脳障害のある男性が病死の“前日”に自宅売却 遺族は「内容を理解する判断力なく契約は無効」と提訴 「十分な判断力があった」と反論する不動産会社… トラブル防ぐ“後見制度”とは 2022年11月17日
重度の脳障害がある男性が病気で亡くなる前日に、自宅を売却する契約を不当に結ばされたとして、遺族が不動産会社を訴えた裁判が始まりました。
【発秀さんの兄・柳南秀さん】
「不信感と怒りしか覚えない」
訴状などによると、柳発秀さん(当時51)は5年前、交通事故の後遺症で高次脳機能障害と診断され、記憶力や認知機能の低下で働くことができなくなりました。
発秀さんは、大阪市内の一軒家で1人暮らしをしていました。
【柳南秀さん】
「家がごみ屋敷みたいになってて、壁に血がついていてすごくひどい状態で」
2022年6月、発秀さんは自宅から離れた集合住宅の一室で倒れている所を発見され、病院に運ばれましたが亡くなりました。
発秀さんが自宅ではなく集合住宅で亡くなっていたことなどを不審に思った遺族が弁護士らと調査をしたところ、不可解な事実が明らかになりました。
発秀さんが自宅を売却したという契約書のコピー。契約した日が亡くなる前日になっていたのです。
【柳南秀さん】
「遺留品を取りに行ったら鍵がなくて。弟の口座にお金2200万振り込まれたとか、現金を受け取ったっていうのは何もないんです、どこかで使ったっていうのも」
遺族は不動産会社を相手取り、2150万円の損害賠償を求めて提訴。
11月17日に大阪地裁で行われた裁判で遺族側は、「発秀さんは生活の基本的なこともできなくなっていた。契約内容を理解する判断力はなく契約は無効」と主張しました。
【柳南秀さん】
「弟に後見人つけてここに住ませておけばと、すごく後悔していて。このままでは兄貴として顔向けできないと思って」
不動産会社は「家を売った代金は発秀さんの借入金の返済に充てられた。発秀さんには十分な判断力があった」と反論しています。
■トラブルを防ぐためには
60歳以上の人の自宅売却を巡るトラブルは、年間600件以上起こっています。
不動産トラブルに詳しい清水勇希弁護士は、トラブルを防ぐためには「後見人」が重要だと話します。
<判断能力がある状態…任意後見制度>
・本人が、家族などを「任意後見人」に選任
・事前に決めた一部行為の代理と、本人が結んだ契約の取り消しの協議が可能。
<判断能力を欠いた状態…法定後見制度>
・家庭裁判所が、弁護士などを「成年後見人」に選任
・全契約の代理と、本人が結んだ契約の取り消しが可能
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月17日放送)