事件当日に「会いに行くね」とメッセージ カラオケパブ女性オーナー殺人 残されたスマホが語るもの 深夜に何十件も送信する強い執着 母親は「『お母さん帰ってきたよ』って、たわいもない夢を見る」 2022年09月15日
大阪・天満の飲食店でオーナーの稲田真優子さんが殺害された事件の初公判が、9月16日に大阪地裁で開かれます。
関西テレビの取材で、真優子さんと被告の男が事件直前にSNSでやり取りした内容が明らかになりました。
――Q:裁判までの期間はどう過ごしました?
【亡くなった真優子さんの母・稲田由美子さん】
「(真優子さんが亡くなって)急に月日が過ぎるのがゆっくりになったような、時間が止まったような…1年もたったんだなって」
事件の後、カメラの前で初めて気持ちを語った稲田由美子さん(65)。娘の真優子さんを亡くしてから、大きな悲しみを抱えて過ごしてきました。
【稲田由美子さん】
「まゆっちのスマホです。(Q:中は見られました?)はい、見ました」
真優子さんのスマートフォンに残されていたやり取りから分かったのは、被告の男の異常とも言える執着でした。
2021年6月、大阪・天満のカラオケパブ「ごまちゃん」で、店のオーナー稲田真優子さん(25)が首や胸を刺され殺害されました。真優子さんは顔など10カ所以上を傷つけられていて、非常に強い殺意があったとみられています。
捜査の末に殺人の罪で逮捕・起訴されたのは、店の常連客・宮本浩志被告です。
事件当時、知人や店の客は、宮本被告についてこう証言しています。
【真優子さんの10年来の知人】
「西宮から通っている人で『しつこいお客さんがいるんだ』って聞いたことがある。携帯電話に1日に連絡が20~30件入ってくるのを見せてもらったことがある」
【店の常連客】
「迷惑な話を聞いていたので、まゆ自身が僕に『あの人やで』と教えてくれた、こっそりと。ラインが多いとか。電話が多いとか。やり取りがしつこいとか」
警察は、宮本被告が一方的に真優子さんに対する好意を募らせ、犯行に及んだとみています。
2人は、真優子さんが以前に勤めていた飲食店で知り合いました。真優子さんのスマートフォンに残されていた宮本被告とのやり取りには…
<2020年11月の宮本被告からのメッセージ>
「あー、まゆさんの声、聞きたいな。眠れてないんです。勝手なことですが。1時間おきに目が覚めて」
「別の店に行っても、まゆさんみたいにかわいくて心地よい声いないよ、ほんとにね。連休中に、声聞かせて~」
真優子さんから返事がないにも関わらず、深夜から早朝にかけて、何十件も一方的にメッセージを送り続けています。真優子さんは時々短い返信をする程度にとどめていましたが、宮本被告からの執拗(しつよう)な連絡が途絶えることはありません。
【稲田由美子さん】
「夜の仕事やから、酔っ払いとか変なお客さんとか、絡まれたりないかなと心配だったけど。『そんなん全然ないよー』って言ってたけど、『あったんや…』と思って」
そして、6月11日の犯行当日も…
<2021年6月11日の宮本被告からのメッセージ>
「今日は、中華丼を食べました~。昼を乗りきって素敵なまゆに会いに行くね」
犯行当日、宮本被告が店から帰る際に撮ったとみられる写真も残っていました。撮影時間は午後9時9分となっています。警察の発表によれば、犯行時刻は午後9時~10時ごろ。この写真を撮影したすぐ後に、宮本被告は犯行に及んだことになります。
捜査関係者によると、宮本被告は店を出た後にビルの中に潜み、他の従業員が帰る姿を確認。真優子さんが一人になったところを狙って、犯行に及んだとみられます。さらに、犯行現場には宮本被告の指輪が残されていたことも新たに分かりました。
しかし宮本被告は、警察の調べに対し犯行を否認。2人の間に何があったのかは、今も分かっていません。
【真優子さんの母・由美子さん】
「6年前に誕生日に感謝状もらったの、うれしかった。まゆっちの部屋行って、オムライス作ってもらって、初めて。感謝状までもらって、贈呈式があった」
由美子さんが受け取った感謝状には、日頃の感謝や誕生日を祝う言葉とともに、「これからも家族みんなで思い出を作りましょう」の一文が。末尾には「あなたの愛娘」とありました。
【真優子さんの母・由美子さん】
「夢見るときある、たわいもないこと。急に帰ってきて、『お母さん帰ってきたよー』って言って。旅行行ってたから、洗濯物がいっぱいあって、『洗濯すんでー』って言って、うちで。それがなかなか終わらない、何回も何回も。『いいかげん自分の家帰ってしいや』って帰らそうとしてるところで目が覚めて…『あっ、なんで(現実には)まゆっちいないのに…あんなこと言わなければよかった』って」
9月16日に迎える初公判。家族は、自分の娘がなぜ亡くなったのか。せめてその理由だけでも知りたいと、裁判に臨みます。
裁判のポイントについて、関西テレビの神崎博解説員に聞きました。
【神崎博解説員】
「宮本被告はいまだ自供しておらず、また、密室での犯行だったため目撃者もいません。被害者のDNAが付着した衣類や靴しか状況証拠がない中で始まる裁判のポイントは、『“被告以外あり得ない”ということの立証』です。宮本被告が犯行に及んだという証拠はありませんが、該当時間に建物を出入りした人を洗い出し、全員のアリバイをつぶしていくという作業、『他の人は犯行をしていない』と立証して宮本被告だけを残すという、丁寧な過程が必要になってきます」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月15日放送)