和歌山市で15日、岸田首相が演説直前に爆発物を投げつけられた事件で、兵庫県川西市の無職・木村隆二容疑者(24)が現行犯で逮捕されました。木村容疑者は現場で首相をどのように狙ったのか、そして犯行を防ぐチャンスはなかったのか。多くのカメラが捉えた映像で検証します。
■防犯カメラなど10台以上の画像で検証 「現場に潜む危機」
岸田首相を爆発物で襲撃した木村隆二容疑者。一体どのようにして岸田首相を狙い犯行に及んだのか。
関西テレビは現場付近に設置された防犯カメラなど計10台以上の映像を検証。周到に岸田首相を狙う木村容疑者の姿と、「潜む危険」に気がつけたかもしれない、幾つかのポイントが浮かび上がってきました。
まず木村容疑者は事件現場となる雑賀崎漁港の近くまでは、バスで来たとみられることが運行会社への取材で分かりました。
【坂元龍斗フィールドキャスター】
「木村容疑者が降りたとみられるバス停です。この先に漁港があるのですが、この先に設置された防犯カメラにも木村の姿が映っていました」
事件現場から150メートルほど離れた飲食店に設置された防犯カメラの映像。事件発生のおよそ10分前、午前11時17分頃に捉えられたものです。
首相を乗せたとみられる車列が通り過ぎます。
そしてその直後、木村容疑者が現れます。この時、警護にあたっているとみられる男性のすぐ後ろをすり抜けて行きます。しかし、男性が振り返る様子はありません。
そしてその先、演説会場となる漁港の中に入った場所に設置された防犯カメラにもその姿が。大きなリュックを背負い、さらに紺色の手さげカバンと傘を持っています。
何度も手に持ったかばんの中身を気にしているように見えます。警察によると、この手さげカバンには、刃渡り13センチほどの果物ナイフが入っていたということです。
事件発生までおよそ9分、岸田首相が演説会場に到着します。にこやかに挨拶をした後、記念撮影などに応じ会場内を歩いている最中、画面の右上に会場に近付く木村容疑者の姿が…。
■聴衆の中に紛れ岸田首相の後をピッタリ 犯行直前の木村容疑者
別の角度の映像です。そのまま聴衆の中に紛れていく様子を捉えています。応援演説会場まで岸田首相の後をピッタリとつけて木村容疑者が行動していることが映像から明らかになりました。
その後、岸田首相は地元の海産物などを試食するなどし、事件発生までおよそ1分30秒の時点で演説用の台が設置されている場所へ移動を開始。
それに合わせるように木村容疑者もかばんの中を探るような様子を見せながら、岸田首相のいる方向へ歩いていきます。
そして…
銀色の筒のような物が岸田首相の近くに投げ込まれました。近くにいた地元の漁師らがまず木村容疑者を羽交い締めにします。手には銀色の筒のようなものをもう一個持っています。
近くにいた警察官らが加勢し抵抗する木村容疑者を取り押さえます。悲鳴も聞こえる中…「逃げて!」 避難を促す声がします。
この時点で筒のような物が投げ込まれてから30秒程がたっていますが、多くの人が逃げることなくスマートフォンで撮影するなど現場に留まっています。ようやく容疑者の周りから人が離れます。
そして、騒然とした状況の中…
「バーン!!」
筒が投げ込まれてからおよそ50秒たったころ、会場に響いたごう音。辺りは白い煙に包まれました。
■「黒い筒みたいなモノが目の前に飛んできた、ヤバい!と」
聴衆が逃げまどう現場で、木村容疑者は持ち上げられて会場から連れ出されていきます。取り押さえられた後は、抵抗することなく押さえつけられたままでした。
【目撃者】
「最前列にいました。ちょうど黒い筒みたいなのが、目の前に飛んできて。ヤバいと思って走って逃げました。子供もすごく泣いて、今もドキドキが止まりません」
【木村容疑者を取り押さえた地元の漁師】
「斜め左前に犯人らしき人が物を投げたのを確認した。投げて飛んでいる黒っぽいものを見たのでおかしいと思って気にしていたら、手元で何かをしている仕草があった。見た感じ何かを持っていたので、襲いかかったというか」
【木村容疑者を取り押さえた地元の漁師】
「3人で取り押さえなあかんぐらい抵抗していたということですよね。筒やった、落ちてるやつをわたしが拾って…。
(Q.拾ったのですか?)
それで警察の方に渡さないと…と持って行った。『放って逃げてくれ』と言われて。すぐ放って、私もそこから離れた」
さらに17日、木村容疑者が投げた爆発物とみられる銀色の筒が、現場から40メートル離れた倉庫のそばで見つかっていたことも新たに分かりました。
【雑賀崎漁協・濱田光男組合長】
「筒が見つからんもんでね、長いこと。(警察が)2日かけて、たまたまこの上にあったんや。15センチくらいの丸い金属が」
この事件で岸田総理は避難していて無事でしたが、筒は聴衆のすぐそばを通り過ぎたとみられ、一歩間違えれば大きなケガにつながっていた可能性もあります。
実際に爆発の際、何かの破片が当たってケガをした人も…
【破片が当たった人】
「10人くらい組み合って、犯人をつかまえるのに。そっち向こおうとして、バーンと大きな音がした。痛かったよ、破片が当たった時は」
(関西テレビ「newsランナー」4月17日放送)