大阪・堺市で29歳の女性と3歳の娘が殺害された事件で、公開手配されているブラジル人の夫の足取りが少しずつ明らかになりました。今後の捜査の行方はどうなるのでしょうか。
殺害された荒牧愛美さんの夫で、公開手配されているバルボサ・アンデルソン・ロブソン容疑者。事件後、ブラジルへ出国し、いまだ姿を表していません。
バルボサ容疑者は今、どこにいるのか。生まれ育ったブラジル南部・パラナ州ロンドリーナを訪れると…
【記者リポート】
「容疑者の関係先付近では、地元のテレビ局も取材を行っていて、この事件に対する注目度の高さがうかがえます」
地元飲食店のテレビでも、事件に関するニュースが流れていました。取材を進めると、バルボサ容疑者は事件後、ロンドリーナの郊外を男性と一緒にバイクで訪れ、友人の消息などを尋ねていたことが分かりました。
【住民】
「長いこと来なかったが、先週現れて、当時の友人の消息を聞いていたと思う」
そんな中、ブラジルの現地警察は、すでにバルボサ容疑者が肉親の家に潜伏していることを突き止めていました。
【現地警察 殺人課 課長】
「われわれの元には市民からの通報があり、容疑者の潜伏先も分かっている」
潜伏先が分かっていながら現地警察が動けないのは、まだ、正式な令状が出ていないためです。
【現地警察 殺人課・課長】
「現状において法的な令状が出ていないため、私たちも捜査ができません。われわれは毎日ICPO(国際刑事警察)の手配者リストを検索している。手配者リストに(容疑者の)名前が発表され次第、拘束する」
一方、バルボサ容疑者の弁護士によると、本人は容疑を否認しています。
【バルボサ容疑者の弁護士】
「容疑者は罪を認めていない。彼は自分が説明し正当化する機会は、ブラジルでのみ可能だと思った」
バルボサ容疑者は、8月31日に警察に出頭しようとしていましたが、日本との手続きが間に合っていないため、受け入れてもらえなかったと言います。
【バルボサ容疑者の弁護士】
「1日も早く出頭したいというのが、容疑者の望みだ。われわれとしては、(逮捕状が出る前から)何が起きたのか説明したいのです。彼がそのとき何を見たのか、何があったのか(出頭して)全て明らかにしたい」
ブラジルに出国しているバルボサ容疑者。今後の捜査の行方はどうなるのでしょうか?大阪府警を担当する東記者に聞きます。
――Q:ブラジル警察はバルボサ容疑者の潜伏先まで分かっているようですが、なぜ逮捕できないのでしょうか?
【東記者】
「バルボサ容疑者はすでにブラジルにいるとみられていますが、ブラジルで犯罪を犯さない限り逮捕されることはありません。また、日本の警察が、バルボサ容疑者を日本に連れ戻すということもできません。捜査関係者は『日本の法律で裁くには本人が自分の意志で帰国しないといけない。家族に説得されるなどして戻ってくることが一番望ましいが、なかなか難しいだろう』と話していました。ブラジル警察は、国際指名手配となれば身柄を拘束すると話しています」
――Q:まだ逮捕への手続きが進んでいないようですが、今はどうなっているのでしょうか?
「国際指名手配するには、まず大阪府警が警察庁に要請し、その後、ICPOと呼ばれる各国の警察と連携する機関に要請します。そこで問題がなければ国際指名手配という流れになりますが、そもそも捜査書類などを提出するのに、今回はポルトガル語に翻訳する時間がかかります。また、ブラジルで処罰してもらうためには“代理処罰を要請する”という流れになるのですが、すぐにできる手続きではありません」
――Q:手続きをしている間にバルボサ容疑者の居場所が分からなくなりそうですが、逃亡の恐れはないのでしょうか?
「現在、ブラジルの捜査当局は居場所をつかんでいると話していましたが、日本側が手続きをしている間にどこかに逃げてしまうという可能性は十分考えられます。日本の警察としては、バルボサ容疑者の居場所を、捜査員を派遣して特定するといったことは今の段階ではできません。国際指名手配になっても、ブラジルの捜査当局にバルボサ容疑者の居場所を特定してもらって、身柄を拘束してもらうという流れになります」
――Q:バルボサ容疑者は警察に出頭しようとしているという話もありますが、どういう意図でしょうか?
「弁護士によると、バルボサ容疑者は容疑を認めていません。また、関西テレビがバルボサ容疑者のものとみられるSNSのアカウントに取材を申し込んだところ、『娘を殺していない』という返事が返ってきました。何かを主張するために出頭しようとしていると考えられます」
――Q:大阪府警としては確固たる容疑をかけているんですよね?
「警察は“2人”に対する殺害容疑で逮捕状を取っています。周囲の防犯カメラの捜査や現場検証の結果から、第三者の関与はなく、バルボサ容疑者が2人を殺害した疑いが強いとみています。今後の流れとしては、ブラジルの捜査当局にバルボサ容疑者の身柄を拘束してもらうために国際指名手配の手続きを進めるとともに、代理処罰となれば公判が予定されますので、公判に耐え得る証拠を、引き続き捜査で積み重ねていくと思われます」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月5日放送)