まもなく“インフルエンザ”の季節…「免疫低下」&「入国緩和」で大流行のおそれ まだ心配な“新型コロナ”と同時流行の懸念も 専門医はワクチンの『同時接種』を推奨 効果と副反応は? 2022年10月04日
新型コロナの流行で、去年・おととしと極めて低い感染者数だった季節性インフルエンザ。今年は流行のきざしがあり、コロナとの同時流行も懸念されています。
インフルエンザ流行の可能性とワクチンについて、専門医に聞きました。
■インフルエンザの予防接種始まる
大阪市では10月から、高齢者を対象に無料のインフルエンザの予防接種が始まりました。中央区の小畠クリニックでは、10月4日の午前中だけで6人が接種を受けました。
【小畠クリニック 小畠昭重院長】
「徹底したコロナ対策がちょっと緩んできたから、インフルエンザも入ってきて、免疫ない世代にはやったんかな…オーストラリアから流れてきたと思うけど」
例年、推計1000万人が感染していたインフルエンザ。昨シーズンはおよそ3000人と大きく減っていましたが、日本の流行予測の参考にされる南半球のオーストラリアでは今年大流行となり、新型コロナとの同時流行も起きました。
今後、入国制限も緩和される中、厚生労働省は過去最多となる約7042万人分のインフルエンザワクチンを確保する予定です。
【小畠クリニック 小畠昭重院長】
「同時に流行しないと思ってたんやけど、(コロナと)併存することが分かったからね。高齢者は(コロナワクチン)4回目接種を終えてるので、5回目来る前にインフルエンザの予防接種しましょうって、今打ってます」
■専門医の解説
インフルエンザは実際に流行するのか。ワクチンは打った方がいいのか。関西医科大学附属病院の宮下修行教授に聞きます。
――Q:日本でのインフルエンザの流行について、参考になるのが南半球のオーストラリアなんですか?
【宮下教授】
「そうですね、日本の夏はオーストラリアの冬です。インフルエンザは冬にはやる病気なので、南半球の冬を参考にして、日本での流行の有無や『型』についての対策を練ります」
――Q:そんなオーストラリアでは、去年はほとんど見られなかったインフルエンザ感染者が今年は急増していて、コロナ前の平均よりかなり感染拡大している状況です。何が要因なんでしょうか?
「一番は、この2年間インフルエンザがまったくはやらなかったことです。はやらないということは、私たちのインフルエンザに対する免疫が下がっているということで、一度はやり始めると大流行になる。インフルエンザはコロナと違い、子供から流行が起こります。子供から社会に拡散する病気ですから、一気に広がりやすい。もう一つ、オーストラリアには北半球で冬にはやったものが運び込まれてきていますので、重要なのは外国人観光客の受け入れがどうだったのか。これにもよりますね」
――Q:日本もこれから入国制限が緩和されますね。オーストラリアでの今年の流行ですが、ウイルス型判明分の8割が「H3N2亜型」だったそうです。この型に対する日本人の抗体保有率は、0~4歳で10%程度、70歳以上で40%程度だそうですが、この数字はどう判断したらいいですか?
「かなり下がっていると思います。『H3N2亜型』は、高齢者の肺炎のリスクがかなり高いです。5歳未満の重症化率は高くありませんが、重症化すると脳症が起こりやすいのがこの型の特徴です。今年は要注意です」
――Q:宮下教授は『インフルエンザワクチンを打つべき』という見解ですね。インフルエンザワクチンは、流行の型によって“当たり外れ”のあるイメージですが、今は『4価ワクチン』という、A型のH1N1株とH3N2株、B型の山形系統株とビクトリア系統株の4つに対応したワクチンを混ぜたものを打っているということです。型による“当たり外れ”はそうないと思っていいのでしょうか?
「そうですね。ただ、H3N2株は変異をします。ワクチンは『継代培養』といって、ニワトリの卵の中で継代していきます。すると、H1、H3というのは変わっていき、効果が落ちてしまうということが分かっています。H3N2『亜型』というような、マイナーチェンジも起こります」
――Q:幅広く対応はしているけれど、“当たり外れ”はまだあるということですね。効果については、65歳以上の高齢者で発症予防が34~55%、死亡予防が82%なんですね
「はい、ワクチンの重要なポイントは、発症予防ではなく重症化予防、死亡抑制です。特に今年は高齢者の肺炎リスクが高いので、8割の死亡予防はかなり大きいです」
――Q:乳幼児への効果は、発症予防は20~60%。重症化予防は『有効性がある』とする論文は散見されるものの、明確な数字は出ていないと…これはどう見ればいいですか?
「そもそも、乳幼児の重症化率はそう高くありません。少ない中で数えますので、有意差が出たり出なかったりということになります。ただ、脳症は後遺症が残るのが一番の問題なので、僕はワクチンを打つべきだと思います」
――Q:コロナワクチンの3回目・4回目接種とインフルエンザワクチンの接種では、どちらを優先して接種するべきか。宮下先生は「副反応が1回で済む」ということで同時接種を理想とされています。左右の腕にそれぞれ接種して、時間の間隔を空ける必要もないということで、「単独接種と比較して有効性・安全性が劣らない」という報告もあるんですね
「去年から、インフルエンザとコロナの同時流行を想定して検討が行われてきました。それによると、免疫もきちんとつくし、安全性にも大きな問題はない。ならば1回で済ませた方が、副反応が少なく理想的であるということになります。同時接種によって副反応が重くなるということも、今までのデータではありません」
――Q:高齢者と乳幼児はインフルエンザワクチンを打った方がいいということですが、それ以外の若い世代は、個々の判断で大丈夫ですか?
「そうですね。ただ、コロナとインフルエンザが同時流行するとダブルパンチになり、より強く症状が出るということも分かっています。優先順位はありますが、ワクチン接種はやはり考慮すべきかなと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月4日放送)