「パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは“違憲状態”」 『同性婚』裁判で東京地裁が下した初めての判決 関西や全国の同性カップルたちに“希望” 2022年11月30日
同性婚を認めないのは憲法に違反するとして、同性カップルたちが国を訴えた注目の裁判。全国3例目となる東京地裁の判断は、「法制度がないことは違憲状態」という“踏み込んだ”ものでした。
■札幌、大阪…全国で行われる裁判
「同性どうしの婚姻を認めないのは“憲法違反”」だとして、同性カップルたちが全国で一斉に国を訴えた裁判。
11月30日、東京地方裁判所は「同性愛者がパートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、個人の尊厳に照らして“違憲状態”にある」という初めての判断を下しました。
【原告 小川葉子さん(50代)】
「私たち同性間のパートナーに『不都合があるということは分かってるよ』ということも出てきましたので、そういう意味では少し安心できたかなと」
【原告 かつさん(30代)】
「納得できない部分もあったんですけど、希望の持てる判決内容だったのかなと思います」
判決を見守った人の中には、同性婚の実現を求める集団訴訟で、関西の裁判を戦っている2人の姿がありました。
【関西訴訟の原告 坂田麻智さん】
「また大阪みたいな判決だなと一瞬聞きながら思っていたので、最後の最後で良い方向にいって良かったなと思います」
京都で暮らす坂田麻智さん(43)とテレサさん(39)は、連れ添って14年。近所でもカップルとして公認の2人ですが、関係を法的に証明するものはなく、どちらかが病気になった際にパートナーとして手術や入院の手続きができるのかなど、不安を抱えています。
2021年3月、札幌地裁が下した全国初めての判決は、“法の下の平等を定めた憲法に違反する”というもので、「同性カップルが婚姻で生じる法的効果の一部すらも受けられないのは差別にあたる」と指摘しました。
しかし、2人が原告として臨んだ2022年6月の大阪地裁の判決は、「不利益があっても他の制度である程度解消されている」と、憲法違反にはあたらないという判断でした。
【坂田麻智さん】(2022年6月)
「国が逃げているからこそ、この司法で、立法を促すような判決になってほしかったと心から思っていましたし、本当に本当に残念です」
それからおよそ半年。京都の家を訪れた取材班を出迎えてくれたのは、赤ちゃんを抱いた麻智さんとテレサさんです。
友人から精子の提供を受けて妊娠したテレサさんが、この夏に赤ちゃんを出産しました。“2人で子供を育てる”という長年の夢をかなえて幸せを感じる一方、麻智さんは、法的には赤ちゃんの親ではありません。
【坂田麻智さん】
「(出生届に)私には書くところはないと。書けるのは母のところの欄にテレサだけ。『私は名前を書けないんですか?』というと『男性ではないので書けない』と。何をしても一緒の扱いにはならない」
【坂田テレサさん】
「3人家族っていうシンプルなことなのに、なんでシンプルにできないんだろうなって」
子供が生まれてから、手続きの度に壁にぶつかる2人。これまで以上に、“法的に家族として認めてほしい”という思いが強くなりました。
■東京地裁の判決
11月30日の判決で、東京地裁の池原桃子裁判長は、「婚姻の自由」を保障した憲法24条の1項は、同性間の婚姻を含めるとは解釈できないとしつつも、「家族としての法的保護を受け、社会的公証を受けることができる利益は、男女の夫婦と変わらない実態を有する生活を送る同性愛者にとっても同様であるということができる」としました。
そして、パートナーと家族になるための法制度が存在しないことは、人として生きていく上での重大な脅威、障害であり、個人の尊厳に照らして合理的な理由があるとは言えず、憲法24条2項については「違憲状態である」と、声を震わせながら述べました。
その上で、どのような法制度にするべきかは「立法府に裁量があり、十分に議論・検討がされるべきである」としました。
【弁護団】
「今の状態は憲法に違反していると明言したわけですから、国会では何らか、この点を解消するための施策を、法改正に向けてしなければいけないということとイコールなので」
【原告 大江千束さん(60代)】
「『同性カップルが家族である』というくくりも入ってきたと思います。これから立法府の方で、どんどん審議をしていただきたい」
今回の判決を受け、立法府として国はどう動くのでしょうか。
■「憲法違反の状態ではあるが憲法違反ではない」
そもそも憲法24条2項では「結婚や家族について、法律は、個人の尊厳を守るために制定されなければならない」とされています。
東京地裁は30日の判決で、現状、同性パートナーと“家族になる法制度”がないことは「個人の尊厳が守られておらず憲法違反の状態」との判断を示しました。
国会に対して何らかの立法措置を促したと解釈することもできます。
一方で、どのような“家族になる法制度”が必要かについては、今の婚姻制度に同性同士を含める以外の方法もあり得るとして、「同性婚を認める法律がないことは憲法違反とは言えない」としました。
「尊厳は守られていない」が、「法律として、同性婚以外の手段がある」として、現状を「違憲ではない」と判断した東京地裁。
今回の判決について、報道ランナーに出演する菊地幸夫弁護士は、「中途半端なやり方」と辛口の評価です。
【菊地弁護士】
「『違憲状態』だというのであれば、端的に『憲法違反』と言い切った方がよほど分かりやすいと思うんですけどね。『違憲状態』というのは、半歩前進っていう便利な用語なんです。一歩までは行かない、いかにも中途半端なやり方。これを繰り返しても実現まではまだ遠い。大きな一歩を踏み出しても良かったんじゃないかな」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月30日放送)