「今国会での解散は考えていない」と岸田首相が発言 「この夏に国のあり方・ビジョンを示してから信を問われる覚悟」と共同通信・太田昌克氏 "野党第一党"を狙う立憲・維新の思惑は? 2023年06月15日
立憲民主党は、16日に内閣不信任決議案を提出する方向で調整に入ったことが分かりました。衆議院解散総選挙となるのか。国会は最大のヤマ場を迎えています。各党の“大義” “思惑”について、共同通信社政治部で首相官邸担当でもあった、「newsランナー」コメンテーターの太田昌克さんに聞きました。
まず15日夕方時点の、立憲民主党の最新情報について、永田町で各党の国会議員を取材している関西テレビ・東京駐在の原記者から報告です。
【関西テレビ 東京駐在 原佑輔記者】
「内閣不信任決議案を出すのかどうか、泉代表が最終判断をすると言っていた、15日の役員会の会場には、多くのメディアが詰めかけていました。15日午後5時ごろに泉代表に声をかけるチャンスがあり、決まったのか聞いたところ、『まだだ』と。一方で最新情報として、立憲民主党が16日に内閣不信任案を提出する方向で調整に入ったことが分かりました。その会合に出席していたある幹部が『既に岸田首相が解散すると決めているのであれば、“このタイミングでの解散には大義がない”と批判するために、あえて不信任案を出さない選択もある』と話していて、立憲民主党内でも意見は様々あったようです 。
立憲民主党ですが、150の選挙区で候補者擁立のめどがついたと話しているのですが、ある中堅議員を取材すると『まだ事務所も抑えていないし、車の手配もしていない』と話をしていて 、選挙に向けた体制が十分に整ったとは言えない状況です。解散となれば、厳しい戦いを強いられることになりそうです」
太田さんが取材した立憲民主党の幹部からは、「ウチはやってもいい。陣容もそれなりにできている。後は泉代表の判断だけだ」ということと、思惑としては「今なら野党第一党になれるのでは」とのことです。
【共同通信社 太田昌克さん】
「原記者の話と少し違うのですが、勝てる選挙区にはそれなりの候補者を出して、陣容、構えはできてると。ファイティングポーズもあるのかもしれませんけれど、14日に立憲民主党の中枢の人物への取材で出てきました。 どうしても維新が気になるわけですが、『野党第一党を狙うためには今がタイミングですか』と聞くと、『いや、維新云々ではないんだけれど』と言いながら、やはり解散した場合にはしっかり戦う覚悟を一部の幹部はしているということです」
【関西テレビ 神崎報道デスク】
「次の総選挙で1つ注目されてるのは、野党第一党を立憲が守るのか、それとも維新が第一党となるのか、そこが大きなポイントになってくるんです。立憲としてはどうしても野党第一党の座は譲れないという思いがあって、早ければ早いほど有利だという思いがあります。一方で泉代表は、『次の総選挙で150議席取れないと代表を辞めます』と、高めのハードルを設定しています。現在97議席しかありません。ここで不信任決議案を出して、解散されてしまうと、すぐ選挙になる。現時点で150人の候補を立てられてはいません。来週あたりに150人立てられると言っていますけど、全員が当選するわけではないので、代表辞任は避けられないのではないかと思います。一方で様子見すると弱腰だと批判されます。『進むも地獄、退くも地獄』といった状況で、どちらを選択しても泉代表は厳しい立場に置かれることになります」
野党第一党を狙っているもう一方の維新はどう考えているのでしょうか?
【関西テレビ 東京駐在 原佑輔記者】
「馬場代表は15日の会見で、『不信任案については協力はしない。賛成はしないという方針を定めています』とあらためて強調していました。その上で立憲民主党の不信任案提出を念頭に『成立するめどもないまま、前例、慣例に習っている』と批判をしています。維新としては このタイミングでの解散は避けたいというのが本音で、14日も藤田幹事長は「16日に解散したらうちはてんてこ舞いだ。“維新つぶし解散だ”とけん制していました。289ある選挙区全てに候補者を擁立する方針を示しているんですけれど、15日の時点ではまだ130 選挙区が視野に入ってきた段階です。解散についてはあると思って準備すると、幹部も繰り返し議員にハッパをかけていたんですが、もう少し時間が欲しかったというのが多くの議員の本音だと思います」
【関西テレビ 神崎博報道デスク】
「馬場代表は次の総選挙で野党第一党になることを一番大きな目標として掲げています。ただ今のところ維新は130しか立てられていない。立憲は150立てられる。多分維新は比例では相当勢いがあると思うんですか、選挙区で立憲を上回ることは今だと厳しい。今、解散してほしくないというのが維新の本音ですよね」
不信任決議案を受けて自民党はどう動くのか、岸田首相の発言から振り返ってみます。5月21日の広島サミット後の会見で「解散については考えていない」と発言していました。
6月13日の会見では「解散は情勢をよく見極めたい」と発言し、笑みを浮かべているようでした。さらに岸田首相周辺には、「内閣不信任案が出されたら、即日解散も検討」しているとに伝えているとのことで、だいぶト ーンが変わってきた状況です。13日の岸田首相の“笑み”も含めて、どう読み解けばいいのでしょう?
