焦るロシア…ウクライナの土地を併合へ 「動員令」と「住民投票」でウクライナへの攻勢に出たロシア 自国領土化し”核兵器”使用につなげるシナリオも 2022年09月22日
ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア。9月21日、プーチン大統領は「ロシア国内で部分的動員令を行うという国防省と軍の提案を支持する」と述べ、「予備役」を動員すると宣言しました。この発表を受けてロシアでは、抗議デモや国外脱出の動きが広がっています。
またロシアは、ウクライナ領土の一方的な編入への動きも強めています。ウクライナ東部と南部の4州の一部で、ロシアへの編入について問う住民投票を行うと親ロシア派組織などが発表。プーチン大統領はこれを支持し、「ロシアの国民と領土を守るため、持っているあらゆる手段を使う」と述べ、核兵器を使う可能性までちらつかせて西側諸国をけん制しています。
ウクライナは9月6日以降、欧米の支援などを受けてロシアに制圧されたいくつかの地域を奪還し、その範囲は拡大を続けています。ウクライナ問題に詳しい神戸学院大学の岡部芳彦教授は、「動員令」と「住民投票」から、ロシアの「焦り」と「狙い」が見えると話します。詳しい解説をお聞きします。
【新実キャスター】
「岡部教授は『動員令』について、『欧米の武器支援などに対抗』するために必要だと判断されたわけですよね?」
【岡部芳彦教授】
「そうですね、最近のロシア軍はウクライナ軍に押されて兵員不足です。刑務所の受刑者も動員していましたが、それでも足りないので、『動員令』で兵員を確保しようとしています」
【新実キャスター】
「ロシアは『動員令』と同時に、多くの部分を制圧しているルハンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州について住民投票を行い、賛成多数であればロシアの領土にすると発表しました。『動員令』は国民の反発を買いますが、この『併合』で戦争の成果が上がっているということを国内にアピールする意図があるんですね?」
【岡部芳彦教授】
「そうですね。本来であれば4州をすべて占領してから住民投票を行うのが目標だったんですけど、ルハンスクは99パーセント、ドネツクとザポリージャは66パーセント、ヘルソンは93パーセント程度しか占領していない中で、成果を見せるのをかなり急いでいるようにみえます」
【新実キャスター】
「それが『焦り』ということなんですね。住民投票を行ったからといってロシアが簡単に4州を併合できるとは考えにくいんですが、『投票結果の改ざんも可能』なので、賛成多数という結果が発表されるんですね?」
【岡部芳彦教授】
「そうですね、2014年にはクリミア併合がありました。ウクライナ東部の指導部には、ロシアを支持する人たちがいます。しかし、住民にはそうでない人も多い。多くの人たちはロシアの占領を嫌って避難していました。そんな中で行われた投票で、賛成が96パーセント以上というあり得ない数字が出た。今回も似たような流れなので、数字で本当かどうかが分かると思います」
【新実キャスター】
「クリミア半島の賛成『96パーセント以上』という数字は嘘なんですか?」
【岡部芳彦教授】
「常識的にはあり得ない数字なので。クリミアのときはまだ、国際選挙監視団を呼んで正当に見せようとする余裕がありましたが、今回はそんな余裕のない混乱の中で行われるので…投票自体が実施できればの話ですが」
【新実キャスター】
「ロシアがウクライナに領土を奪還されるような状況になり始めた『焦り』から、住民投票・編入という方向に動いているんですが、そこには確固たる『狙い』もあります。岡部教授が見るロシアの狙いとして、『4州を併合すれば“ロシアの領土”になる。そこを攻撃されれば、核を使用できる』というロジックが成立するということですが」
【岡部芳彦教授】
「そうですね。この戦争は“ドネツク人民共和国”と“ルハンスク人民共和国”という2つの偽物の国の独立を承認する、というところから始まりました。今はフェーズとともに理屈も変わって、自国の領土にしてしまうと。プーチン大統領は6月のサンクトペテルブルクの国際経済フォーラムで『国家の主権が脅かされるときは核攻撃もあり得る』と言っています。“国家の主権が脅かされる”とは“領土を侵略される”ということになりますので、4州を併合することで核兵器の使用につながるという理屈につなげようとしています。ウクライナからすると自国の領土の奪還なのですが」
【新実キャスター】
「今後、ウクライナは領土奪還作戦を継続するとみられていますか?」
【岡部芳彦教授】
「そうですね、状況を静観するというのはあると思いますが、領土奪還は継続すると思います。ウクライナもロシアも、われわれほど核兵器を怖いものだと考えていません。『戦術核』のようなものが使われる可能性があるというのは、彼らはいつも考えています」
【新実キャスター】
「今のウクライナの優勢は欧米の武器支援があってのものだと思います。ウクライナが核攻撃をその程度に考えていたとしても、アメリカが、『核を本当に使うなら…』と支援をためらう可能性はありませんか?」
【岡部芳彦教授】
「今まではロシアの核使用を恐れていましたので、そういった側面はあったのですが、逆に武器支援のフェーズも上がるかもしれません。これまでウクライナが求めていた最新兵器は提供されていませんでしたが、近い将来、アメリカが戦闘機の提供を行う可能性も出てきたと思います」
【新実キャスター】
「戦況が大きく動くきっかけになるかもしれないということですね」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月22日放送)