人気の一番くじ公式店で不正販売 「法的問題ない」運営会社コメントに客は「憤り感じる」 弁護士は消費者に誤認させる「有利誤認」の可能性があると指摘 2022年09月02日
キャラクターのグッズがハズレなしで当たる人気の「一番くじ」を巡り、大阪の公式店で不正な販売が数年前から行われていたことが分かりました。運営会社は、「法的な問題はないと考えている」とコメントしていますが、これに対し、不正があった現場に居合わせた客の1人は、「憤りしか感じない」と話しています。
景品表示法に詳しい弁護士は、実際のサービスより有利であると消費者に誤認させる「有利誤認」の可能性があると指摘しています。一体、何があったのでしょうか。
■関連ワードがトレンド入りも…人気の「一番くじ」公式店で不正販売
不正な販売があったのは、全国展開している「一番くじ公式ショップ」の大阪日本橋店です。一番くじは、キャラクターのグッズが当たるハズレなしのくじ引きで、フィギュアなどが当たる通常の賞のほかに、最後に残ったくじを引くともらえるラストワン賞があります。
公式ショップを全国に展開しているほか、各地のコンビニや書店、ホビーショップなどでも販売されていて、人気商品が販売された際にはSNSで関連ワードがトレンド入りするなど、幅広い世代に人気を集めています。
公式ショップを運営するバンダイナムコアミューズメントによると、大阪日本橋店では数年前から、一部の商品で、特定の賞が引かれたあと、残ったくじ券を新しいくじ券セットの中に混ぜて販売し、本来渡すべきだったラストワン賞を提供していなかったということです。
(営業を終了した大阪日本橋店 大阪市浪速区)
■1箱あたり80枚のはずのくじが…なぜが112枚に増えていた
今回、2022年7月に大阪日本橋店で不正が行われた瞬間に居合わせたという、30代の男性に話を聞くことができました。
男性は、ドラゴンボールの人気キャラクターのフィギュアが当たる一番くじを目当てに、知人らとともに大阪日本橋店を訪れました。
くじは1回850円(税込)。
1箱=1ロットにくじは80枚入っていて、1人当たりの購入上限は20枚です。
男性は、知人らと一緒にくじ券を購入。1人目、2人目、3人目はそれぞれ上限いっぱいの20枚を購入し、4人目の時点で、くじは残り20枚となったはずでした。確実にラストワン賞が当たると確信した4人目の客がくじを20枚購入し、いざ引いたところ、ロットの中に、明らかにくじが20枚以上入っていることに気付きます。
男性が知人らとともに店員を問いつめると、前のロットに残っていた32枚のくじを新ロットに混入したと釈明したといいます。前ロットのくじの混入は、事前告知されずに行われていました。
(営業を終了した大阪日本橋店)
■なぜ不正販売を…くじが売れない事態を避けるためか
こうした不正販売による問題点は次の通りです。
・本来提供されるはずだったラストワン賞が4人目の客に提供されなかった
・1ロットあたりのくじの数が、80枚から112枚に増え、上位賞が当たる確率が下がった
では、一体なぜこのような販売が行われたのでしょうか。
運営会社は、「担当者が誤った認識のもとに販売していた」と説明していますが、詳しい説明を避けています。
一方で、現場に居合わせた男性は、「くじが売れなくなる事態を避けるためではないか」と話しています。男性によると、各上位賞の相当価格の相場は次の通りでした。
<A賞>6000円
<B賞>8000円
<C賞>8000円
<D賞>2万円
<E賞>2万円
<ラストワン賞>6000円
前ロットに残っていたくじは残り32枚で、A賞~E賞は、すべて当てられており、相当価格が数十円程度の「下位賞」とラストワン賞しか残っていませんでした。「一番くじ」は、どの賞がすでに当てられているのか、客が分かるシステムとなっています。
くじは1枚あたり850円。つまり、下位賞とラストワン賞のみの32枚では、誰もくじを引きたがらないのです。このままではくじが売れなくなってしまうと危惧した店舗側が、不正販売に踏み切ったのではないかと男性は話しています。
■「法的問題ない」運営会社コメントに…客は「憤り感じる」
運営会社によると、提供されなかったラストワン賞の景品は、横領や転売はされていないということです。
運営会社は、大阪日本橋店の営業を終了するとともに、「法的な問題はないものと考えておりますが、お客様の期待と信頼を裏切る販売行為であると認識しております」とコメントして、レシートを持っている客には、返品や返金などの対応にも応じています。
(バンダイナムコアミューズメントの謝罪文)
一方で、現場に居合わせた男性は、この運営会社の「法的な問題はない」とのコメントに対し、憤りを覚えたといいます。
【現場に居合わせた男性】
「明らかに店側に悪意がある。1ロット80枚だと思って引いたくじが112枚となっていたのには憤りを感じている。せめて、“法的に問題があるので改善する”と言ってもらえればよかった。きちんとした対応をしてほしい」
この問題について、景品表示法に詳しい川村哲二弁護士は、本来提供されるべきだったラストワン賞が提供されていなかったのは、少なくとも景品表示法の不当表示(有利誤認表示)に当たる可能性があると指摘しています。
多くのファンをかかえる「一番くじ」。今後も、公正公平な運営が求められそうです。
(関西テレビ記者 竹下洋平)