今月15日から、軍と民兵組織との激しい衝突が起きているスーダン。アフリカ北東部、エジプトの南に位置する国です。もともとは、30年にわたり独裁政権が続いていましたが、2021年、軍と民兵組織がクーデターを起こし、両者で実権を握りました。その後、新政権樹立への協議が続けられてきましたが、民兵組織の軍への統合を巡り双方が対立。軍事衝突に発展しました。
内戦が激化するスーダンには、約60人の日本人がいて、避難させるために、自衛隊機が21日に日本を出発しました。どうやって日本人を助け出すのか、まず今、現地はどうなっているのでしょうか。
スーダンで医療支援を行っているNPO法人「ロシナンテス」の理事長で、医師の川原尚行さんに、現地から最新状況を伝えてもらいました。
川原さんがいるのはスーダンの首都・ハルツームです。21日、72時間の停戦について、民兵組織側が合意したと発表がありましたが、スーダンの国軍側が応じているものではありません。こういった状況ですが、現地の状況はどうなっていますでしょうか。
【川原尚行さん】
「明け方けっこう戦闘が行われて、激しい爆撃音などが聞こえました。今はおさまっている状況です。ただハルツームも広いので、私がいる地域はおさまっていますが、他の地域までは分かりません」
停戦に合意したと民兵組織は発表していますが、ここまで過去2回、停戦は失敗しています。今回、停戦への期待はいかがでしょうか。
【川原尚行さん】
「スーダンの多くの方が、この機会にハルツームの外に出ようとしています。ぜひ停戦を守ってもらって、スーダンの方に危害を加えないようにしてもらいたい。私たち日本人は自衛隊機が来ているということで期待しています。停戦の間に来ていただければと願っています」
武力衝突から1週間近くたちますが、街の様子はいかがですか?
【川原尚行さん】
「ちょうどラマダンの時期だったのですけれど、街を出歩く人も少なくなって、逃げ惑う人がいます。とにかく爆撃する音が恐怖です。近くに子供さんがいるのですが、子供が泣き声に変わると、こちらまで悲しい気持ちになります」
爆撃で、家にいても安全ではない様子がうかがえますが、ゆっくり休める時間はあるのですか。
【川原尚行さん】
「夜中も爆撃の音で目が覚めることがある。けっこう暑いので、眠りも浅い。なかなか大変な状況です」
自衛隊が救出に向かっていますが、感覚的に、72時間で救出は可能と思われますか。
【川原尚行さん】
「すごいギリギリのオペレーションだと思います。まだジプチにも到着していないということですよね。いつジプチに着くんでしょう」
関西テレビ・神崎報道デスクによると、「21日の午後3時過ぎに愛知・小牧を自衛隊機が出発したということで、自衛隊機は旅客機ほど早く飛行できないので、ジプチまで15時間ほどかかる。そこからさらに給油や物資の補給をするとなると、丸一日は見といた方がいいでしょう」とのことです。
川原さんには、情報は入っていない状況ですか。
【川原尚行さん】
「そうですね、ないですね。安否確認については、大使館からメールであります。また『退避作戦を開始しますが、退避するかどうか』という希望の確認がありました。もちろん我々も退避しますと返事しています」
退避するとなった場合、空港まで行くことはできるのでしょうか。
【川原尚行さん】
「100%安全というのは難しい。リスクを覚悟して、ある程度のところで行くしかない。安全を確認していたら時間が過ぎていく。残っていた方が戦闘が激化して、さらに危険になると思います。どちらが良いかというと、多少リスクがあっても空港に行く方を私は取りたいと思います」
食料、水は確保できていますか。
【川原尚行さん】
「さいわい私のところは大丈夫ですが、本当に危機的な状況にある日本人もいると聞いています。そこは心配なところです」
日本人が60人ぐらいいると聞いていますが、日本人同士で連携は取れているのでしょうか。
【川原尚行さん】
「電気があって通信手段があれば連絡できるのですが、食料を心配しているところは、電力事情が悪く、2日前に『あと5日ぐらいの食料』と言っていた。昨日、きょうと連絡を取ろうとしたが、なかなか連絡取れない状況です。ずごく心配しています。政府、大使館から個別にきちんと連絡を取っている可能性はあります」
医療体制はどうなのでしょうか。
【川原尚行さん】
「残念ながら病院も攻撃対象になっているところがあるようです。停電、断水が病院で起きているようで、入院している方が水を求めて他の施設に行っているという話も聞いています」
今一番の希望はどのようなものでしょうか。
【川原尚行さん】
「日本政府が、自衛隊機を派遣してくれたことに心から感謝しています。それを待つのみです」
川原さん、本当に大変な状況の中、現地の情報を報告していただき、ありがとうございました。切迫した状況が伝わってきました。
■スーダン“72時間停戦” 日本人の退避はどうする?
スーダンには、現在60人以上の日本人が残っているという状況です。今後、退避はどうなるのか。まず72時間停戦合意の実効性はいかがなのでしょうか。
【関西テレビ・神崎報道デスク】
「イスラム教の断食、ラマダンが終わるタイミングなので、安ねいを求めたい、平和を求めたい気分は醸成されている。停戦には良いタイミングだと言えます。ただ停戦合意に政府軍側は応じていません。両当事者で合意されないと成立しないので、どうなるか分かりません」
72時間で日本人の退避ができるのか。可能性としては空路と陸路があります。自衛隊の活動拠点となるジプチに自衛隊機を派遣したところですが、そこから空路で行くのか、陸路で行くのかが問題です。
【関西テレビ・神崎報道デスク】
「空路ですと、ジプチまでは行けます。スーダンの首都ハルツームの空港では航空機の破壊などがあって、空港が機能していない。まず空港の安全が確保できるのかという問題があります。他にもハルツーム付近にはいくつか空軍の飛行場などあるので、自衛隊機がそちらに降り立つことは可能でしょう。実際問題として、自国民を救出しようとドイツやアメリカもオペレーションをしようとしていますが、なかなかたどり着けていません。各国の流れを見ながら、日本も救出できるタイミングをはかる必要があります」
救出ルートの優先順位としては、まず空路なのですか。陸路は厳しいのでしょうか。
【関西テレビ・神崎報道デスク】
「72時間という時間を考えると空路になります。陸路ですと、拠点となるジプチからスーダンまでの間に、エチオピアがあり、大変長い距離を移動しなければなりません。時間的に陸路は厳しい。道路状況もよくない中で、しかも多数の車両が移動するためには、通過する国の合意やスーダンの合意も必要になりますので、短時間のうちに合意が取れるのかも障壁になります」
今回の自衛隊派遣で、日本人をスムーズに助け出す対策は講じられているのでしょうか。
【関西テレビ・神崎報道デスク】
「海外の紛争地帯から日本人を救出した事例で、記憶にあるのはアフガニスタンのとき。日本人救出のため飛行機を派遣するのですが、欧米や韓国よりもだいぶ遅れました。結果的に時間がかかり過ぎまして、大使館員などは先に避難して、救出できた日本人は結局1人だけだった。今回ジプチまで飛行機を送る判断は早かったと思います。アフガニスタンの問題を教訓にして、法律も変えていますし、行けるところまで行くという判断は、比較的迅速にされたのではないかと思います」
日本政府は非常に難しい対応を迫られることになりますが、まず停戦が合意され、無事救出されることを見守りたいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2023年4月21日放送)