お寺に50年かけた“タワマン”巨大ツバメの巣 「今年も元気に巣立った…」80歳和尚さん“笑顔” 500羽巣立った陰に『真夜中のヘビ退治』や『崩落危機で“補強”』 そして「見守り」も代替わりへ 2023年06月13日
こちらは50年にもわたって増築され続けた巨大なツバメの巣。高さは40センチ超えでまるで“タワーマンション”のようです。
兵庫県豊岡市のあるお寺でこれまですっと大切に見守られてきました…
「今年も無事に巣立った…うれしい」
と、目を細めて話すのは兵庫県豊岡市の萬休寺18代目を務めていた前住職の吉田宗玄さん(80)。
宗玄さんによると、これまでに約500羽が巣立ったということです。
江戸時代の享保年間に開山し、300年の歴史を持つ曹洞宗の萬休寺。 このお寺には驚くような珍しい“風景”が!
それはお寺の住職一家が暮らす庫裏の玄関を入ったところに…高さ40センチを超える巨大なツバメの巣です。
傾いた形はイタリアの『ピサの斜塔』、ごつごつした形状はスペイン・バルセロナの『サグラダ・ファミリア』をも思わせます。
この庫裏が建てられた最初の年の1973年(昭和48年)以来およそ50年、ツバメたちが“代々”増築を重ね続けたもので、今やツバメ界の“タワマン”…です。
宗玄さんによると、住居部分を新築の際に、玄関の球体の電灯の上に“初代”のツバメが巣を作ったのが宗玄さんとの関わりの始まりでした。
【萬休寺 吉田宗玄前住職】
「安定感もないのに、なんでこんな所に作るんかいなあ…と思いました。新築で白い壁にふんがついて『困ったなぁ』と最初は思いました(笑)」
最初は、電気を付けていましたが火事の危険もあるため結局、新たに別の電灯を付けることに…
その後も毎年、ツバメたちはお寺にやって来ました。 こちらは作り始めて10年くらい、1983年の巣…今より少し小さいですが、すでに異様な形に。 巣は年々、増築に増築を重ねていきました。宗玄さん一家は、毎年、3月~7月のシーズンはツバメたちを見守ることになりました。
■ツバメの巣が…“崩壊の危機” あった
そんな中、今から7~8年ほどのこと、高くなって不安定になったこともあってか巨大ツバメの巣が“崩壊の危機”に… 「これはアカン」と思った宗玄さんは、緊急の補強工事を行ったそうです。 確かに巣をよく見ると、その“工事”のあとが…そこだけ土の部分となっています。
■前住職語る“緊急工事”「ガムテープ巻いて田んぼの泥で…」
【萬休寺 吉田宗玄前住職】
「倒れかけていたので、左官工事をしました。ガムテープで巻いた後、田んぼの泥で補強したんです」
この緊急工事でツバメタワーはなんとか崩壊の危機を乗り越え、その年も無事に育ち、飛び立ったそうです。
■ほかにもあったツバメの巣の“危機”
住職の傍ら、宗玄さんは豊岡市役所で36年のお勤めもしていました。50年の間には、ほかにもたびたび“危機”があったそうです。
【萬休寺 吉田宗玄前住職】
「ヘビです。何回かあったんですが、最近だと10年前と7~8年前に。夜1時とか2時ごろに親鳥が『ピーピー』鳴くので、障子を開けると大きなヘビがいました」
息子といっしょにほうきで追い払い、つかんで寺の下にある田んぼまで持っていったそうです。
そうした数々の危機も乗り越え50年…高さは40センチ超え、今はやりの“タワマン”状態に!
萬休寺の“タワマン”ツバメの巣について、兵庫県立コウノトリの郷公園の出口智広主任研究員によると、「見たことがない珍しい形、屋内で風もなく奇跡的に残っているのでは…補強したのも良かったと思います。ツバメは都市部も含めて、人間と“共存”する鳥ですが、電灯など明かりのあるところはエサである飛翔性の虫などが集まることや天敵のカラスが寄り付きにくく、よく巣作りをします」ということです。
30歳だった宗玄さんもいまは80歳に。実はことし3月に息子で19代目・現住職の敦宗さん(38)に代替わりをしました。
いまは萬休寺で暮らしていますが、近く、この場所から3キロほど離れた「帯雲寺」で新たに住職となるため、妻と引っ越しをするということです。
【萬休寺 吉田宗玄前住職】
「1年だけ、巣に帰って来なかった年以外は、毎年、ツバメが3000キロ以上距離を渡って帰って来てくれるのがうれしかった。巣立ったのはだいたいこれまでに500羽くらいかな…(ツバメの寿命は平均2年くらいなので)うちの代(19代目)も超える世代のツバメがこの寺に…これからも無事に巣立っていってほしい」
■18代目の思いは“受け継がれ”…19代目「このままだと天井についちゃうかも」
【萬休寺 吉田敦宗住職】
「東堂(宗玄前住職)が守り続けたように、私も毎年、ツバメたちを見守り続けたい。このままいくと天井についちゃうかもですね…また補強しないとダメかもです」
ところで、単純に同じ“一族”が来ているとしたら25代以上となるわけですが、その点については県立コウノトリの郷公園の出口主任研究員によると、「同じ豊岡エリアには帰って来ていると思いますが、ピンポイントでこの寺に…ということはなくて、そもそも“早い者勝ち”なんで環境にいいこの寺の巣は人気なんだと思います。ただ、中には子どものツバメたちが同じ巣を使ったケースもあったかもしれません。最近は農薬などの影響もあってツバメは減っているんですが、いろんな点から見て豊岡はかなり環境がいい場所だといえます」ということです。
今後は19代目の敦宗住職が、ツバメを見守ることになります。もちろん宗玄さんも、たまには帰ってきてツバメを見守りたいということです。
【関西テレビweb取材班 澤田芳博】