北新地放火殺人事件から1年 犠牲者多くが“職場復帰”目指し通院の『無職』 遺族が「十分な給付受けられない」恐れ…犯罪被害者への『国の支援』制度見直し訴え 2022年12月06日
大阪・北新地のクリニックで26人が犠牲となった放火殺人事件から、間もなく1年を迎えます。
12月6日、遺族がコメントを発表し、犯罪被害者らに対する国の支援制度が十分でないとして、制度の見直しを訴えました。
■事件から1年 遺族の訴え
2021年12月、大阪・北新地の心療内科クリニックが放火され、医師や患者など26人が犠牲となりました。
事件では谷本盛雄容疑者(当時61)が殺人などの疑いで書類送検されましたが、その後死亡し、不起訴となっています。
事件から1年となる12月17日を前に、遺族や弁護士でつくる「犯罪被害補償を求める会」が12月6日に会見を開き、遺族の心境をつづったコメントを発表しました。
【事件で夫を亡くしたAさん】
「この一年あっという間でした。たくさんの人に助けられ生きてこられました。でももう最愛の夫はこの世界のどこにもいない。この世の誰よりも大切な人はどこを探してもいないのです」
また、別の遺族が訴えたのは、想定外の事態で発生した経済的負担の大きさです。
殺人事件などの遺族に対して、国は「犯罪被害者等給付金」という補償金制度を設けていますが、金額は320万円からおよそ3000万円と幅があり、被害者の収入などで決まります。
今回の事件では、被害者の多くが職場復帰を目指して通院していたため、当時「無職」と見なされ、遺族への給付金が大きく減らされる恐れがあるのです。
【事件で夫を亡くしたBさん】
「夫の命の価値を被害に遭ったその瞬間の『収入』で計られ、あなたの家族の価値は軽いのだと言われたように思いました」
「犯罪被害補償を求める会」は、現在の給付金の支給条件などは被害者に寄り添っていないとして、国に制度の見直しを訴えています。
■「犯罪被害者等給付金」の制度とは
現在、日本には犯罪の被害者や遺族に一時金として補償を給付する「犯罪被害者等給付金」の制度があります。しかし、給付額は320万円~2964万5000円と幅広く、2021年度の平均は665万円でした。
給付額に幅があるのは、被害者の年齢や事件前(過去3カ月)の収入、遺族の人数などから給付額が算出されるためです。
被害者遺族側が求めているのは、「自賠責保険と同様の補償」です。
交通事故の被害者に適用される自賠責保険の最高額は、「犯罪被害者等給付金」の制度とほぼ同じ3000万円ですが、2018年度の給付平均は2400万円でした。ここには葬儀費(100万円)や、得られたはずの将来の収入である「逸失利益」、遺族の人数による慰謝料が含まれています。
自賠責保険は民間の保険ですが、加害者が加入していなかった場合、国が同様の金額を給付するという仕組みがあります。
また、国の制度以外に、独自の被害者支援制度を設けている自治体もあります。
兵庫県明石市では、加害者から賠償金が支払われない場合、市が代わりに最大300万円を給付します。
犯罪被害者の遺族の、その後の生活をどう支えてゆくべきか。誰もが犯罪被害者の遺族になる可能性はあります…さらなる議論が求められます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月6日放送)