『性教育』を考える 性交渉してもOKといえる年齢は?…“性的同意年齢”13歳に驚き 助産師発案のボードゲームや「性教育」絵本 男子生徒が生理用品手に「女性の体に何が起こるか?」を学習 大事なのは『同意』 2022年09月13日
「性教育」と聞くと身構えてしまったり、恥ずかしいなと考えたりする方も少なくないかもしれません。今、その性教育の形が変わりつつあるようです。
■ゲームで学ぶ性教育
【記者リポート】
「何やらにぎやかな声が聞こえてきます」
記者が訪れたのは、クレオ大阪中央。楽しく性教育を学ぼうというイベントが開かれていました。
子供たちが遊んでいるボードゲームは、進める中で、自然に性の知識やコミュニケーションを学べる仕組みになっています。
このゲームを開発したのは、助産師の岸畑聖月(きしはたみずき)さん。きっかけは、この国の性教育に危機感を持ったことでした。
法律で定められる「性的同意年齢」=性行為への同意を自分で判断できるとみなされる年齢は、13歳。それにも関わらず、日本の義務教育の理科や保健体育では、「受精や妊娠に至る過程は取り扱わない」といういわゆる「はどめ規定」によって、性交渉のことなどが教えられていません。
【With Midwife 岸畑聖月さん】
「『性交渉してもOK』って言える年齢って、何歳だと思いますか?18歳ぐらい?16歳ぐらい?14歳くらい?」
岸畑さんの問いかけに、子供たちがそれぞれ手を上げます。「16歳ぐらい」のところで、最も多くの手が上がりました。
【岸畑さん】
「『16歳』が一番多くて心がズキッとしたんですけど、その通りなんですよ。なぜなら15歳にならないと性交渉について教えてもらえないので」
ボードゲームは、「性的同意」について学ぶきっかけにもなります。
【岸畑さん】
「『協力魔法』2人で使えるけどどうする?」
【子供たち】
「どうする?」
「運悪いからやめとく」
「協力魔法」という言葉は「性的な関係になること」に置き換えることができ、同意するかしないか、自分の意志をはっきりと伝えることでゲームが進みます。
【岸畑さん】
「『協力魔法』を性的なコミュニケーション、性愛、関係性に置き換えることもできます。まずは同意が大事でしたね。自分が欲しいものがあっても、相手がNOと言えば無理強いすることはできませんし、13歳から判断の責任が問われるから知っておこう」
イベントに参加した人たちに、感想を聞きました。
【中学生】
「性…なんやっけ、性的同意年齢が13歳ていうことが驚き。そんな若い頃から」
【高校生】
「性教育とか性の知識に自分の年齢の割に疎くて不安があったんですけど、今日このゲームをして、知識が深まってよかったと思った」
【9歳の娘と参加した母】
「知っていれば自分でどうかできることや相談もできるけど、知らなかったら相談もできないし、怖い目に遭ってから、『ああ大変だったね』では済まないので」
■絵本や漫画で学ぶ性教育 書店にもずらり
今、こうした性教育を扱う本のバリエーションも増えています。漫画や幼い子供でも分かるようかわいいイラストで学べる本など、以前に比べると敷居が低くなりました。
【MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 鈴木淳代さん】
「タブー視されてるのがなくなってきたかなというのが、もしかしたらあるかもしれないですね。絵本とかで、『そういうときはNOって言ってもいいんだよ』とか、『自分の体を大事にしていいんだよ』とか、こういう段階から伝わっていると、子供自身が『嫌だ』とか『やめて』とか言いやすいかなと」
■男子校で「生理を学ぶ」課外授業
「性教育」は女性だけのものではありません。9月1日、東京都内の男子校で行われたのは、「生理を学ぶ」課外授業です。
【講師】
「これが私の周期で…赤が生理日、青がPMS(月経前の不調)、緑が排卵日。この時期ずっとイライラしたり、頭痛があったりとか」
講師は生理用下着を扱うメーカー。生理の周期が色で示されたカレンダーをスクリーンに映します。経血の成分は何か?女性の体に何が起こるのか?といったことも、実際の生理用品を渡して説明します。
