「たった5羽の死で4万羽を殺処分」養鶏場は今・・・相次ぐ鳥インフルエンザで卵の値段も高騰 生産者へも休業補償などなく 鳥と生産者をどう守るのか 2023年01月20日
スーパーでは値上げラッシュの中、ついに”物価の優等生”とも言われてきた「卵」まで高騰。
【買い物に来た人】
「50円くらい(値段が)上がってるんと違います」
「卵はいりますよね・・・我慢ですよね」
【フレッシュマーケットアオイ・内田寿仁社長】
「相場的には過去30年で一番高いと聞いています」
「JA全農たまご」によると、去年の1月と比べると1.8倍、130円(1パック)も値上がりしているんです。
さらに、卵だけでなく安さが売りの鶏肉も高騰…
その原因は長引く原油高によるエサ代の高騰に加えて、今、深刻になっている”鳥インフルエンザ”のまん延です。
去年10月に岡山県で確認されて以降、全国で60例近くの感染を確認。
18日は滋賀県内の養鶏場でも致死率の高い高病原性鳥インフルエンザが確認され、4000羽が処分されるなどこれまでに殺処分された鳥の数は過去最多の1100万羽を超えました。
兵庫県たつの市にある養鶏場では、去年11月、鳥インフルエンザが確認され、飼っていたニワトリおよそ4万羽が殺処分されました。
【竜野養鶏センター・中山晋吾代表取締役】
「前日に2羽死んどった。今度はここ死んどったとしたら隣ですわ。それでおかしいなあと思って」
2日立て続けに5羽が死んだことを受け、明らかになった鳥インフルエンザ。
しかし、たった5羽でも感染を広げないため法律に基づき、敷地内の別の鶏舎の鶏までもが殺処分の対象となりました。
【竜野養鶏センター・中山晋吾代表取締役】
「さみしいですよね、仕方ないと言われれば仕方ないんだけど」
—Q(感染の)理由とかは分かってない?
【竜野養鶏センター・中山晋吾代表取締役】
「この向こうはね、土手があって川があるんですわ」
鳥インフルエンザのウィルスは多くは渡り鳥を介して運ばれるとされています。
川や池に生息するカモなどの野鳥に感染し、さらに、ネズミや小鳥などを介して、養鶏場の中へ持ち込まれる可能性が考えられます。
県の指導によって、2月までは鶏舎に鳥を入れることができないため、当面、休業状態です。
国からは処分した鳥の数に応じた手当てがもらえますが、休業補償などはなく、パートなど一部の従業員には事実上の解雇を言い渡すしかありませんでした。
【竜野養鶏センター・中山晋吾代表取締役】
「総勢12、13人が仕事しとったのが、その後3羽5羽死んだ。結局鳥インフルエンザが発生したら、もう次の日が仕事なんもないもんね。怖いわね。これ2回目こんなことになってと思ったら、とてもやないけどもう立ち直れんのんちゃうかなと思ってね」
この日は、取引先の男性が養鶏場を訪れていました。
実は、この男性が働く会社の養鶏場でもおととし、鳥インフルエンザが発生し、15万羽が殺処分されました。
感染に強いとされる、窓のない、最新鋭の「ウインドウレス鶏舎」にも関わらず、感染を防ぐことはできませんでした。
【藤橋商店営業部・八木勇樹部長】
「やっぱりそのインフルエンザの菌っていうのがまん延してしまってるんじゃないかな」
【竜野養鶏センター・中山晋吾代表取締役】
「ウインドウレス鶏舎できちっとすれば鳥インフルエンザならん、って言うんやったら、私はもうそっちの方に絶対するけれども。結局今の場合はウインドウレス鶏舎でも出ているよ。今はそれしたからっていって絶対っていうのはない状態だからね」
【藤橋商店営業部・八木勇樹部長】
「うちらの従業員も朝行くたび、もうシーズンなったら朝ヒヤヒヤだと」
目に見えないウィルスだからこそ、現状では、確実に感染を防ぐ手立てはありません。
こうした中、鳥インフルエンザから鳥だけでなく生産者や世話をする人たちも守ろうと、新しい研究が進んでいます。
【京都府畜産センター・加藤あかね主任研究員】
「ここに巻いてますね、全然わからないですね~」
京都にある「福知山市動物園」で使われていたのは、野鳥などからの感染を予防するために開発された除菌剤「ヨドックス」。
火山でとれる軽石に除菌効果のある「ヨウ素化合物」を吸着させたもので、一般的に撒かれている「消石灰」に比べて自然に馴染みやすく、効果も4倍続くというものなんです。
【福知山市動物園・二本松俊邦園長】
「『消石灰』は見てくれが悪いんでね。それから2週間に1回撒くときに飛散するのが大変、これは飛びませんからね」
【京都府畜産センター・加藤あかね主任研究員】
「できたら負担が少ないようなものと、効果が持続するのがキーポイントとして考えておりまして。地域全体の防疫レベルをあげていく、近隣の養鶏農家等にも波及がないようにということですごく大きなことであると思います」
鳥の命と私たちの生活を守るための攻防がきょうも続いています。
–Q 生産者の方にとっても大打撃となっているんですね?
【加藤さゆり記者】
「今回取材して思ったことは、経営的な打撃はもちろんですが、精神的にも一瞬で危機になってしまうところです。目の前で4万羽が殺されてしまう精神的ショックと収入が絶たれてしまう不安があると思います。取材した中山さんも一時は辞めようかと思ったと話されていました」
「中山養鶏場では、去年11月養鶏場で5羽の死が確認され、鳥インフルの陽性確認で4万羽が即日殺処分になりました。2月までは閉鎖中で、2月以降徐々に運営開始しても、売れる卵を産み始めるにはさらに3カ月ぐらいかかるため、出荷できるのは5月ごろになると。月の売り上げが1200万円くらいあったのが、今はゼロ。国の貸し付け制度があり活用されていますが、人件費などもギリギリだということです」
–Qなぜ鳥インフルエンザは、ことし多いのでしょうか?
【加藤さゆり記者】
「鳥インフルエンザに詳しい京都産業大学の高桑弘樹教授は、今年は特に野鳥の感染が多いと話しておられました。野鳥の感染が多いと、養鶏場に持ち込まれるリスクも高まり、増えているのではないかと言われています。しかし本当の原因はわからないとのことです。こんなに殺処分しなくていいのではと思われるかもしれませんが、ウイルスはいっきに封じ込めるのが鉄則なので法律に基づいて行うのが今できる最大限のことだということです。人への感染も気になりますが、日本国内では事例ないということです」