欧州で大人気「ハンドボール」 日本でも“新プロリーグ”のはずが…発足前から分裂状態 もめにもめ選手も困惑 新リーグで“ムササビシュート”決められるか? 2023年01月26日
選手たちが激しくぶつかり合う様子から「空中の格闘技」と呼ばれる「ハンドボール」。スピーディーな試合展開と、ダイナミックなシュートが魅力で、ヨーロッパではサッカーに次ぐほどの人気を誇るスポーツです。
日本でも人気を集めようと 2024年から新たに、プロリーグの開始が予定されています。
しかし、新プロリーグが始まる前に問題が勃発しています。一体、何が?激震のハンドボール界を取材しました。
■堺市が拠点 男子ハンドボールクラブ「TeToTeおおさか堺」
堺市を拠点に活動する男子ハンドボールクラブ「TeToTeおおさか堺」。 2021年、大阪では41年ぶりに誕生したチームです。 メンバーはわずか7人。 元日本代表の監督の指導の下、トレーニングを積んでいます。
ひときわ明るいチームのムードメーカー 島田十皐(しまだ じゅうざ)選手(22)。
島田選手の十八番は「ムササビシュート」。体を大きく横に倒して放つこのシュートは、 打てる選手が少ない貴重な武器です。
昼間は大工の見習いとして働く島田選手。 まだまだ本格的な作業はできませんが 日々、仕事に励んでいます。
中学1年からハンドボールを始め、 大阪府選抜に選ばれるなど第一線で活躍してきました。 その後は大学に進学し、ハンドボールを続けるも中退…。 就職後は現場仕事を続けてきました。
【 TeToTe 島田十皐選手】
「ハンドボール自体はやっぱりめっちゃ好きなんで。大変やなとか忙しいなと思ったけれどやっぱり自分が選んだ道やし」
ハンドボールへの想いを忘れられず、 TeToTeのトライアウトを受けました。
2021年、日本ハンドボールリーグは、落ち込む入場者数を改善しようと、 プロリーグ化を目指すことに…TeToTeが結成されたのも、このタイミングを狙ってのことでした。
TeToTeのGM(ゼネラルマネージャー)の小坂哲英さんは、新プロリーグ参入の要件を満たすため、ホームアリーナの確保などに奔走しました。
【TeToTe 小坂哲英GM】
「2021年の4月に竣工された新しく建てかえられた大浜体育館です。これを私どものホームアリーナとして申請しています。(収容人数は)1500人以上あるし、選手と観客との動線を分けられるとか、興行としての試合できるか、とか(参入要件は)全部クリアしています」
このかいもあり、2022年9月、 TETOTEは新プロリーグへの参加が内定しました。
【TeToTe 島田十皐選手】
「もともとプロのリーグでやってみたいという思いはありました。小学校からの夢が有名人なので。それが僕の一番でかい目標なので。何かしらで有名人になりたい。今近くに有名になれるチャンスがハンドボールなのでハンドボールで有名になりたいと思っています」
この夢が島田選手の原動力です。しかし…。
■新リーグ結成でいきなり分裂の危機…なぜ?
想定されていた新プロリーグへの参加チームは 現行リーグの12チームとTeToTeを含む2つの新チームだけだったのです。
ふたを開けてみると新リーグに名前を連ねたのは、現行リーグ12チームのうち7チームだけだったのです。
日本代表を多く抱える「ジークスター東京」など5チームは手を上げませんでした。
新リーグに人気・実力のあるトップチームが参加しないおそれがあるのです。リーグは分裂状態の危機に陥りました。
【TeToTe 小坂哲英GM】
「『何やってんの?』みたいな状態はすごく憂いています。何やってくれてんねん、みたいな」
一体なぜ、こんな事態になったのでしょうか…。
新プロリーグのリーダーに任されたのは、バスケットボールのBリーグの立ち上げを成功させた葦原一正さん。
葦原さんは自身のノウハウを生かし、 アリーナの観客数や財務状況など プロとしての高いリーグ参入要件を設けました。
【日本ハンドボールリーグ 葦原一正代表理事】
「今ハンドボール界は新たなステージに行くために本気でチャレンジしなくちゃいけないタイミングなのかなと思っています。参入障壁を下げれば下げるほど当然たくさんチームは入れますけど、それは(リーグの)成長速度を大きく変える話にも、当然つながっていく」
あえて高い参入要件を設けることで、 盛り上がる、質の高いプロリーグを作り上げようとしているのです。
一方…新リーグ参入に手を上げなかったチームの中には、日本ハンドボール協会の会長のチームも。
湧永寛仁会長は 外部から葦原さんを呼んできた張本人ですが、新プロリーグの構想に賛成はしていません。
【日本ハンドボール協会 湧永寛仁会長】
「やっぱり着実にっていうところ、いきなりホップでどんって行くのも一つのやり方かもしれませんが、地道に、歴史のあるチームも新しいチームもみんなで(新プロリーグへ)行こうというのが最後の思い」
湧永会長は高い参入要件により、 参加できないチームが生まれることに納得していません。
■“ハンドボールの未来”を思う気持ちは同じなのに…すれ違う協会とリーグ
協会とリーグのそれぞれのリーダー。 「ハンドボールを盛り上げたい」という気持ちは一緒ですが 意見は食い違っています。
【TeToTe 小坂哲英GM】
「協会とリーグが一体になってないっていうことは、多分明らかで隠しようもない事実。そこは僕ら現場からすると『何やってんの?』みたいな。“ハンドボールの未来”を創ろうとしているのに、上の2つ…日本の協会とトップリーグがうまくコミュニケーションを取れないって、恥ずかしいし、情けないし、選手らに申し訳ないよね…と」
新プロリーグの開始は2024年9月の予定ですが、 果たして間に合うのでしょうか…。
【TeToTe 島田十皐選手】
「日程とかも何度も延びたりしているんで、僕らもほんまに最終的にリーグに入れるんかという不安な思いも最初あって、みんな今後どうしていくか悩んだんですけど、試合に勝っていくことが僕らにできること。僕らにできることはしっかりやっていくしかない」
1月15日、TeToTeは人数が足りない中、学生たちの助っ人を入れての試合に挑んでいました。 激しい攻防を繰り返し、 島田選手も得意のムササビシュートでゴールネットを揺らしました。
先が見えない中、もがき続けるTeToTeの選手たち。 大観衆の前でプレーできる日は来るのでしょうか。
(2023年1月24放送)