殺していない」と殺害への関与を否定しました。
事件が発覚したのは8月24日。堺市東区のマンションで、荒牧愛美さん(29)と娘のリリィちゃん(3)が血を流して倒れているのが見つかり、その後、死亡が確認されました。
司法解剖の結果、2人は8月20日から21日の間に刺されたとみられ、愛美さんは数十カ所を、リリィちゃんは十数カ所を刺されていて、2人とも即死だったことが分かりました。
警察は、愛実さんの夫でブラジル国籍のバルボサ・アンデルソン・ロブソン容疑者(33)を公開手配。バルボサ容疑者は事件後、職場に「2週間休む」と連絡した後、行方が分からなくなっていました。
【会社関係者】
「『大丈夫か』とラインを送ったら、24日に『骨折しているみたいで仕事ができません』と(返事があった)」
――Q:バルボサ容疑者は会社でどんな様子でしたか?
「子供の写真を見せたり、家庭円満ぶりをみんなに言っていたみたいですけど」
愛美さんの友人は…
【愛美さんの友人】
「(愛美さんは知人に)離婚の相談をしに行っていたみたいで、結構悩んでいたと。早く全てが明らかになってほしいというのが今の皆の思いだと思います」
警察によるとバルボサ容疑者は、8月22日に成田空港からブラジルに向け出国。
関西テレビがバルボサ容疑者とみられる人物のSNSにメッセージを送ったところ、「話せる状況にはない」「私は娘を殺していない」と、娘の殺害について関与を否定する返事が届きました。
さらにFNNは、バルボサ容疑者の出身地ロンドリーナ市を取材。幼い頃の友人は、バルボサ容疑者について「悪い性格ではなかった」と話し、1週間前に直接話をしたという別の友人は「ショッキングなニュースを見て信じられない。本当に彼がやったならば罪を償わなければならない」と話しました。
警察はバルボサ容疑者が実際に出身地に戻ったのかどうか確認を急ぐとともに、情報提供を呼び掛けています。
また、事件発生後、バルボサ容疑者が発覚を遅らせようと偽装工作をしていた疑いがあることが分かりました。愛美さんは21日までに殺害されたとみられていますが、22日の夕方に、愛美さんの携帯電話から母親に『体調不良なので来ないでほしい』という趣旨のメールが送られていたということです。
愛美さんの携帯はまだ見つかっておらず、警察はバルボサ容疑者が事件の発覚を遅らせようと、愛美さんになりすまして親族に連絡した疑いがあるとみています。愛美さんの母親にメールが送られた後の22日夜、バルボサ容疑者は成田空港からブラジルへ向けて出国しました。
SNSを通じてバルボサ容疑者とみられる人物に取材を試みた、関西テレビの大阪府警担当・東和香奈記者に話を聞きます。
――Q:どういう経緯でバルボサ容疑者とみられる人物とやり取りを?
【東記者】
「8月26日午前7時頃、バルボサ容疑者とみられる人物のSNSに『あなたたちは本当にあったことは分からない。待ってください。まもなくすべてが明確に分かります』といった内容が投稿されていました」
【東記者】
「このコメントを確認してバルボサ容疑者とみられる人物に取材を申し込んだところ、『話せる状況にはない』『私は娘を殺していない』と、娘の殺害について関与を否定する返事が届いたんです。それ以降の返事は返ってきていません」
――Q:今後の捜査はどうなりそうですか?
【東記者】
「警察は付近の防犯カメラや現場検証の結果から、被疑者をバルボサ容疑者と特定し、殺人の疑いで指名手配しました。今後は国際指名手配することも視野に入れて、捜査を続けています」
日本とブラジルの間には犯罪人引き渡し条約が結ばれていないため、ブラジル当局が身柄を確保しても、日本に引き渡す必要は法的にはありません。実際、過去にブラジル人の引き渡し事例がないため、大阪府警は“国際指名手配”を視野に入れているということです。
“国際指名手配”されるとどうなるのか、国際刑事司法に詳しい立命館大学の越智萌准教授は、「国際手配されたからといって国際警察が捜査するわけではない。ブラジルでブラジルの法律で裁く“代理処罰”の可能性が高い」と話します。
ブラジルの法律で裁くと、罪が軽くなってしまう可能性も考えられるため、今後は、両国の警察による綿密な情報共有や、外交ルートによる働きかけが重要とのことです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月1日放送)