【男子生徒たち】
「で?どうすんの?」
「こうやって開けるのね」
おぼつかない手つきで生理用品を触る生徒たち。経血に見立てた液体を、生理用品にしみこませます。
【男子生徒たち】
「あんまりぬれた感じしない…」
「確かに…熱がずっとこもるのは嫌だね」
「間違いなくね」
スポーツやプールの時に着用する「タンポン」には少し戸惑いも。
【男子生徒たち】
「どうしたらいいの、これ」
「けっこう広がるんだね」
「吸収できる量は多くて、役に立ちそうな感じするけど」
「入れるのは大変そうだね」
女性の生理について学んだ男子生徒たち。授業の終わりに、それぞれ感想を発表しました。
【男子生徒たち】
「妹が自分に『生理になっちゃった』って言わないと思うので。まぁ察してあげるのが一番重要なのかなって」
「寒いときに生理がすごくつらいという話を聞いたので、体を温めるためにカイロなり、気持ちを落ち着けるために温かい紅茶を飲ませたりしたらいいんじゃないかな」
『温かい紅茶』という言葉に、教室の後ろで授業を聞いていた女性教諭たちから、熱い拍手が送られます。
【本郷学園 松尾弥生教諭】
「お母さんがイライラしてたら、『なんだ?』って思う前に、『お母さん大丈夫かな?』って。それが本当の思いやり。バラの花を買ってもらいたいわけじゃなくて、いたわってほしい。温かい紅茶を出してくれることが本当にうれしいの」
授業を通して、大人の気遣いも少しだけ身に付けた生徒たち。授業後のインタビューでも…
【男子生徒たち】
「卒業したら女性と接する機会も今より増えると思うんですが、今回の授業を生かして接していけたらと思います」
「(母の)体調が悪いときがあるので、そういうときは生理かどうかに関わらず、サポートできたらいいな」
子供たちへの性教育が、少しずつ変わりつつあるようです。
■「性教育は子供たちの生に直結する」 記者のまとめ
今回取材をしたのは、3歳と1歳の子を持つ記者。「性教育って何から始めていいの?」と模索する中で取材を進め、さまざまな専門家たちから学んだことをまとめました。
子供に「赤ちゃんはどうやってできるの?」と聞かれたとき、どう答えればいいのでしょうか。何歳から、どこまで説明する?さまざまな迷いが生まれますが、大切なのは、性教育は“聞かれた時が答え時”ということです。性教育をタブーのように扱って、「ダメなことを聞いている」と思わせてしまうと、知識が深まらないまま子供たちが成長してしまうということです。
性教育の絵本作りや授業を行う専門家も「性教育は“日常にちょい足し”でいい」と言っています。今は性教育について、さまざまな本が出ています。シールを貼りながら学ぶ絵本などもありますので、入り口として活用するのもいいかもしれません。
性教育について、どの年齢でどこまでを説明すればよいかの目安をまとめました。年齢やそれぞれの成長に合わせて、子供たちに理解してもらうことが大切です。
【5~8歳には】
・胸や尻など、体のプライベートパーツについて
・嫌なときは『嫌』と言っていいこと
【8~12歳には】
・射精や月経、妊娠など体の仕組み
・『相手のことを好きという気持ち』は大切だが個人差があるため、一方的に押し付けないようにすること
【12~15歳には】
・性的な興味があるのは恥ずかしいことではなく普通のこと
・ネット情報(アダルト動画)=セックスではないということ
今回の取材を通して、一番大事なのは「同意」=意思確認だと感じました。相手と付き合うとき、性交渉をするときなどに同意がないと、性被害や望まない妊娠につながることがあります。
子供が小さいうちから、親子で一緒にお風呂に入るときなどに「胸を洗うよ」「お尻を洗うよ」といった声掛けをして同意を得る、といった段階を踏むことが、将来、「性交渉には同意が必要」という意識を得ることにつながるのではないかと思います。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月14日放送・記者 加藤さゆり)