【共同通信社 太田昌克さん】
「“不敵な笑み”とも言えるんですが、私は、岸田首相はいつ解散するかある程度決めていらっしゃると思います。2つオプションがある。1つは16日以降不信任案を受けた時の解散、もう1つは秋です。8月は概算要求の時期でもありますから、予算の問題、財源の問題をある程度見せて、場合によっては補正をある程度組むような格好で内閣改造をやって、それで秋口に解散する。この2つ、どちらにも行けるように環境整備を、岸田首相が自らの言葉で行ったということです」
太田さんの取材によると、解散総選挙が近いことを裏付けるように、9日金曜日に自民党の閣僚経験もある大物議員を取材した時、選挙用のチラシを作っていたということです。
【共同通信社 太田昌克さん】
「そうです。9日金曜日に取材をした方なんですが、その1週間前に話しした時は『秋だよ』って言ってたんですよ。1週間後に事務所に行くと、この方は選挙にとても強い方なんですが、『うちもこれ始めたよ』って言って、選挙のチラシの素案をみせてくれました。『先生、何でこんなことしているのですか』と聞いたら、『法案のさばき方が尋常ではない。どんどん法案を片付けて、解散できるようにしている』と話していました。特に大きなのはLGBTQ法案があります」
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
Q.任期がまだあるのに、今税金を使って解散・選挙をする必要があるの?
【共同通信社 太田昌克さん】
「大変賢明なご質問だと思います。やっぱり今の国民の暮らし、まずそこが第一ですよね。“コアラのマーチ”も値上がりするニュースがありました。ヨーロッパでは戦争が続いていて、北朝鮮からいつミサイルが飛んでくるか分からない状況ですよね。国民の生活、命を第一でまず進めてもらいたい。選挙には多額の費用、数百億円はかかるわけなんです。そのお金を少子化とか、本当に実のある政策につなげるべきじゃないか。実は15日に、首相のある補佐官とちょっと連絡を取り合っていたんですが、その方は『やはり安易な近道を選ぶのではなくて、王道を行くべきだ。それは国民の皆さんにきちんとした政策のありようを示して、そこを国民に見せた上で秋以降に選挙をやるべきだ』という話をされました。岸田首相の周りには“主戦論”はそんなに多くないんですね」
もう1つ質問です。
Q.もし16日に解散したら、選挙日はいつになりそう?
【共同通信社 太田昌克さん】
「間違っていたらごめんなさい。私自身は16日解散の可能性は決して高くないとは思いますが、解散をこの週末にやるとしたら、おそらく7月23日の大安吉日になるんじゃないかと思います。最後は岸田首相の腹一つでして、14日にある現役閣僚と電話で話したんですが『岸田さんは最後まで分かんない』というんですね。意外に決めたら思い切りやってしまう人なので、胆力といいますか、ちょっと無謀なところもあるという話もされていたんで、“総理のみぞ知る”ということだと思います」
■岸田首相「今国会での解散は考えていない」 番組中に速報入る
15日午後6時過ぎ、この番組放送中に、岸田首相が記者団の取材に応じ、「今国会での解散は考えていない」と明言したとの速報が入ってきました。
この発言に関して、太田さんは次のようにコメントしました。
【共同通信社 太田昌克さん】
「この数日で解散風ですよね。メディアを中心とした憶測があまりにも広がりすぎて、これが打ち消されたということです。やはり国民の生活は物価高で苦しいんですよ。まだ先の選挙から2年もたっていない、折り返し地点にも来てないんですね。おそらく岸田首相自身もしゅん巡があると、私聞いたことがあるんです。『2年もたってないのにやっていいのか』 と。だから ここはやはりきちんと少子化問題、防衛費の問題もありますから、財源もしっかり示しながら、 この夏に国のあり方、行く末をビジョン示して、そして改めて信を問われるという覚悟をされたんだと思いますね」
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月15日放送)