トラック運転手の長時間労働などが問題となっています。物流業界の働き方の問題を受けて、2024年から、政府はトラック運転手の残業時間を厳しく制限することにしました。そこで出てくるのが「2024年問題」です。人手が減って運べる荷物の量が少なくなり、私たちの生活にも大きな影響がありそうです。運送会社とトラック運転手の本音を取材しました。
どこにいても、欲しいものがすぐに手に入る。便利すぎる?日本の物流が、一変しようとしています。
ヤマト運輸は、これまで「翌日」には届けていた荷物を、6月から一部の地域で、「翌々日」に届けると発表。宅急便などの料金も、4月から値上げしました。
また、大手コンビニではセブン-イレブンが、今後弁当などの店舗への配送を1日4回から3回に減らすことにしました。12月からはローソンも、1日3回から2回に減らすということです。
■2024年4月 トラック運転手の残業時間規制強化
その大きな理由は、「2024年問題」への対応です。 2024年4月から、トラック運転手の残業時間に対する規制が大幅に強化されます。運転手1人あたりの労働時間が短くなることで、運転手不足や物流の停滞など、さまざまな問題が懸念されているのです。それでも規制が強化される背景には、長時間労働が当たり前になっている、物流業界の現状があります。
【藤井凌記者リポート】
「長時間労働の要因の1つとなっているのが、荷下ろしの待ち時間です。長い時には10時間近くも待つということです」
神戸市の六甲アイランドには、朝からトラックの長蛇の列が。トラックが荷下ろしをする流通センターでは、トラックが一斉に集まる午前中を中心に、荷下ろし待ちの大渋滞が起きてしまうのです。
【トラック運転手】
「3時間ぐらいかかる。こういう所はこれぐらいかかる。ちょっとは(待ち時間が)ましになってきましたけど。かかる所はもっとかかる。ドライバーの待機時間が長いから、労働時間も長くなりますよね」
荷下ろし待ちも一因となり、運送業界では長時間労働が常態化しています。
年間の労働時間をグラフでみると、全産業の平均よりも、トラック運転手は2割以上も多く働いていることが分かります。しかし、年間の賃金は全産業の平均を下回っているのです。
■労働時間削減のため、運送会社はさまざまな手を打っている
トレーラー運転手の福家敏晃さん。以前は、今よりも倍近い長時間にわたって働いていたそうです。しかし、2024年に向けて、福家さんの勤める会社は、残業時間を削減するため、さまざまな手を打っています。
【好川商運 福家敏晃さん】
「昔に比べて体の負担もなくなったし、無理して走らないとお客さんに迷惑を掛けることもなくなった」
この日は、香川から関東方面へ冷凍食品を運ぶのですが、向かったのは高松港。福家さんの会社では6年前ほど前、四国と本州の行き来に船を活用する「モーダルシフト」を採用。「モーダルシフト」とは、車での輸送を、一部船舶や鉄道に転換することです。船で移動する間は、休息が取れるため、労働時間の削減に一役買っています。
【好川商運 福家敏晃さん】 「おやすみなさい」
休息をとるのも大事な業務の1つ。翌日の仕事に向けて、船の上ではゆっくりと休みます。
午前5時半すぎ、船から降りてきた福家さんのトレーラーが向かったのは、関東方面ではなく、神戸市の六甲アイランドにある倉庫です。
【好川商運 福家敏晃さん】
「ここから関東までは、協力会社さんが行ってもらうようになっているので」
福家さんの会社では、運転手1人当たりの労働時間を減らす取り組みとして、数年前から「スイッチ(中継)輸送」を同業他社と協力して行っています。スイッチ輸送とは、長距離の輸送を運転手1人で行なわず、複数人の運転手によって、リレー形式で荷物を運ぶもので、運転手1人当たりの労働時間を大幅に減らす効果が期待されています。
【好川商運 福家敏晃さん】
「協力会社も荷役作業の時間がなくなったり、拘束時間や残業時間を減らせるっていうのが、お互いメリットがある」
残業が減って問題はすべて解決、となればいいのですが、実態はそうではないようです。
■労働時間減少→賃金低下→運転手不足の懸念
福家さんから荷物を受け取った、徳水運輸の石本啓二社長(49)は、高校卒業後に、「稼ぎたい」という思いでトラックの運転手になりました。
【徳水運輸 石本啓二社長】
「休みは週に1回はあったのですけど、ほぼ出っ放し。(今より)1.5倍以上はもらっていた」
トラックの運転手は、荷物を運べば運ぶほど給料が上がるシステム。休みを惜しんで働いていた石本社長は、20代前半で月に40万円以上の給料をもらっていました。しかし、2024年以降は、働ける時間が大幅に減って、以前ほど稼げなくなることで、運転手の成り手不足が懸念されています。
【徳水運輸 石本啓二社長】
「人手不足が何年も前から言っていますけど、さらに人手不足になるかと。家でネットで買い物をして、翌日来ていたのがもう来ない。いろいろ大変になると思う」
このままでは、荷物が届かなくなる恐れもある「2024年問題」。さらに、“モノを作ること”すらできなくなるという指摘も。日本の物流は、一体どうなっていくのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」5月11日放送)