”国産初"の新型コロナ飲み薬「ゾコーバ」承認 専門家は「ついに現れたゲームチェンジャー」と期待 軽症・中等症が対象で重症化リスクが低い人も使用可能に 高齢者への効果は限定的との指摘も 2022年11月23日
国産初の新型コロナの飲み薬「ゾコーバ」。11月22日、初めて緊急承認されました。
開発した塩野義製薬によると「ゾコーバ」は軽症・中等症が対象で、重症化リスクが低い人も使用が可能です。
服用は感染の初期段階に1日1回、5日間。治験では4日目に、比較試験のためのニセの薬を飲んだ感染者に比べ、ウイルスの量が30分の1に減りました。
ただ、妊娠中や妊娠の可能性のある女性は服用できないほか、慢性の病気の治療薬を服用していると、ゾコーバを服用できない場合もあります。
塩野義製薬は今年5月、「緊急承認制度」の初めての適用を求めて国に申請していましたが、治験のデータが不十分として、継続審議となっていました。
そして今年9月、鼻水、のどの痛み、咳などの症状の回復を8日間から7日間へと、24時間短縮させる効果があるという最終治験の結果を発表し、承認を待っていました。
発熱外来の診察や往診を担当している、大阪市の葛西医院の小林正宜院長は次のように話しました。
【葛西医院・小林正宜院長】
「若年の(重症化)リスクの無い方で、ワクチンをあまり接種されていなくて、症状が長引くだろうと思われる患者さんに対して有効と思われます」
その一方で、必要性については次のように指摘しました。
【葛西医院・小林正宜院長】
「高齢者の方でもワクチン接種回数が4回、5回とかしっかり打っている方はあまり症状が続かない。1日、2日でけろっとしている人も多い。その薬を飲んだところで症状を抑える効果はかなり限定的になるので、そこまで必要性はないんじゃないかなとも思います」
厚生労働省は、塩野義製薬から100万人分を購入する契約を結んでいて、12月はじめごろには医療現場で供給することを 目指しています。
関西医科大学附属病院の宮下修行教授は「ゾコーバ」に期待を寄せています。
今回の承認について、次のように話しました。
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「前回は継続審議になってしまったのは、治験のデータが途中であったのが大きな理由でしたが、今回はきれいに有意差が出てきたので承認は妥当だといえます」
「ゾコーバ」の特徴は次の通りです。
▼中等症・軽症者向けの飲み薬であること
▼発症から3日以内に服用すると、発熱・咳・のどの痛みなどの症状についてオミクロン株は8日で症状がなくなるとされるが、ゾコーバを飲むと、7日でなくなる
▼1日目は3錠、2日目から5日目は1錠を1日1回服用
▼BA5などの変異ウイルスにも効果があり
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「一番重要なのはこれまでの経口薬は「パキロビット」と「ラゲブリオ」の2つがあったが、重症化のリスクがある人しか飲めませんでした。今回は重症化リスクのない人、若者やワクチンが打てない方などに有効だと位置づけられます。新型コロナは症状が長引いてしまい、特にオミクロン株は咳が長引きます。ただワクチンを打ってウイルスの量を減らすと症状を軽くすることができます。例えば熱も下げることができる軽減させる作用があります。ウイルス量を減らして症状の程度を和らげるのがこの薬の特徴です」
「ゾコーバ」は軽症者でも飲める一方、服用できない人もいます。
▼胎児への影響を考え、妊婦は服用することができない
▼飲み合わせが出来ない薬が36種類ある
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「高血圧や脂質異常症(高脂血症)などの薬を服用している方は飲むことができません。ゾコーバを飲む期間だけ止めてもいい薬ではないからです。また、どんな薬でも胎児への影響はあって、安全なものからやめておいた方がいいものがあります。マウスの実験で確認されていますが、人体にも影響があるのではないかと考えられています」
「ゾコーバ」の長所として、宮下教授は以下の2点を挙げています。
▼オンライン診療で処方できる
▼発熱外来のひっ迫を防ぐ
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「インフルエンザとの同時流行が懸念されていて、発熱外来が大変なことになりうる。第7波では、若年者が病院にも受診するケースが相次いで医療ひっ迫が相次ぎました。オンライン診療で処方することで医療ひっ迫が回避できるのはとても大きいことです」
またウイルス量を1/30程度に減少させることができるという結果から、宮下教授は「感染拡大防止にも繋がる」と話しました。
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「ウイルス量を減らすことは、ほかの人への感染を防ぐことができます。感染した人の隔離期間を短縮できるかもしれません。またウイルス量が減ることで、重症化リスクが減り、入院リスクも軽減でき、病床ひっ迫を防ぐことができると考えられます」
宮下教授は「ゾコーバ」について、待ちに待ったゲームチェンジャーだと考えます。
【関西医科大学附属病院・宮下修行教授】
「インフルエンザとの比較が良くなされてきました。インフルエンザとの違いはいつでもどこでも手に入る薬がなかったのが新型コロナの弱点でした。ゾコーバが供給量の問題をクリアでき、広く出回るようになれば、感染症の分類が2類から5類に変わるのではないかと考えています」
(関西テレビ「報道ランナー」 11月23日放送)