2023年、京都に移転予定の文化庁。明治維新以来となる中央省庁の移転ですが、ここに来て、旧統一教会問題が影を落としています。
■期待高まる文化庁の移転 庁舎の完成間近も…
急ピッチで工事が進んでいるのは、京都御所にもほど近い文化庁の移転先。京都府警本部があった場所です。
壁には「文化庁がいよいよ京都へやって来ます」と書かれ、期待が高まっています。
【記者リポート】
「文化庁の移転予定地に来ています。まだ工事が進められていますが建物の全貌が見え始め、完成も間近のように見えます」
政府は2016年、東京一極集中の是正や地方創生の一環として、文化財が多く残る京都に、文化の振興・保存や宗教に関する行政事務を行う文化庁を移すことを決定しました。
文化庁の9つの課のうち5つの課と職員の7割近くが、東京から京都に拠点を移す計画です。
何度も移転シミュレーションが実施され、岸田首相も工事現場の視察に訪れていました。
【岸田首相】
「単にその東京の一極集中の是正にとどまらずに、文化芸術のグローバルな展開、文化芸術のDX化(デジタルトランスフォーメーション)。こうした新たな文化行政を一層進める上で、大きな契機になると期待しています」
2023年3月27日には業務を開始する予定なのですが、ここに来て移転に暗雲が立ち込めています。
■京都に移転予定の宗務課 旧統一教会の調査はどうする?
【立憲民主党 辻元清美議員】
「文化庁は春には京都に移転する、移転されて京都でやるんですか?」
10月19日の参院予算委で野党が指摘したのは、「これから始まる旧統一教会の調査は、移転先の京都でできるのか」ということ。
旧統一教会について、文化庁の宗務課の職員8人が、宗教法人法に基づき報告徴収・質問権の行使による調査を行うことになっているのです。
【立憲民主党 辻元清美議員】
「宗務課で質問は作るんですか?」
【永岡桂子文科相】
「その通りでございます」
【立憲民主党 辻元清美議員】
「8人でできますか?」
【永岡桂子文科相】
「できます。頑張ってやります」
「頑張ってやる」とのことですが、他省庁との連携や国会対応などの仕事もあります。京都での作業は、何かと不便が出てきそうですが、2日後の21日には…
【永岡桂子文科大臣】
「移転するんだけれども、全員が行くということはちょっと難しいのではないかと思っております。京都に行った方とこちら本省に残る人と、連絡・連携はしっかりさせていただく」
永岡文科大臣は、宗務課については完全移転は難しい、との認識を示しました。
過去に文化庁の移転は2度に渡って延期になったこともあり、文化庁で文化部長を務めた経験のある寺脇研さんは、「これで予定が滞ってはならない」と指摘します。
【元文部官僚 寺脇研さん】
「旧統一教会の問題なんかは、文化庁の職員だけではなくて霞が関の中の力を合わせたチームをきちんと東京に置いて、統括する人がそこにいてってことであれば、何ら移転に影響を与えることだとは思いません。何年も何年もぐずぐずしている中で、またこれをさらにやったら『来ていらんわ』みたいな話になりかねない」
旧統一教会の問題をきっかけに、不穏な空気が漂い始めた文化庁の移転。本当に予定通り進むのでしょうか。
■「リモート化」はどこまで進むか
過去に実施された文化庁の京都への移転シミュレーションを見ると、東京一極集中の解消は簡単ではないことが分かります。
文化庁が2020年の10月~11月に試験的に行った京都移転では、予算に関する業務・国会議員への説明について、リモートで行うことができたのは15パーセント未満で、残りは東京へ出張して対応したという結果に。
課題として、状況に応じて追加の資料を出す必要のある会議で、全ての資料を共有することが難しいという点や、1台のカメラでは発言者が特定しづらく、相手の反応や場の雰囲気もつかみにくいという点、リモート会議のスペースや機材の不足といった点が挙げられました。
また、機密性の高い資料の扱いや、複雑な協議をするのは困難という問題点も。
このシミュレーションはコロナ禍1年目の2020年に行われたもので、現在はリモート環境の整備も進んでいます。しかし、機密性の高い資料の扱いなどの難しさは残っていると、関西テレビの神崎デスクは指摘します。
【関西テレビ 神崎デスク】
「外務省や防衛省など、他国と関係がある省庁は、扱う史料や情報の機密性が高い。会議で配ったPDF資料やスクリーンショットの流出といった懸念がある。紙の資料を配布して、終了後に回収するような会議はリモートでは難しいと思います」
国会議員への説明はリモート化が進んでいるのか、2021年3~4月に各省庁の現役国家公務員204人へ行ったアンケートでは、「リモート化は進んでいると思う」と答えた人が7割近くを占めました。
一方、「大臣への説明はすべて対面。管理職は何の違和感も抱いていない(財務省・20代職員)」や「リモートが1度もなく、秘書官が朝6時から対面の予定を入れてくる。子供の送迎を家族に代わってもらう羽目に(厚労省・30代職員)」といった声も。
旧統一教会の調査に関する懸念が出ていますが、文化庁の京都移転は既定路線。中央省庁全体のリモート化に向けた環境整備に前向きな影響があると考えられ、移転が今後どのように進められるのか、注目されます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月24日放送)