国宝級発見が一挙に2つ 精緻な文様の「盾形銅鏡」・最大級2.37mの「蛇行剣」 ともに日本最大の円形古墳「富雄丸山古墳」から見つかる 2023年01月26日
奈良市内の古墳から見つかった剣。その長さは…なんと2メートル37センチ。人の背丈をはるかに超えるサイズだったんです。国内最大とのことですが、誰の古墳かはまだ分かっていません。「日本の歴史をひも解く大発見かもしれない」と期待が高まっています。
【記者リポート】
「奈良市にあるこちらの古墳で、専門家も見たことがない“あるもの”が見つかったといいます」
奈良市にある国内最大の円形の古墳「富雄丸山古墳」。ここで国宝級の発見が2つありました。
■研究者が驚きの声を上げる大発見
【出土時の映像】
「何やこれ」「だ龍鏡や!」「えっ!」
驚きの声が上がる中、出てきたのは、盾の形をした鏡です。長さ64センチ、最大幅31センチ。真ん中には、ひもを取り付ける部分があり、表面が磨き上げられていることなどから鏡と判断されました。
【奈良市教育委員会 村瀬陸学芸員】
「盾の形をしている。これ自体も初めてのもの。非常に驚いた。取り上げてパッとひっくり返して裏を見たときは、言葉が出ないぐらいの驚き」
さらに専門家を驚かせたのは、片面に施されていた文様です。神や霊獣をあしらい、精緻な模様で一面埋められていて、高度なデザイン力で非常に芸術性が高いということです。これまで出土例がなく、新たに「だ龍文盾形銅鏡(だりゅうもんたてがたどうきょう)」と命名されました。
そしてもう一つ、
【奈良県立橿原考古学研究所】
「おそらく最古例で最大例のものが、日本最大の円墳から出た」
長さなんと2メートル37センチ。刀の形状が蛇のように蛇行していることから「蛇行剣(だこうけん)」と呼ばれる鉄剣です。X線で撮影したところ、つなぎ合わせたものではなく、1本の剣であることが判明しました。
■“鏡”と“剣” 「いずれも金属工芸の最高傑作」と専門家語る
鏡も剣も、いずれも国内で作られたものだとみられます。
【奈良県立橿原考古学研究所 岡林孝作副所長】
「こんなものができるということを古墳時代人が示した。いずれも金属工芸の最高傑作だと思う。そうしたものが一挙に2つも出ましたので、大変驚いている」
■古墳に埋葬された人物は、「ヤマト政権でかなり有力な立場」では
【記者リポート】
「まさにこの場所で、剣と鏡が見つかりました。この場所に埋葬された人物は、一体誰を守っているのでしょうか」
今回出土した場所は、丸い古墳から突き出した「造り出し」と呼ばれる部分です。専門家によると「造り出し」には、古墳の中心に眠る人物の側近だった人や家族が埋葬されることが多いといいます。
【奈良大学 豊島直博教授】
「特別な武器と特別な鏡をお墓の中に入れて、生前自分がやっていたように、死後の世界においても古墳の主人公を守り続ける。そんなイメージを持つことができると思います」
死後の世界でも守られているというこの墓の主とは?富雄丸山古墳が造られたのは、4世紀後半。ヤマト王権が国土統一を進めていた時期です。
【奈良大学 豊島直博教授】
「この古墳が築かれていた地域を治めていた王様とか。古墳の規模が円墳としては大きいので、場所がヤマトの国・奈良にありますので、中心に埋葬されている人は、ヤマト政権の中ではかなり有力な立場にいた人じゃないかなと思っています」
■発見された“鏡”と“剣”、そして古墳に眠る“人物”の正体は?
今回出土した、2つの出土品について整理します。
まず一つ目、長い剣。「蛇行剣(だこうけん)」といいます。「蛇」という文字が使われていますが、蛇がうねるような形をしているため「蛇行剣」といいます。今回見つかった「蛇行剣」は、古墳で見つかったものとしては“最大で最古”のものだということです。
もう一つ、「だ龍文盾形銅鏡(だりゅうもんたてがたどうきょう)」という鏡です。文様面に注目していただくと、「だ龍」という神や霊獣などの文様があしらわれていて、大変精巧で、“国内手工技術の最高傑作”といえるということです。
さらにすごいことは、どちらも“国産”だということです。“産業革命”を裏付ける可能性があるのです。4世紀にこのレベルのものを国産できていたのは、専門家も驚くことでした。
そして、出土した「富雄丸山古墳」には誰が埋葬されているのか。剣と鏡は、円墳から突き出した「造り出し」と呼ばれる部分で発見されました。「造り出し」には一番偉い人ではなく、中心に眠る人の側近クラスが眠っていると考えられます。そこからこれだけすごい品が出土したのですから、中心に眠る人はとても“エラい”人物なのではないかと考えてしまいますが、そんなに考古学は単純なものではないそうです。古墳の大きさ、場所、形といったものを総合的に考える必要があります。では誰が埋葬されているのか?
「富雄丸山古墳」の担当者である奈良市教育委員会・村瀬陸学芸員は、「中央政権の重要な役職に就いていた有力者」、いわば大臣のような人なのではないか言っています。
他にはこんな見方も。考古学が専門の奈良大学・豊島直博教授は、「一代だけがすごく強かった孤高の王様」、つまり知事のような存在ではないかと分析されています。
さて今回の出土品によって、どんな歴史の一端を読み解くことができるのでしょうか。
(関西テレビ「報道ランナー」 2023年1月26日放送)