【密着取材】 “舌がん”乗り越え 堀ちえみさん“復活コンサート” 当初はしゃべることさえ不自由…家族との日記に励まされ 猛練習の“舞台裏”に密着 「生きていてよかった」 2023年02月20日
2018年にステージ4の舌がんを患い、舌の移植手術をした堀ちえみさん。もう一度、歌を歌いたい。その夢をかなえるため「復活コンサート」を2月15日に開催しました。その舞台裏を取材しました。
■2月、ファンが待ちに待ったコンサート開催
デビューから40周年を迎えた堀ちえみさん。舌がんを乗り越え6年ぶりに、2月15日、ライブを行いました。
コンサートの日の朝、会場の前には、ちえみさんのファンの親衛隊の姿がありました。
【堀ちえみ親衛隊の皆さん】
「ちえみちゃーん!」
「ファイトの塊、ちえみちゃんですので復活してくれるって信じてました」
皆さん、デビュー当時のファン。みんな、ちえみさん「復活の日」を待ちわびていました・・・
■2019年にステージ4の舌がんに…
大阪府堺市出身の堀ちえみさん。14歳の時、オーディションで優勝し芸能界入りし、「花の82年組」として華々しくデビュー。ドラマをはじめバラエティなど関西の番組でも活躍しました。
日常に、異変を感じたのは2018年。最初は口内炎だと思っていた痛みは日に日に悪化。年が明けて駆け込んだ病院での診断はー。
【堀ちえみさんのブログ(2019年2月19日)】
「私、堀ちえみは、口腔がん(左舌扁平上皮がん)と、診断されました。いわゆる舌がんです。ステージは4です」
ちえみさんは「ブログ」でがんを公表しました。
手術は11時間に及び、舌の6割以上と首のリンパに転移した腫瘍を切除。新たな舌をつくるめ、太ももの皮膚(と皮下組織)を移植するという大掛かりな手術となりました。
【堀ちえみさん】
「やっぱり諦めていたし、家族は私から歌を取ると、何もなくなってしまうから、頑張って歌ってほしいという気持ちはあったと思うんですけど、はっきり正直なところ、このような状態の私に『歌え』って…すごい酷だなって」
■支えは・・・娘との「一日1ページ」日記の“前向きな”言葉
さらに、退院前の検査で食道がんも見つかり、2カ月で2回の手術を受けることになりました。それでも日記には、前向きな言葉が並んでいました
【堀ちえみさんの日記】
「ドンと構えていないとー」
当時の様子を記した日記を見せてくれました。
【堀ちえみさん】
「上の娘が一日1ページ日記っていうのを、『これをお母さんに渡すから、私も同じものを持っていて、これを一緒に書こう』って言われたんですね、『お互いに時々交換して見せ合いっこしよ』って言われて…」
心が折れそうな時、ちえみさんを支えたのは「家族」でした。
【堀ちえみさん】
「(娘が)私も読むってなると、お母さんは意識して前向きなことを書くと思ったから『実は、この日記の目的はお母さんを前向きにさせるために渡したんだ』って聞いて、じ~んときた、ああ、そうだったんだって…」
そして…堀ちえみさんは6年ぶりとなるステージに戻ってきました。衣装はあえて「昭和のアイドル」のふりふりドレスです。
【堀ちえみさんがステージでトーク】
「コツコツやっていけば、歌うことも不可能ではない…自分の力を信じて頑張って自分なりに来ました」
ステージに立てるようになったちえみさん。しかし、ここに至るには「大きな壁」がありました。
■歌う以前にしゃべることさえ不自由に 猛練習で「歌いダコ」
【2019年 術後の動画】
「きょうは3月6日水曜日です。術後12日がたちました」
生きるために…食事がしやすくなるよう、厚くなった舌は、歌を歌う以前に、しゃべることさえ不自由でした。
そしてリハビリを続ける中で、歌手・堀ちえみとして「歌うこと」が夢となりました。
手術から半年後、歌うことを再開。自宅で、リモートでボイストレーナーに教わりながら、練習です。
【堀ちえみさん】
「♪ラ~ナ~ラ~ナラナラナラナ~」
【ボイストレーナー】
「『ラー』の時、(舌が)ひっこんじゃうと、声の出る道を塞ぐことになっちゃうんですよね」
【堀ちえみさん】
「のばすと(舌が)盛りあがってしまうので…」
【ボイストレーナー】
「舌の厚みとか舌根の動きはどうしようないですもんね」
【堀ちえみさん】
「ご飯を食べる時の舌は分厚いんですって。しゃべることを優先して舌を薄く作ってしまうと、ご飯を口から食べられないんで…」
新たにつくられたちえみさんの舌先には、神経がつながっていません。そのため、残った根元の筋肉を使って舌全体を動かさなければならず歌を歌うこと自体が至難の業でした。
【堀ちえみさん】
「今後歌っていく中で方法は何か自分自身が見つけられたらいいなと思っていて」
【ボイストレーナー】
「ちえみさんだったら見つけそうですもんね」
【堀ちえみさん】
「ちょっと『変えていこう』と思ったら変えていけるんじゃないかなとは思っています」
発音が上手くできない言葉は、何度も何度も繰り返し練習。ちえみさんのノートには、歌詞が見えなくなるほど発声のポイントが書き込まれています。
バンドメンバーと音合わせをしているちえみさんメンバーの中には、15年前、コンサートに参加していた白山貴史さんがいました。今回、音楽総合プロデューサーとしてちえみさんを支えます。
【音楽総合プロデューサー白山貴史さん】
「声色とかは少し変わっているかもしれませんけど、不思議なことにキーは上がっています。声出ています。勝手に力もらえるような感じがして。歌ってるのを見ているだけで、僕も何かファンなんでしょうね、テンション上がっているといいますか」
コンサートまで1週間。舌に「歌いダコ」ができるほど練習してきたちえみさんは直前まで、入念なチェックを行います。
【堀ちえみさん】
「諦めようと思うのは簡単だけど諦めないで良かったって思う。病気してから、アイドル時代の自分に励まされた場面って今までいっぱいありました。そういう意味でも、この40周年ってファンの皆様にもですけど、過去の自分にも『ありがとう』って、そういう気持ちで歌いたいと思います」
もう一度歌いたい。その想いをコンサートに捧げます。
■舌がん乗り越え…6年ぶりに復活! 熱唱25曲 ファンも❝涙”
生きることを選び、歌うことを夢にした堀ちえみさん。1300人の観客に想いを届けました。観客には、ちえみさんを支え続けた家族の姿も…
復活コンサートで、ちえみさんはアンコールを含めて25曲、全力で歌い切りました。
【ファンたち】
「歌も声出ていたし、これまでの努力が全部芽が出たなって…(涙)」
「頑張り屋さんなちえみちゃんに会えて勇気・元気をもらいました。昭和生まれの女性は根性あるなと」
【親衛隊の皆さんは】
「よく頑張ったと思います。ほんとにちえみちゃん強いなと。『堀ちえみ親衛隊』をやってこれてよかった」
「みんなに元気をあたえてくれるアイドルだなって思いました」
【堀ちえみさん】
「歌うことを一度は手放したけど、歌って良かった。歌い続けて良かった。生きててよかった」
この日、56歳の誕生日を迎えた堀ちえみさん。これからも歌い続けます。
(2023年2月16日放送)