若者を危険が取り巻く「グリ下」 問題多発で『防犯カメラ』設置 未成年の飲酒や性犯罪、オーバードーズなど 「見守る」ためも“居場所”はどうなる? 2023年03月02日
さまざまな事情を抱えた若者たちが集まるという、大阪・ミナミの通称「グリ下」。トラブルが後を絶たないことを受け、3月2日、防犯カメラが設置されました。“居場所”を見守ることに、大人も若者もそれぞれの思いを抱えています。
大阪・ミナミの真ん中、グリコの看板のすぐ下に通称「グリ下」はあります。2021年6月ごろから毎日、数十人の若者が集まっています。
【グリ下に集まる若者 2022年1月取材】
「1歳の時に出て行った父親、養育費払えよ」
「アル中の父親、私に缶ビール投げるのやめろ」
「私、児相(児童相談所)出てから、ここ、来始めたかも」
「私も、児相出てからここに来た」
「私は同じ家出経験の子に会えたらいいなと思った」
「同じ“毒親”悩みの関連で」
一人一人違う生きづらさを抱える若者が集まるこの場所に、3月2日、大きな変化がありました。警察や商店会などが、防犯カメラ設置をしたのです。
【大阪府南警察署 前田時彦署長】
「子供たちが、事件や事故に巻き込まれないよう、街頭防犯カメラと広報の横断幕を設置することになりました」
「グリ下」では未成年の飲酒やたばこが常態化し、いわゆる「パパ活」をめぐる性犯罪も発生。市販薬などを過剰摂取する「OD(オーバードーズ)」も大きな問題です。
【少女(14)】 「みんなでパキった(=ハイになる)方が楽しいです。もう宇宙見えるっす」
【少年(17)】 (Q.ODで病院に運ばれる子は?)「いますよ、運ばれる子は。この前心臓止まった子もいるし、夢と現実が区別できない子もいる」
このような状況を受け、警察も去年からの約1年間で1650人に声掛けをして、行方不明届が出ている子供44人を保護するなど、警戒を強めてきました。
そして次の一手となったのが、防犯カメラの設置です。映像は警察署でいつでも確認でき、暴行や窃盗事件などが起きても、すぐに対応できます。
【大阪府南警察署 前田時彦署長】
「子供たちをしっかり見守って、安全で安心な街・ミナミを築いていきたいと思っています」
若者たちを“見守る”ためのこの防犯カメラ。しかし若者たちの受け取り方は違っています。
【少年(17)】
「なんかいや。見られたら恥ずかしいじゃないけど、みんなで遊んでいるところを、ずっと監視されてるのもちょっと気分悪い」
【少年(16)】
「(見守りは)建前だと思うんですけど、ぶっちゃけ。未成年が多いから。たばこ吸ったり、お酒飲んだりとかしてるみたいな。どっちかっていうと、そっち見るためなんじゃないんかなって思うけど」
【少年(17)】
「逆にカメラがついて監視されてる感が出て、あそこにたまりづらくなって、ドン・キホーテの所とかにたまったりする子がいて、そっちにたまったりしたら店に迷惑掛かったりするじゃないですか」
防犯カメラによって若者たちの“居場所”は失われてしまうのか。
防犯カメラを設置した側の大人も悩んでいます。
【道頓堀商店会副会長 千房株式会社 中井貫二社長】
「街の防犯を図る上で、必要なことだというふうに思います。けれども(グリ下の)子たちにとって大切な場所を、防犯カメラを設置することによって、なくしてしまうっていうのは、ちょっと寂しい部分もあるなというふうに思うんですね」
若者が新しい“居場所”を求めたときに、力になれるよう動いている人がいます。田村健一弁護士(42)です。これまで田村弁護士は「グリ下」から抜け出したい若者を、相談に乗ってくれる経営者たちに会わせてきました。
【飲食店経営者】
「(人生の選択は)楽な方に行くじゃなく、楽しい方を選びましょうって。しんどい方に行きがち。じゃなくて、どっちか自分が笑える方に行こうって感じ」
【「グリ下」から抜け出したい若者】
「今まで、楽して笑う方選んじゃって、それで今こうなっちゃってるのかなって」
【田村健一弁護士】
「心ある大人がこれだけいるんだよと分かると、悪い大人ばっかり見てきてるんで、本当はもっといい大人沢山いるよってところを見せられる。説得力があると思う」
防犯カメラの設置を受けて、田村弁護士は、商店会の経営者や精神科医など、さまざまな分野の人と共に、仕事や住む場所など、あらゆる悩みごとの相談を受けるチームを作ろうとしています。
賛同したお好み焼き「千房」の社長は、自ら話を聞き、アルバイトに採用したり、寮の部屋を貸し出したりすることを決めました。
【道頓堀商店会副会長 千房株式会社 中井貫二社長】
「(道頓堀)商店会として、あそこに防犯カメラを作って、(犯罪などを)なくすんだっていう、それだけで終わってしまっては絶対いけないな、というふうに感じましたし。こういう形でお手伝いができるんだったら、『喜んで』という感じですね」
防犯カメラと同時に設置された横断幕には「安心してや。カメラで見てまっせ!」の文字。防犯カメラの設置で「グリ下」の若者の“居場所”はどうなるのでしょうか。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月2日放送)